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「ん? なんだ、これは?」
ノモンが投げられた魔法石を掴んだ。
「なんだ? 力が漲ってくるぞ」
ノモンは腕に力を込めて、滾るパワーを確かめた。
「おお、すごいな、こりゃ。いったい何だってんだ?」
ノモンは周りを見回した。
周りの者が一斉に自分を見ながら警戒している。
「どうしたんだ、みんな? オレをそんな目で見て?」
ビョウブは尋ねた。
「今、どんな気分?」
「気分? とっても良いぞ。何だか力が湧き上がってくるし、爽快だぞ」
ビョウブはヨキへと目を移した。
「どう?」
ヨキは戸惑いながらノモンを見つめていた。
「どうって……ノモンは悪意に侵されてるじゃないか」
ノモンは紫のオーラを放ち、体がひとまわり大きくなっている。あの圧倒的な力を見せつけたノモンの姿がここにある。
ヨキは背中の傷が疼く感覚がした。
ビョウブは楽しげに両手を揉むように重ねた。
「そう、悪意に侵されてる。でも分かるでしょ? 心は善意のままなの」
紫ノモンをヨキは見つめた。確かに威圧感はあるが、穏やかさが滲み出ている。話し方も先ほどから変わらない。
「すごいでしょ、これ! いざというとき役に立つんじゃない?」
ノモンの周りではネコ族たちが色めき立っていた。
「え、ノモン。なんか逞しいニャ!」
「カッコいいミャ!」
「頼りがいがあるミャ」
ネコ族たちはノモンに抱きついた。
「えっ、そうか? いや、困ったな、がはっがはっ」
鼻の下を伸ばしてノモンはそのネコ族たちと肩を組んでいる。
ビョウブはヨキに説明する。
「触っても敵意がない限り悪意は感染しない。安全でしょ?」
ノモンは上機嫌で笑い出した。
「がははは。いいカツオ節が手に入ったんだ。食べに来るか、子猫ちゃん?」
「行くニャ、行くニャ!」
なんかノモンはネコ族を口説いている。
「いざというときって、あれのことか?」
ヨキは白い目でビョウブを見た。
「ちょっと、ノモン! 石を返して!」
「え、今からカツオ節パーティーするんだよ」
「いいから返して!」
ノモンは渋々魔法石を投げた。手放してもノモンの体から悪意は抜けていない。
ビョウブは投げられた石の紐を掴んだ。石に触りたくないようだ。
「なんだ、ビョウブ。悪意に侵されたくないのか?」
ビョウブは首を激しく横へ振った。
「イヤよ! あんな醜い姿になるのは!」
確かに神経質そうな嫌な見た目だったな、とヨキは思い起こした。いまのほうが清潔感があるし、何より美少年といった感じだ。
ビョウブからヨキは魔法石を受け取った。その紐を揺らして中身を見つめる。
「ふうん、そんな力があるのか。この石を所持する適任といったら……」
ヨキは魔法石を投げた。
「ブヒゾウ!」




