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番外編 贈りたい

 今日も音楽室へ向かう。

 真っ黒なグランドピアノの前に座って一呼吸。


 奏で始めてしばらく経って、譜面立てに人が映った。彼女だ。

 ドアの向こうに立って、毎日僕の演奏を聴いている。


 次はあの曲を弾こう。前楽しそうにしていたから。



 彼女がやってくるようになったのは、半年くらい前から。

 初めは鬱陶しくも思った。

 でも暫く経った日のこと。ある曲を弾いていたら彼女が苦しそうな顔をしているのに気付いた。なぜ? どうしたらいいんだと困った。演奏をやめて「どうしたの?」と聞きにいく程の勇気もなくて、ただモヤモヤしたままピアノを奏でていた。演奏が終わって僕がピアノを片付けている内に、彼女はいつもいなくなっている。だから、それまでは我慢というかピアノに集中しようと思っていたのに、不意に彼女に目を向けると、もうあの顔はしていなかった。曲を変えたからなのか、他の理由があるのかは分からなかった。ただ念の為、その曲はもう弾かないように決めた。

 それから、彼女がまた来てくれるか心配になっていることに気づいて。僕が演奏する度に来てくれるのが、なんだか楽しみになって。

 彼女のする表情が、恋慕うような顔に心が鳴った。

 嬉しかった。彼女が楽しそうに僕の音に浸ってくれるのが。それで、僕は心底ピアノをやっていてよかったと思ったんだ。


 コンクールに出たいから、プロになりたいから、優秀な成績を収めたいから……。

 そういう理由でピアノをやってる訳じゃない。ただ、本当に趣味で。

 気分を上げる為に早朝にピアノを弾いていた。


 でも、君が来たから。

 僕の音を聴いてくれるから。


 僕以外の人に弾きたくなった。


 君に贈りたい。

 この音の一つ一つを、大切に。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

裏話へは下から飛べるので、気になる方は覗いてみてください。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25118867

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