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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第4章 ディーカイト・カゲ国編
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「と、まぁ、こんな経緯よ」


ビョウブは閉じた扇子を手のひらに当てて調子を取りながら、ヨキに昔話を読み聞かせるように話した。


「随分とあっけらかんと喋るんだな。ビョウブもそのうちのひとりなんだろ?」


ビョウブは扇子で口を隠して笑った。


「まぁ、そうなんだけど、今では他人の感覚のような、自分じゃないような」


ビョウブは今では悪意を失い、ネコ族の国を支配する気を()くしていた。そういった感情の変化はケージも同じだった。


「悪意に侵されると精神も侵されているってことか」


「そうね、でもヨキちゃんに言ったことは本当よ」


「言ったこと?」


「悪意が消滅することを望んでいるってこと。悪が滅んでゆく未来を思い描いたら、なんだかとても興奮したの」


「『悪』か……」


「何?」


「『悪意』と『悪』は違うと思うんだ」


「あら、随分と哲学的な話をするのね」


「悪意は誰にでもあると思うんだ。『魔が差す』って言うだろ? だからこそ人は悪意に侵された。

でも『悪』はさ、自分の行為を『悪意』と思っていないんだよ」


「自分が真っ当だと思っているから?」


「そう」


ヨキは自分の手を眺めた。


「その最初の亜人ってのは、ビョウブは知らないのか?」


ビョウブは首を振った。


「残念ながら知らないわ。もしかしたら知っていたけど忘れてしまったのかも」


「そっか」


いずれその亜人と対峙(たいじ)せねばならない。そのことをヨキは想像した。


「その亜人は生まれながらの『悪』かもしれない。そんな生粋(きっすい)の『悪』と出会ったら、僕の力は通用するんだろうか?」


ビョウブにはヨキが弱気になっているように感じた。そんなヨキをビョウブは励ました。


「大丈夫よ、きっと。

この世界は元々平和だった。ということは、人は皆、生まれながらに善意しか持っていなかったということ。


全員から悪意を取り除いていって、もしまだ悪意がある者がいれば、それが諸悪の根元である、最初の悪意を持った『悪』、ということになるわよね?」


ヨキは考えながらも納得して首肯した。


「そのひとりを見つけたら、みんなで叱ればいいのよ。()()()しちゃダメ! って」


ビョウブの表現にヨキは表情を和らげた。


「そんなので分かってくれたら苦労しないよ」


「そう? でもそれくらいのおしおきしか出来ないわ。善意の者は誰もその人物を『殺したい』なんて思わないんだから」


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