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ブヒゾウは白い砂浜に佇み、特製の善意の剣を手にして剣戟の練習に勤しんでいた。
傍にカナが座って見ている。
ブヒゾウは紫の体で、しかし心は平静を保ち、一心不乱に剣を振る。
もうブヒゾウに迷いはない。
守るべき者も自分の中ではっきりと意識され、心身共に充実していた。
「カナ様ぁ!」
ブヒタロウが遠くからカナを呼びながら歩いてきた。
「どうしたの?」
「やっと終わりましたでげすよぉ。もう、ヨキ様オイラをこき使いすぎでげす」
「ふふ、お疲れ様」
「ホント疲れたでがす。カナ様、ヒールをお願いしたいでがす」
それを耳にしたブヒゾウが剣を止めた。
「カナ殿はこれからその仕事があるんだぞ。余計な魔法を使わせるな」
口を挟まれたブヒタロウは不服そうに口を膨らませた。
「オイラだって疲れてるべ」
「休めばいいだろ」
ブヒタロウは顔を逸らした。
「ふん、魔法が使えないブヒゾウには分からないべ」
「なんだと?」
2人は額を付き合わせ、いがみ合っている。
「助けてやったべ!」
「お前は失神してただけって聞いたぞ」
「け、計算してやったべ!」
「嘘をつくな。鼻がヒクヒクしてるぞ」
「こ、この!」
「なんだ、やるか?」
カナは取っ組み合いをしている2人を見ながら頭を抱えた。
「あーあ、また始まった……」
気分転換を兼ねてヨキは鍛冶屋から外へ出た。暖かい陽射しに向かって大きく伸びをする。
「うーん、心地良い日だなぁ」
そんな穏やかさをぶち壊すように遠くからブヒタロウが騒がしく走ってきた。
「わぁーん! ヨキ様ぁ! ブヒゾウがオイラの頭を剣で叩いたぁ!」
「またか……」
ヨキは深くため息をついた。
「ったく、悪意のない喧嘩ってのは治せないから困りものだな……」
ヨキはそう呟いて、泣いているブヒタロウを慰めた。
(第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編 完)
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