回想
僕は我慢しなくていいのだろうか。
僕は許してもらえるのだろうか。
僕は小百合のそばにもどった。
「僕は、もう、いいのかな?」
少しでも気を緩めてしまえば、涙がこぼれそうになる。
僕は昔、とはいえまだ11歳の小さい子どもなのだけれど、やっぱりあの出来事はどう考えてみても、どう頑張ってみても『昔』になってしまう。
さんざん、『最年少ギタリスト現る!』みたいな感じで、
サンザン、マスメディアに取り上げられて、
散々、持てはやされたのは、過去。うれしかった。僕は同い年の人達とは違うんだって。僕は優れている人間なんだって。優越感に浸っていなかった、と言えば嘘になる。でも、他人を見下したり馬鹿にしたり蹴落としたりはしていない。
絶対に、だ。
僕にとって優れている面はあっても圧倒的に劣っている面がある。体が強くなかったり、目が悪かったり、運動能力が低かったり、背が低かったり、声が小さかったり、口べただったり、無口だったり、…………、相対的に見ても絶対的に捉えてもどうだろう?あまり+《プラス》な人間だとは思えない。むしろ-《マイナス》だ。
でも、そんな負荷だらけな僕のことを良く思わない人もいた。そりゃそうだ。妬まれる人間が全て善良な人とは限らない。出来過ぎている強者は嫉妬されるし、不出来過ぎる弱者は狙われる。
強い人をでる杭に例えるならば、僕はさしずめ螺であろう。打たれたとしても、引っ込むことはなく、周りに亀裂を作る。
なんて迷惑なんでしょう。
なんて最悪なんでしょう。
なんて災厄なんでしょう。
なんて遠回りしたって、結局、僕はちょうどいい目標になった。
ゴールにはならなかったけどターゲットになった。
そして、事件は起こりましたとさ。
え? なにが起こったのかって?
そんな不幸自慢しても楽しくないでしょ。