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人の群れから離れて、ブヒゾウとブヒタロウは海の見下ろせる岩場を歩いた。
普段はブヒゾウが先導するが、ブヒタロウが今は先を歩いている。
沈黙の時間が流れ、ブヒゾウは前を歩くブヒタロウに話し掛けた。
「お前にも迷惑かけた」
ブヒタロウは口を閉じ、未だ膨れっ面をして歩いている。
「悪かった」
ブヒゾウの謝罪にも振り返らなかった。
「オイラの勝手な行動で、みんなを危険な目に遭わせてしまって……」
ブヒタロウは足を止めた。その背中にブヒゾウは話し掛ける。
「だから謝って済むことじゃないけど、やはり……」
「オイラは!」
ブヒゾウの言葉を掻き消すようにブヒタロウは叫んだ。
「オイラはブヒゾウにたくさん教えてもらったべ」
ブヒタロウは拳を強く握った。
「魚の捕り方も、ドングリの見つけ方も、ナイフの作り方も」
ブヒゾウは振り返らないブヒタロウの背中を見つめた。
「たくさん教えてもらったべ。どんくさいオイラにいつも丁寧に何度も何度も」
「ブヒタロウ……」
「ブヒゾウがいなかったらオイラなんてどこ行っても足手まといのままだべ」
ブヒタロウはくるりと振り返った。
「迷惑かけた? かけていいべ! オイラだってブヒゾウを助けたいべ! 何度も何度も!」
「ブヒタロウ……」
「仲間だべ! オイラたちは兄弟みたいなもんだべ! オイラはそう思ってる! だから!」
ブヒタロウはブヒゾウへ歩み寄った。
「だから……、ただ……ありがとうって言ってくれたら、それでいいべ……」
ブヒタロウは微笑んだ。
「そう言ってくれたら、オイラはそれで嬉しいべ」
ブヒゾウは溢れる涙を抑えきれないままに、ブヒタロウの手を固く握った。
「ブヒタロウ……」
そしてブヒタロウの目をしっかりと見据え、ブヒゾウは呟いた。
「……ありがとう」




