表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第二話 知りたい

「いつからピアノをやってるの?」

「覚えてないなぁ。多分小学生くらいから」

「なんで始めたの?」

「鍵盤いじってると楽しくて」

「本当にピアノが好きなんだね」

「うん、好き」


 そう笑う彼の顔はとても無邪気だ。

 いつも遠目で見てる顔が横にあると、少し違和感がある。


「君は何か楽器とかやってるの?」

「えっと……中学生の時クラリネットをやってたけど、やめちゃったなぁ」

「まだ吹ける?」

「ううん、もう無理だよ」

「そっかぁ……」


 笑って答えたわたしに、彼はどこか寂しそうな顔をする。聴きたかったのかな。

 でも、前に昔を思い出して吹いてみたけど、上手くいかなかった。初心者みたいになっちゃって。……一応数年は吹いてたのにな。


「歌は? 歌える?」

「うん、できるよ」

「じゃあよかった。今度聴かせて」

「今じゃなくて?」

「今でもいいなら」


 彼は期待した顔でわたしを覗き込む。少し恥ずかしくて、小さく咳払いをした後にお気に入りの曲を歌った。


「いい曲だよね」

「知ってるの?」

「うん。僕も好き」


 それから、一緒にご飯を食べたりしながら色々お話をした。

 好きな曲のこと、ジャンル、ハマってるもの、好きな食べ物、彼の選曲の理由……。


「えっ。朝のピアノ、ずっとわたしに弾いてたの?」

「うん。……っもちろん、自分の好きな曲で、弾くのが楽しかったからでもあるけど」


 上ずった声で身振り手振り言い訳をする彼に少し笑う。


「それにしても、どうしてわたしが聴いてるのがわかったの?」

「ピアノの譜面立てがあるでしょ? あれに反射して見えてたんだよ」

「えっ! いつから?」

「本当に初めの方から」


 思わず顔を隠した。

 気分がよくなって口ずさんでたのも、リズムに乗ってたのも、全部見られてたってこと……?


「嬉しかったよ、お客さんの表情が見えて」

「わたしは恥ずかしいよ」


 抗議したけど、軽く「ごめん」ですまされた。

 それから彼はわたしを見つめて、ゆっくり一言。


「また、いつもみたいに音楽室に来てくれる?」

「うん、もちろん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