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ミーナちゃんの冒険  作者: paiちゃん
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M-004 4人パーティ

 ネウサナトラムからマケトマムは馬車で3日の距離だ。途中サナトラムの町で1泊して、野宿を1回すると、私達はマケトマムの町に到着した。

 この町から山に1日歩くとお婆ちゃんが小さいころ住んでいた村があるらしい。良い思いでは無かったと私に話してくれたことがある。

 雑貨屋で爆裂球を更に追加して東に進む。

 大きな森を抜けると、広大な荒地が続いていた。視界の端に小さく見えるのがネイリー砦らしい。

 元は大きな砦に付属した出城だったらしいが、戦役で砦は落城。今ではネイリー砦だけが残っている。馬車が進むにつれて、その砦を基点に沢山の建物が並んでいる。更には南に広大な農地が広がっているのが見えてきた。


 「ネイリー砦は屯田兵の駐屯地だ。命令あれば2日後に2個大隊を出動できる」

 

 そんな話をヴォルテンさんがしてくれたけど、それなら家族を含めて数千人が暮らしているんじゃないかな?

 森を流れる川から水道を引いているそうだが、農業用水には少し足りないみたいだ。王都周辺とは少し違った作物を栽培しているようだが採算は取れるのだろうか?


 ネイリー砦近くの宿に一泊して、更に東を目指す。轍を頼りに東へと進むと、途中に小さな塔が見えてきた。昔の通信基地らしい。およそ1000M(15km)間隔で建てられたようだが、今では過去の遺物らしい。それでも、テーバイ王国への道標としては今でも有効に機能している。


 荒野での野宿は星が綺麗に見える。

 食事はネイリー砦で購入したお弁当を温めただけだけど、何となく一人前のハンターになった気がするのは、見知らぬ土地で焚火を囲むせいなのだろうか?

 

 「明日にはテーバイの東の町が見えてくるはずだ。元はお婆ちゃん達が作った兵站基地だったらしい。ディーさんが町の泉を片手で掘ったと聞いている」


 「ディー殿の逸話の1つか……。そういえばアキト殿にもあるぞ。攻め手5千を前に、両手に剣を持って立ち塞がったと聞いている」


 2つともお婆ちゃんから聞いた話だ。少し拡大されているようだがどうやら本当らしい。でも『兄様ではなく、ディー姉様の活躍を兄様と勘違いしたみたい』と言っていたから、2つの話はディーさんの並外れた武勇を物語るものなんだろうと思う。

 

 「20倍の敵を跳ね返した事は事実だ。亀兵隊と屯田兵の誇りだな」


 リードさんはそう呟くと、器用に少し尖った口でお茶を飲んでいる。最初は驚いたけど、今では焚火を囲んで話ができる。


 「だが、テーバイで最後の調達をした後はどうするんだ?」

 

 「テーバイで衛兵にこれを渡すにゃ。テーバイ王宮に寄る事になるにゃ。テーバイ王国は遊牧民の版図を併合しているにゃ。遊牧民は余所者を嫌うにゃ」


 ミレーネさんがパイプを咥えながら話してくれた。

 後ろ足だけで跳ねるように駆けるカルートに乗って牧畜を行っている部族が遊牧民だ。沢山の部族がいるらしいがかなり好戦的だとも聞いたことがある。


 「要するに許可証を貰うことだな。そこからは俺達だけだ。ミレーネさんとももうすぐお別れだね」

 

 「そうにゃ。後は通信機で連絡してくれればいいにゃ」


 アキトさんがいる辺りでは通信機が使えないらしい。そこまではリムお婆ちゃんに連絡が出来る事になる訳だ。

                 ・

                 ・

                 ・


 翌日も単調な荒地を進むと、午後になってジャブローの町が見えてきた。

 ここは通過するだけだが、噂の泉は馬車から眺めることができた。大きな池のようで透明な水がこんこんと湧いているようだ。あれを掘ったとすればかなりの労力に違いない。ディーさんの片腕で一撃はそんな労苦をした者から出たんだろうな。

