米粒
米粒
節くれだった太い指で
老人はテーブルに落ちた飯粒を拾う
それを口に運ぶ
「おじいちゃんきたないわ」
看護士は言う
老人には身についた躾であった
食堂には残飯が当たり前のように捨てられている
きっとこの老人が痴呆症になれば
「もったいない」
と食べあさるのではないだろうか
家具も洋服も電化製品も
修理することなど忘れてしまった
当たり前に捨てられる残飯のように
当たり前に捨てられるそれらのもの
あ、あ
この老人も
当たり前のように家族から老人ホームに捨てられた
家族
「金を払っているのに・・」
でも看護士は他人です
いくらどんなに優しくしても
肉親の貴方には勝てません
時にはお尻を叩いたりつねったりしますから
腹が立つ時あるんです
でも痴呆の患者さん
何にも言わず涙をこぼすだけです
その涙せめてあなたが、あなたが
拭ってあげてください
肉親の優しさを時には、ときには
見せてあげて欲しいのです
哀しい気遣い
「娘が持って来たんです」
老婆は自分で買ったせんべいを
隣の老人たちに分けに行く
先週はまんじゅうだった
もうこの半年も
娘は面会には来ていなかった
娘が来るのはわずかな年金の金を
せびりに来るだけ
老婆はせびりに来ない嬉しい気持ちもあるが
来て欲しいと願う
自分には金などよりも大切なのは
やっぱり娘の顔なのだ
落穂拾い
落穂拾いの名画を見て何を想う
いまではすでに過去の風景だろう
いまこの絵を見て何を思うか
こぼれ落ちた穂のように
昔は大切に拾われたものさへ
もう今では見向きもされない
囲炉裏端でじいちゃんばあちゃん
いまは二人だけ
孫に昔話さえ出来ない
こぼれ落ちた穂のように
誰にも拾われない穂のように
静かに降る雪に覆われていく
たった二人だけがいつかは
一人になるだろう




