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ミャーザ・ワッケンジー国で解放したブタ族30人は善意の剣を渡され、剣戟の訓練に勤しんでいる。その部隊を率いるのはブヒゾウとブヒタロウであった。
魔法石を首に掛けたブヒゾウは紫の姿になり、敵と見なした実戦さながらの稽古をつける。
「もう少し脇をしめて、手首は力を抜いたほうがいい」
「はい、ブヒゾウさん」
部隊を任され指導する立場となったブヒゾウは、より一層責任感とヨキ達への忠誠心が増した。日々鍛錬に余念がない。
「ファイア!」
「おお!」
「ブリザード!」
「おお!」
「スロー!」
「おお! 魔法が使えるなんてやっぱすごいですね、ブヒタロウさんは!」
ブヒタロウはクールな顔つきで、ありもしない髪を掻き上げる仕草をした。
「ふっ、たいしたことないべ」
周りはブヒタロウに敬意を持って寄ってきていた。
ブヒタロウは囲まれ、得意気な顔をしている。もてはやされることにブヒタロウは上機嫌であった。
かと思いきや、なぜかブヒタロウはふと、よそ見をしていた。そして目を擦っては、薄目で遠くを見ている。
「どうしたんですか?」
「え、ああ、いや、別に……」
ブヒタロウは首を傾げた。
「気のせい……だべか……」
気がそぞろなブヒタロウをよそに、周りは興味津々に囃し立てる。
「どうやって魔法を出してるんですか?」
ブヒタロウは唐突な質問に明らかに狼狽えた。
「ど、どうって……」
「コツとかあるんですか?」
「コ、コツ……」
ブヒタロウは向けられる興味の目にジリジリ迫られて、急場凌ぎで答えた。
「じ、情熱だべ」
「情熱?」
「そうだべ。う、打ちたいという強い思いだべ」
「おお! さすがブヒタロウさん!」
周りは驚嘆した。
ブヒタロウは安堵しながら、誇らしげな表情を浮かべた。
「ふっ、たいしたことないべ」
横で聞いていたブヒゾウは心で呟いた。
(自分でもよく分かってないくせに……。よくあれで誤魔化せたな……)
「さて、これからについてだが、次はどこの国がいいんだ?」
ヨキが尋ねると、ビョウブは顎に人差し指を添えた。
「順番からいえば、トンディーク国とミャーザ・ワッケンジー国に隣接するキーモ・インデスケッド国になるけど……」
「けど?」
「おそらくもう壊滅してるんじゃないかしら」
「壊滅?」
「そう、他の国が侵略した噂を耳にしたわ。たぶんディーカイト・カゲ国あたりが」
「それは?」
「ドラゴン族よ」
「え、この世界ってドラゴンいるの?」
「そんなに驚くこと? ちょっと喜んでない?」
「だって、なんというか、珍しい生き物だろ?」
「そう? 単なる爬虫類よ」
「はちゅ……」
「まぁ、サウルス型の進化形だから、強いのは確かだけど」
「つまり……爬虫類の国?」
「そうね、カメとかヘビとか」
ヨキはヘビに会ったことを思い出した。あれの獣人って考えると……まぁ、ドラゴンみたいなものか。
カメは両生類のような気もするが、この際まぁ、いいだろう。
「で、その国が隣国に侵略してる?」
「そうね、トンディークやミャーザ・ワッケンジーがその隣国キーモ・インデスケッド国から侵略されなかったのは、ディーカイト・カゲ国に攻め込まれていたからとなるとしっくりくるわね」
「ちょ、あのさ、申し訳ないんだけど」
とヨキはビョウブの話を止めた。
「何?」
「国名が覚えられない……」
「あら、そうなの?」
毎度思うけど、名付けたの誰だよ。
「種族名でお願い」
「分かったわ。わたしたちが今、トリ族とネコ族の国を解放したでしょ?」
「うん」
「その2つの国に隣接したムシ族の国があるの」
「ムシ?」
ヨキは想像しただけで寒気がした。
「ムシかぁ……。苦手だなぁ」
ヨキは体を擦った。
「そのムシ族がこちらに侵略してこないでしょ?
その理由は、今それどころじゃないってこと。おそらくドラゴン族に侵略されているからね。そもそもムシ族は脆弱なの」
「弱い?」
「そう、あの子たちは、他種族より人口は多いけど、手足が細くて弱いのよ」
「だから率先してトリ族やネコ族の国に来なかった?」
「まぁ、毒針とか使ってくるんだけど」
「強いじゃないか! 悪意しかないじゃないか!」
「けど、残念ながら毒は悪意で出来ているから、悪意に侵された者にはそもそも効かないのよ」
「意味ないじゃないか!」
「そう。そういったわけでムシ族の国は侵略される側になっちゃったわけね」
「じゃあ、ドラゴン族がムシ族を制圧完了したら、今度攻めてくるのは……」
「もちろん……」
ビョウブは扇子を広げた。
「我々の国よ」