 低い石作りの民家の南に緑絨毯が敷き詰められたような農地が見える。農地の間を流れる用水路に太陽が反射してキラキラと光っていた。


 4M(600m)程の通りを抜けると30M(4.5km)程先にテーバイ王都が見えて来た。

 ジャブローと王都の間は私の背の高さ程の木が南に連なって規則正しく植えられている。枝がそのまま伸びたような幹の太さは私の親指ほどでしかない。何度も枝打ちされたのだろう。根本は私の腕よりも太く見える。

 

 「桑という植物だ。絹はこれから作られると言っても過言ではない。それに、薪代わりにも使えるからな」

 

 そんな話をヴォルテンさんがしてくれる。

 大きな門を潜ると、石作りの家並みが南側に続いている。北側は少し緑があって大きな建物が見える。どうやらそれが王宮らしい。

 王宮前のロータリーの中心には噴水が10D(3m)程の高さで吹き上げている。噴水から溢れた水は石の水路を通って南の通りの真ん中を流れていた。

 私達は宮殿前で馬車を下りると、ミレーネさんが小さな巻紙を渡してくれた。


 「これを女王様に届けるにゃ。それじゃ、頑張るにゃ!」


 馬車をぐるりと回してミレーネさんが帰って行く。手を振る私達に馬車から片手を振ってくれた。

 馬車が通りに姿を消したところで、改めて宮殿を見上げた。

 エントラムズの宮殿から比べると大分小さい。それでも、2階建てで広場に面してテラスまで作られている。

 そんな私達を衛兵が不審に思ったのだろう。王宮の扉を警護していた数人の中から、2人が私達に近づいて来た。


 「西から来たハンターのようだが、ここは王宮だぞ。南にギルドがある。すぐに出掛けるがいい」

 

 諸国を廻るハンターだと思ったようだ。親切にギルドの場所を教えてくれた。


 「一応、ハンターではありますが、王宮に用事があります。この書状をネウサナトラムのリムお婆ちゃんに頼まれました」


 私の告げたお婆ちゃんの名前に驚いたようだ。少し待つように私達に告げると、扉に続く階段を駆け上って行った。

 

 「今でもリム様の名を知るものは多いようだな」


 「あの戦の折、この王都に物資を運んだそうだぞ。下手をすれば兵糧攻めになりかねないところを救ったんだからな。それだけ恩義を感じているんだろう」

 

 しばらく王宮を眺めていると、大きな扉が開かれて転がるように数人の男が駆けて来る。

 

 「遠路ご苦労さまです。女王様がお待ちかねです。どうぞ、こちらに……」


 壮年の武装した男が息を整えて、話し終えると石段を上がり始める。私達は顔を見合わせるととりあえず中に入ることにした。


 王宮の作りは私の知る王宮と似通うっている。列柱の続く奥に謁見の間がありそうだ。たぶん2階部分は王族の私室になるんだろう。

 

 100M(30m)程、赤い絨毯を歩いて行くと、2人の衛兵が扉を守っている突き当りに出た。

 案内者が衛兵に言葉を掛けると、衛兵が片方ずつ扉を開いてくれた。その向こうは大きな謁見の間があった。絨毯をそのまま歩いて行くと1D(30cm)程の高さの雛壇に設えた玉座に女性が座って私達が近付くのを見ている。雛壇の手前には、左右に数人の人物が椅子に腰を下ろしていた。

