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ミーナちゃんの冒険  作者: paiちゃん
12/35

M-012 探すものは?

 リードさん達がさばいた肉を、私とキャシーさんで焚き火であぶる。

 少し遠火で焼くのが美味しい焼肉の秘訣だ。ジュージューと油が落ちる。

 良い匂いが辺りに満ちてきたところで、【カチート】の障壁が私達を包んだ。

 後は、ゆっくりと食事を楽しもう。


 「このまま進むのか?」

 「そうだな。後はミーナちゃんの勘に頼る事になるんだが……」


 大きな骨付き肉を持ったまま、2人が私に視線を移す。


 「どうなの? 何か感じるとか?」


 キャシーさんも私に視線を投げる。

 思わず、口の中のお肉を飲み込んでしまった。

 ゴホンゴホンとせき込む私にキャシーさんがお茶のカップを渡してくれた。一口飲んで、先ずは落着こう。


 「特に何も感じませんが、このまま北に向かってもいいんじゃないでしょうか? この方向に進んだ事は確かですし、また焚き火の跡が見付かるかも知れません」

 「そうだな。今は夏の盛り、山の方が涼しいだろう」


 「私、ちょっと疑問があるんだけど……。なぜ、アキト様達は通信を断ったのかしら? もし、連合王国から姿を消すのだったら、王族に内緒の筈よ! それに、通信が出来ない場所に入るんだったら、その前に通信を入れるんじゃない?」


 リムお婆ちゃんは、アキト様が最後に通信を送った場所を教えてくれた。その場所は既に達して、その次の痕跡を私達は見つけることができた。

 

 ……! そうだ。誰も気にしていないけど、もう1つ重要な手掛かりがある。アキトさん達の通信の間隔だ。いったい、どれ位の頻度で通信していたんだろう?


 「ヴォルテンさん、アキト様達が旅立ってから、最後の通信を送った場所まで通信はどれ位の頻度で行なわれたか分かりますか?」

 「ん? そうだな。昔、母様から聞いた事があるぞ。2、3日おきに送られて来たそうだ。少しずつ着信時間が遅れるようになったのはジェイナスが丸いからだと言ってたな」


 私達の会話を聞いてキャシーさんが慌ててお茶を飲み込んだ。ゴクンと大きな音が聞こえたよ。


 「ちょっと待って! それなら、最後の通信を送った場所から3日ほどの場所で何かがあった……。という事になるわ」

 「あれからおよそ2日目の距離になる。ヴォルテン、通信機はまだ使えるのか?」


 直ぐにヴォルテンさんがバッグから通信機を取り出して、王都に連絡を入れ始めた。

 ひとしきり電鍵を叩くとチカチランプが点灯している。

 

 「現在地を教えておいた。問題ないようだ。……となると、明日あたり何かがあるということか?」


 連絡が取れないという事がアキト様達にありえるのだろうか?

 遠くエルフの隠れ里を訪ねた旅でも、兄様に狩れない獣はいなかった、とお婆ちゃんが話してくれた。

 となると、通信機が使えなくなったという事が一番考えられる。森の奥では通信機が使えないと教えてくれたけど、その森は遙か南の方向だ。山麓で通信機が使えないとなれば洞窟に潜ったんだろうか?


 「洞窟ね!」


 キャシーさんが私と同じ結論にたどり着いたようだ。

 

 「確かに、洞窟では通信機が使えん。アクトラス山脈には沢山の洞窟があるらしい。昔、リザル族の精鋭とサーシャ様達が連合王国にあるそれらの洞窟を破壊したと長老が話していたな」

 「それは俺も聞いた事がある。だが、精々が入口から1M(150m)以内だ。あまり深入りすると巻き込まれてしまう。それに、そんな作業ならその日の内に終わって報告してくれる筈だ」


 破壊せずに深く潜った……、ということ?

 そんな洞窟に興味を持つのは何だろう?


 「昔の話ですが、お祖母様が話してくれた中に、不思議な話がありました。「アキト様は、洞窟で眠っていたディー様を起こした」と……」

 「似た話を俺も聞いたぞ。ラミィ様を起こしたのはフラウ様だとな」


 今でも洞窟の置くには、人が眠っているのだろうか?

 その人達を起こすための旅にアキト様は出掛けたのだろうか? だけど、災厄を防ぐ為とはかなり違うような気がする。

 いずれにせよ、もうすぐ分かると思うな。

                 ・

                 ・

                 ・


 ふと目が覚めた場所は、霧の中の焚き火だった。チロチロと小さな火が周囲の霧を照らしている。


 「ほれ、坐るが良い。先ずはお茶にしようぞ」

 

 何時のまにか焚き火の傍らにアテーナイ様が坐って私に手招きをしていた。

 焚き火の傍に腰を下ろすと、アテーナイ様がお茶のカップを渡してくれる。

 ハーブの良い匂いがするし、手に持ったカップはお茶の温かさが手の平に伝わってくる。こんな現実的な夢があるんだろうか?


