新生活
皆さんも経験あるのではなかろうか。
子どもは皆、ヒーローに憧れを抱く。
それが、仮面のヒーローであったり、
怪獣を撃退するウルトラな人であったり、
夜の路地裏でハンドガンを発砲する人であったり、
美少女で戦士な衛星のような名前の持ち主である。
そんな彼(彼女)になりたくて一生懸命、技名を叫んだ覚えがあるはずだ。俺も例外ではなく、悪いヤツらをやっつけたい!と思っていた。
しかし、そんな淡い夢物語は、一瞬で砕け散った。
母さんがビデオを巻き戻し、再生をした。画面に映し出されたのは、暗い空間。音が出ていないと思って、音量を上げた。パッと明るくなったと思うと、一気に、来た。強い衝撃。ただ、乱暴と言える大きな音。筆舌するには、おこがましいくてしょうがないような、ただ、殴られつ続けるような感覚に襲われた。
その中にどこか温かな、少し寂しげな、だけどやっぱり優しいものを感じた。
それが当時幼稚園児の俺と、ROCKと呼ばれる音楽との出合いだった。
SS!!~二次創作じゃないよ~
僕の家族、菘家の住人は音楽をこよなく愛している。
と、言ってみたものの、実際には僕と母さんの二人しか今はいない。
いわゆる母子家庭と言うやつだ。
うちの家族構成を聞いて、「大変なのに頑張っているね…」とか言って同情の眼差しを向けるのは、本当に止めてほしい。
虫酸が走る!……とまでは言わないけれど、かなり不快な思いをするのは事実だ。
家族のカタチなんて自分が知っているのが全てじゃないんだぞ、って教えてやりたい。
僕は、今の生活を充分満足しているし、不幸だなんて思ったことなんて一度もないぞ、って。
バンッ!
「コラー!起きろーっ! 肘からのエルボー!」
僕の部屋へノックもなしに入って来た、ウザイくらいなハイテンションガールの名前は……
「どーん!」
彼女の肘が、当たってはいけない位置に直撃する!
「い、痛い~~~~~~~!」
「あ、やべ……ずれちゃった。おなか狙ったつもりだったんだけど、ほら!的があったらそこを攻撃したくなるじゃん?それに駄目だと解っていても、どうしてもそれをやりたくなるような。ドッヂボールで相手の顔面にボールを当てたくなるような?
……乙女としては、朝っぱらからテント張っているのはちょっといただけないかな~?はい、これでおあいこ!あんたは、あたしに変なものを見せた、あたしはそれを攻撃した。ギブ アンド テイクだよ!」
「意味解んねぇよ!」
僕は立上り、ジャンプする。クソ、マジで痛い。なんで急所に攻撃されると、こんなにも痛むのだろう。なんでこんなにも残念な気持ちになるのだろう。
「ほらほら、早く着替えて!お姉さんが手伝ってあげるから……」
そう言いながら、僕のパジャマのボタンを取り外しに掛かかるのを、右手で制止させる。この一歩間違えたら恥女確定コースまっしぐらな女子、坂乃上小百合は、隣りの部屋のお姉さん、ではなく、家が隣りの同級生で、幼馴染みだ。ちなみに、お姉さんと言っているけど、誕生日は僕の方が早い。気分だけ、歳上なのだ。
「あぁ、あなたの毎晩の彼女があたしの顔に……ハァハァ」
「止めろ!興奮すんな、この 変態!」
「そんな、変態だなんて………キャッ!」
こいつ、もう駄目かもしれない。
「着替えるから、出て行け!」
僕は、小百合の背中を押すと、
「あっ、優しくしてね……」
頬が赤く染まり、上目使いなのは正直可愛いいね。
「するか、馬鹿!」
一瞬艶めかしい、色っぽい声を出した変態を、部屋から追い出して、鍵を締める。
「あなたとあたしの愛は、こんな薄っぺらい扉には邪魔出来ない……!」
なんか、若干格好良いセリフを言っているけど……『ガチャリ』と、鍵が開いた。
「I LOVE YOU!!」
とか叫びながら抱きついてきた。俺はバランスを崩し、ベットへ倒れ込む。上半身裸の俺に頬をすり寄せてくる。朝の時間はとても貴重なのに……