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学校にて

  □  


「ほらー、中学に入学してから二週間もたったんだよ!部活なにに入るか決めた?

 いや、タッタだなんて。涼夏のエッチ(*ノ∀ノ)イヤン」


 ちなみに、涼夏っていうのは僕の名前。


「うーん、部活かー。軽音楽部があったみたいなんだけどなんか2、3年前、廃部になっちゃったんだって……茶道部にでも入ろうかな……?」


だだだだだだ!がしっ!

「軽音部に入るのか!?」


 と言いながら、僕に後ろから抱きつくような状態で部活勧誘をしてきやがっているのは、一応、小さいながらも………『小さな小さな』ふくらみがあるようなので、女子だろう。声でも解るけどね。うるさいくらいキンキン響く声だ。


「え、なにこのチビジャリ。涼夏、知合い?」


 なんか急に冷めた声になる小百合!


「知らないよ!こんな小さな女の子。僕はそっちの趣味はないつもりだし、実際にもない!だから小さなこの子ことは知らない。故に僕は悪くないし、犯罪も起こしていない!」

「うわ~、なにこの人 熱くなっちゃってるの……まじ気持ち悪いんですけど。

 え~っと、ぼくはなんさいですかー?お母さんとはぐれちゃたのー?お姉さんが一緒にいてあげるねー」


 どっちの方が気持ち悪いんだよ、急にお姉さんぶったりしちゃってさ。頑張って背伸びしたところで、小百合は小百合のままなのにね。

「どっちの方が気持ち悪いんだよ、急にお姉さんぶったりしちゃってさ。頑張って背伸びしたところで、小百合は小百合のままなのにね」

どすん!


「僕の足の小指が!焼けるように痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 こ、この女、躊躇なく僕の足を破壊しようとしたぞ……!


「僕がなにしたっていうんだ!なにもしていないだろう!」

「今の心の声、全部口からもれていたよ……!」

「それはそれ、これはこれだよ。そんなことでいちいちイライラするなんて、カルシウム足りてねぇーんじゃねぇのか?おっぱい大きくなんねぇぞ」

「おっ、おっぱ……!うるさいなぁアホ、これでも大きくなっとるんや!確認してみぃ、ほら、お姉さんの実力見せたるわ!後で後悔しなさんなや!」


 でた!小百合が興奮した時に見られる『エセ関西弁』。これが見られるということは、いつもの自滅するパターンだ。


「では、その実力とやらを試させてもらおうか?」

「ええよ~、試してみ~。ほらさっさとせんか!泣いても許してやんねぇかんな!」


 仁王立ちのようにして、堂々と胸を張る小百合。なんで、こうもどうどうと男子におっぱいを触らせようとする女子がいるのだろう?やっぱり恥女なのか、こいつは恥女なのか?


「こらー!時雨ををむしするなぁー!!」

「「あぁ、忘れていた」」


 見事なシンクロをみせる。


「うぅ、無視するだけでなく、忘れていただなんて……ひどい。時雨は、友達が欲しいだけのに……」


 友達が欲しい?ともだちがほしい?トモダチガホシイ?こいつは、一体、なにを言っているのだ。友達なんてもの、本当に欲しいと思っているのだろうか。

 いやいや待て待て、必ずしもこの時雨とか言う幼女と、僕の世界が、似ているとも限らない。もしかしたら僕のとは別パターンのヒドイ過去を背負っているのかもしれない。そうだよな、外見だけでその人の全てを知ることなんて、出来るほずがない。

 と、戯言にすぎない独り言をしていると、小百合は、


「なんだ、おまえ友達がいないのか?可哀想に。制服のコスプレというものは、たいがい歳上が無理して着るものばかりだと思っていたが、そうでもないらしいな。」


 なんて、どうでもいいことに対して本気で感心しているようで、諸手を胸の前で組んでいる。すると、二つのやわらかそうな特大ジャンボプリンが、これでもか!!ってほど強調されている。……服の上からではあまり気付かなかったけど、小百合、おっぱいデケーな。

 それに比べて僕の背中に当たっているのは、せいぜいマシュマロがいいところだろう。まぁ、やわらかいってことは◎だけどね。


「時雨は幼女じゃないー!!それにコスプレでもなーい!!お前らと同じ一年生だー!!ほら!新入生代表の挨拶をしていただろ!!時雨、頭良いんだぞ!!」

「おいおい、寝言は寝てから言えよ。新入生挨拶と言えば、校長とかが話す時に使う『あの台』に隠れてしまった、小学生の記憶しかないのだが?っていつまで涼夏にくっついているつもりだ!とっとと離れろ」


 そう言いながら、小百合は追いはぎのごとく容赦なしに引き剥しにかかる。まぁ、若干当たっている、温かいふくらみがあるので、時雨とかいう幼女、頑張れ!


「嫌だー!!お兄ちゃんと一緒にいるー!!」

「「お兄ちゃん?」」


 待て待て待て、一瞬どきっとしてしまったのはなんでだ?確かに声を訊くぶんには、決して悪くない。むしろ可愛らしい声だ。けど、相手は小学生だぞ?いいのか僕?


「そうか、そうか。涼夏は妹系が好きだったんだな。通りで『ちょっぴりエッチなあいつはおさななじみ』は効果がないわけだ。うん、あたしもこれからは妹系で攻めてみるか」

「ま、待ってよ!僕はシスコンじゃないよ!!それに、抱きつかれている方にとっては、迷惑なんだよ!」


 刹那、時雨とか言う小学生(仮)の腕に力が入り、抜ける。まるで別れを惜しむような。まるで僕の体温を感じとるような。まるでもう会うことの出来ない恋人のような。


「じゃあ、涼夏はこの『妹系幼女』のことが嫌いなんだな。ほらさっさと離れろ!」小百合はオジャマムシを追い払うように、僕と、時雨を引き剥す。まだもう少し、彼女のぬくもりを感じていたかった。


 振り返ると、そこには赤いランドセルと黄色のボウシがとても似合いそうな背の低い女子が、この世の終わりを告げられた人のように、深い絶望に染まった色の瞳をしていた。

 一体、なにが彼女を追いつめているのだろう?

 一体、どこで彼女は失敗してしまったのだろう?

 一体、どうやったら彼女は笑ってくれるのだろう?

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