 「何時も告げておるが、夢ではないぞ。ここは我の心象世界。あまり招く者はおらぬが、ミーナは容易に入って来られるようじゃな」

 「すみません。お邪魔してしまって……」


 そんな私の呟きに、目を細めて微笑んでいる。いつの間にかパイプを咥えてプカリと煙で大きな輪を作っている。


 「まあ、我も暇でしょうがない。婿殿の気配を辿れば簡単に婿殿の心象世界に行けると思うておったがそれもかなわん。のんびりとカラメル族の長老とチェスをする毎日じゃ」


 いつの間にか、私とアテーナイ様の間にカラメル族の長老が姿を現していた。

 直ぐに立ち上がってお辞儀をしたら、私に軽く頭を下げると微笑みを返してくれた。


 「ミーアにそっくりじゃのう。なりほど、ネコ族の血を色濃く引いておる。それに、先天的にエーテルを見ることが出来るなら、……なるほどおまえさんほど、アキトを探すに適したものはおるまい」


 「我等は霊的な存在。時間、場所を問わずに移動が可能じゃ。じゃが、何故に婿殿を辿れぬ?」

 「エーテルの薄い場所にいるということではないかとワシは考えておる。だが、そのような場所は思いつかん。エーテルは時空を越えて流れておる。それが濃くなる場所がある事は分かっておるが、薄くなる場所もあるという事なのだろう」


 エーテルというのは気と同じだとリムお婆ちゃんが教えてくれた。気を操れば魔法等及びもつかぬほど色々な事が出来るらしい。

 そんな意味では、アテーナイ様も気の使い手だったのだろうか?


 「濃い場所があれば、その反対に薄い場所も無ければ釣り合いが取れぬ。気の一番濃いのは婿殿の庭にある立木ではあるが、薄い場所を見つけるのは困難じゃ」

 「我等には不可能じゃろう。我等は自らの魂を水晶の結晶構造体に封印しておる。それをエーテルの中に投影してこのような姿を取る事ができるのじゃ。エーテルの流れが希薄であれば投影させる事は出来ぬ」


 「それじゃあ、もしも、アキト様が気の流れにいるならば、アテーナイ様達はアキト様の心象世界に入れるのですか?」

 「正しくその通りじゃ。我等にかろうじて分かるのは婿殿が生存しておるのみ。素の意識を辿ろうとすると方位すら怪しくなるのじゃ」


 となると、深い洞窟。もしくは気を薄める何かが近くにあるという事なのだろうか?


 「その考えで良いと思う。確かに深い洞窟では気の流れがない。特に人工的なものではな。気の薄れる場所というのがどんな物かはわからぬが、そのような物が存在することは考えられることじゃ」


 私のアキト様達の捜索の鍵になりそうだ。

 闇雲に探す事が無いように2人が私に教えてくれたのだろう。

 

 「ミーナちゃん! ミーナちゃん! そろそろ起きて。今日は更に上に向かうわよ」


 う~ん……。あれ? ここは……。

 どうやら、夢の中でアテーナイ様達と話し合っていたようだ。

 急いで寝床から起き出して、【フーター】のお湯で顔を洗う。


 皆で簡単な朝食を食べると、直ぐに出発する。

 リードさんとヴォルテンさんは100D(30m)ほど離れて横に並んで進む。私とキャシーさんは2人の間を彼らの後ろから歩き始めた。

 何を探すか分からないけど、何かがあるはずだ。それが、気を薄めるものであればある程度確定出来るんじゃないかな?


 きょろきょろと周囲を見ながら進むから、普段の半分も進めない。

 何を探すのか分からないのに、何かを探すと言うのはだんだんと頭が痛くなってくる。

 昼には普段の倍の時間の休息を取ってゆっくりと体を休めると同時に頭をすっきりさせる。皆も私と同じように頭を片手で抑えてる。


 「ところで何を探すんだ?」

 「わからないな。とにかく何かあるはずだ。夜になれば、作戦指揮所と連絡を取ってみる。通信が出来れば、まだ先になるんだろうけどな」


 やはり、分からないものを探すと言うのは神経が磨り減るのは同じみたい。

 そういえば、アテーナイ様達が言ってた。「気の流れの薄い場所」だったよね。

 目で見るのではなく感じるってこと?

 それも、疲れそうだけど、私が見つけられるかもしれないとは、そういうことなんだろうか?


 「さて、そろそろ出掛けるか。先は長いぞ」


 リードさんの言葉に私達は腰を上げる。

 前と同じように荒地に散開して探し始めるのだが、やはり荒地には小さな獣以外は私には何も見つけられなかった。


 「おい! ちょっと来てくれ」

 

 ヴォルテンさんが私達を呼び寄せる。

 皆が集まったところで、ヴォルテンさんが、荒地の一角を指差した。


 「あれだ。あれが分かるか?」


 指差した先の空間が陽炎のように揺らいでいる。

 地上3D(90cm)ほどの高さで、直径は2D(60cm)より小さな感じだ。

 

 「なんだあれは?」

 「わからない。ちょっと待て、これを投げてみるぞ!」


 ヴォルテンさんが足元の小石を拾って、その空間に投げてみた。

 小石は揺らいだ空間を通り越さずに、その空間の中に吸い込まれるようにして消えた。


 「次元の歪のようですね。昔、母様に聞いた事があります。大規模な2つの歪はアキト様達が発掘兵器で破壊したとか……」


 その話はお婆ちゃんも言っていた。それが原因で将来は魔法が使えなくなうかもしれないそうだ。でも、破壊しなければいずれはこの世界を破壊する可能性もあったと教えてくれた。

 ひょっとして、アキト様はこの小さな歪を破壊しながら旅を続けているのだろうか?

 だとしたら、ここにある歪をアキト様が気が付かなかった分けが無い。

 ますます災厄の意味が分からなくなってしまった。


 「これを見てください。アキト様達はこの場所を確かに通ったようです」


 キャシーさんは、周りを調べていたようだ。

 見つけた物とは、焚き火の跡、数本の焦げた焚き木だが、この辺りまでやってくるハンターはいないだろう。それに遊牧民達もテーバイの東の堤防を越える事は無いとキャシーさんが教えてくれた。

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