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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
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39


ノモンが悪意から解放されたことで、ミャーザ・ワッケンジー国内は平和を取り戻した。

多種族の者も恒例のローラー作戦によって、浄化されていった。


「ケージ」

ビョウブは長閑(のどか)に続く草原の道を歩くケージを訪ねた。


「ビョウブ? あんた、そんな顔してたのぉ?」


「それはお互い様よ。あなたももっとババアかと思ってたわ」


「バ……」


ビョウブは真剣な顔つきになった。


「どうしてあの時に逃げたの?」


「あぁ、ネコ族たちに連れてかれちゃってねぇ」


「あなたが加担すれば、ヨキちゃんたちはもっと楽に戦えたのにね」


「わたしがいたって無理だよぉ。回復魔法とかしか使えないしぃ」


ビョウブは引っ掛かることがあったが核心に触れることなく、話を逸らした。


「この子は?」とビョウブは寄り添うお供に目を向けた。


「え、……ああ、わたしのイワンニコフちゃん」


「……この子も使えそうね」とビョウブはしたたかに笑った。


「ちょ、何するの!?」


ビョウブは魔法石をイワンニコフに触れさせた。

イワンニコフは瞬間に巨大化し、岩の怪物と化した。


「わ、わたしのイワンニコフちゃんがぁ!」




当初の目的であったクジラの骨による善意の剣の大量生産を開始した。

クジラの骨はシカの角より頑丈で、加工の最中に砕けるという失敗はほとんど起こらなかった。


それを一番喜んだのはブタ族の鍛冶屋だった。


「こりゃいい! こんだけ硬いならオレの本来の力が発揮出来るぜ」


そう言って、太い腕で(のみ)にトンカチを打った。



大量生産といっても、ヨキの善意の力を込めるには、魔法をひとつひとつの剣に封じ込める必要があった。


トンディーク国の鍛冶屋が錬成した骨刀にカナ、ケージ、ビョウブ、そしてブヒタロウが魔法を放っていく。


魔法は生命エネルギーなので、4人にはかなり大変な作業であり、交代制でほどよい休憩が必要となる。


今はブヒタロウの番のようだ。


「ひぃ、ひぃ、魔法使いって過酷なんでげすな」


ヨキはブヒタロウの肩に手を置きながら(くつろ)いでいる。


「魔法の練習になるだろ? ったく、誤作動をポンポン起こされちゃ困るんだよ」


「それで結果ブヒゾウは助かったじゃないでげすかぁ」


「偶然を必然に変える。これ、すなわち鍛練なり」


「……よく分かんないでげす。ヨキ様は疲れないんでげすか?」


「僕はまったく。僕の力は体質であって、生命エネルギーではないからね」


「……疲れてほしいでげす」


「無駄口を叩かない!」


「はぁ、ふぅ、もう交代の時間じゃないでげすか?」


「まだだよ」


「もう汗だくだべ。そろそろビョウブさんが来る頃だべ。あ、ビョウブさんだべ!」


その時にブヒタロウの手から稲妻が飛び出した。


「ぎゃっ!」


汗だくのブヒタロウは感電して倒れた。


「またかよ!」


ヨキはため息をついた。


「『さんだ』って二度と言うな!」


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