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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
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37


「ん? なんだ、これは?」


ノモンが投げられた魔法石を(つか)んだ。


「なんだ? 力が(みなぎ)ってくるぞ」


ノモンは腕に力を込めて、(たぎ)るパワーを確かめた。


「おお、すごいな、こりゃ。いったい何だってんだ?」


ノモンは周りを見回した。

周りの者が一斉に自分を見ながら警戒している。


「どうしたんだ、みんな? オレをそんな目で見て?」


ビョウブは尋ねた。


「今、どんな気分?」


「気分? とっても良いぞ。何だか力が湧き上がってくるし、爽快だぞ」


ビョウブはヨキへと目を移した。

「どう?」


ヨキは戸惑いながらノモンを見つめていた。


「どうって……ノモンは悪意に侵されてるじゃないか」


ノモンは紫のオーラを放ち、体がひとまわり大きくなっている。あの圧倒的な力を見せつけたノモンの姿がここにある。

ヨキは背中の傷が(うず)く感覚がした。


ビョウブは楽しげに両手を()むように重ねた。


「そう、悪意に侵されてる。でも分かるでしょ? 心は善意のままなの」


紫ノモンをヨキは見つめた。確かに威圧感はあるが、穏やかさが(にじ)み出ている。話し方も先ほどから変わらない。


「すごいでしょ、これ! いざというとき役に立つんじゃない?」


ノモンの周りではネコ族たちが色めき立っていた。


「え、ノモン。なんか(たくま)しいニャ!」

「カッコいいミャ!」

「頼りがいがあるミャ」


ネコ族たちはノモンに抱きついた。


「えっ、そうか? いや、困ったな、がはっがはっ」


鼻の下を伸ばしてノモンはそのネコ族たちと肩を組んでいる。


ビョウブはヨキに説明する。


「触っても敵意がない限り悪意は感染しない。安全でしょ?」


ノモンは上機嫌で笑い出した。


「がははは。いいカツオ節が手に入ったんだ。食べに来るか、子猫ちゃん?」

「行くニャ、行くニャ!」


なんかノモンはネコ族を口説いている。


「いざというときって、あれのことか?」

ヨキは白い目でビョウブを見た。


「ちょっと、ノモン! 石を返して!」


「え、今からカツオ節パーティーするんだよ」


「いいから返して!」


ノモンは渋々魔法石を投げた。手放してもノモンの体から悪意は抜けていない。

ビョウブは投げられた石の紐を掴んだ。石に触りたくないようだ。


「なんだ、ビョウブ。悪意に侵されたくないのか?」


ビョウブは首を激しく横へ振った。


「イヤよ! あんな醜い姿になるのは!」


確かに神経質そうな嫌な見た目だったな、とヨキは思い起こした。いまのほうが清潔感があるし、何より美少年といった感じだ。


ビョウブからヨキは魔法石を受け取った。その紐を揺らして中身を見つめる。


「ふうん、そんな力があるのか。この石を所持する適任といったら……」


ヨキは魔法石を投げた。


「ブヒゾウ!」


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