 絨毯が途切れたところで立ち止まり女王様に頭を下げる。

 顔を上げて女王様を見たけど……綺麗な人だ。エントラムズの美人コンテストに出れば優勝は間違いない。オーロラ様も美人だけど、テーバイ女王は確実に上回る。


 「遠路ご苦労。リム殿よりの書状を預かったとか?」


 私は、ミレーネさんから渡された巻紙を取出すと、控えていた女性が受取りに来た。

 女性から巻紙を受取って早速中を読んでいる。

 やがて巻紙から目を離して私達を微笑ながら眺めた。


 「既に要件は聞いておる。この書状はリム殿から私への直接な頼み。私もそれには賛成する。大儀であった。かのハンターに褒美を取らせよ」

 

 どうやら、リムお婆ちゃんの頼みは終ったらしい。

 先程の人物に先導されて出口へ向かっている時、1つの扉の前で急に立ち止まった。

 

 「この中でお待ちください。直ぐに女王様がお見えになります」


 扉が開かれ中に入ると小さなテーブルと椅子がある。言割れるままに椅子に座ると、直ぐに女性が飲み物を持って現れた。

 

 「リムお婆ちゃんのお使いじゃなかったのか?」


 「別な話があるという事だな。オデット女王は予知夢を持つと言われている。そのお告げで国を治めているのだ」


 飲み物を頂きながら、2人の会話に耳を傾ける。

 ミーアお婆ちゃんが兄様と慕うアキト様には3人の子供がいる。

 それを廻ってお家騒動があったとお婆ちゃんは話してくれたけど、アキト様の家ではなくて連合王国の中だと言うから驚きだ。でも、そのごたごたのお蔭で、あの巨大なガルパス像が出来たと話してくれた。

 3人の子供は1人が、先程のテーバイ女王、ヴオルテンさんの母親で連合王国軍の総指揮官であるオーロラさん。もう1人はサマルカンドで商会を取り仕切るアリスさんだ。

 だいぶ複雑な家だと思っていたけど、皆仲良く過ごしていたらしい。ちょっと私には想像できないんだけどね。

 奥の扉が開いて女王が姿を現した。娘さんを1人連れている。私と同じ歳位かな?


 「お待たせしましたね。こちらは私の娘、次女のキャサンドラよ。たぶん早くに旅立とうとしているように見えるけど、明日にしなさい。東の堤防の工事現場に資材を運ぶから、その荷馬車列に便乗すればいいわ」


 東の堤防とはテーバイ王都の東2千M(300km)に作られている巨大な長城だ。一度、サーシャ様に見せて貰ったことがある。


 「助かります。チビッ子が一緒ですから」

 

 「それと、もう1つ。キャサンドラを連れて行きなさい。戦士が2人に弓兵が1人では心もとないわ。キャサンドラは【サフロナ】が使えます。かなり旅が楽になるわ」


 「それはお告げと?」


 「旅人は4人。でも最後の1人は分からなかった……」


 「結果については?」


 ヴォルテンさんの問いに女王様は首を振った。失敗ではなく分からなかったという事だと思う。

 でも、旅人が4人なら自分の子供でなくとも良かったんじゃないかな?

 

 「父様を探す旅なら、オーロラが行きたかったはず。本来なら私も同行したかった。でも、私達は国政や軍に深く関わっている。オーロラがヴォルテンに託したなら私もキャサンドラに託します」


 そんな話なら断れない。でも、そうなるとアリスさんはどうなるんだろう? ちょっと考え込んでしまった。

 話を聞いてみると、アリスさんは旅に同行しない代わりに食料品の援助をしてくれるそうだ。

 本当はやはり行きたかったに違いない。


 「キャサンドラには4人で1年間の携帯食料と大型の水筒を3つ持たせました。貴方達も準備はしたのでしょうけど、これで2年近くの捜索ができるでしょう。それに、夏向けの衣服を2着とブーツを2足。全てアリスが送ってきたものです」

 

 「出来れば、カゴを1つに炭とコンロが欲しいのだが……」

 

 「明日の朝には準備させましょう」


 女性が私1人だったからキャサンドラさんの参加は嬉しいな。おしゃべりしながら歩けば長い道のりも退屈しないしね。

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