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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第1章 はじめの村編
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10


「覚えているのか?」


ヨキが尋ねるとブヒタロウは得意気に(うなず)いてみせた。


「へい。ブヒノスケがおかしくなって、そこから一気に村中に広がっていったんどす」


つまり、悪意は伝染する?


ヨキは興味深げに腕を組んだ。


「そもそもブヒノスケはどうして侵されたんだ?」


ブヒタロウは首をひねった。

「さあ、そこまでは……」


感染ルートが分からないと、対処が難しそうだ。


ただ、とにかく状況を見てみないことにはどうにもならない。ヨキは2人に(うなず)いてみせた。


「分かった。とりあえず村に案内してくれ。ただ、助けられるかどうかはまだ判断出来ない」


「あ、ありがとうございます!」


ブヒゾウは嬉しそうにヨキに頭を下げた。






ブヒゾウに先導されて、一行は南東へと歩き出した。


ブヒタロウの言うことが正しいのなら、村の(おさ)さえ触れられれば事が済む。


動物は長になると、体つきや体毛の色を変化させる。長としての威厳が本能として備わるのだろう。そしてそれを他の者も認め、従うようになる。群れの習性だ。


あながちブヒタロウの言うことは間違っていないかもしれない。



道なき道を突き進んでいると、カサカサと草の踏む音がして、先導するブヒゾウが足を止めた。


「少しお待ちを」


手で僕を制して様子をうかがった。

すると草の陰から、ヘビが姿を現した。


体長はさほどではなかったが、どう見ても無害ではなかった。

紫のオーラを(まと)い、鋭い牙と、何より斑点がドクロのマークになっている。


「分かりやすく毒持ちじゃないか! 悪意しかないぞ!」

ヨキは突っ込んだ。


先導するブヒゾウは(たたず)みながら、こちらに来ないよう警戒していた。ヘビはこちらに気づいていない。

ブヒタロウは完全に身を(すく)め足を震わせていた。


「ブヒタロウ」


ヨキはそんなブヒタロウの肩を叩いた。


「ちょっと触ってみてくれないか?」


「はぁ!? な、な、なんでオイラが!?」


「静かに! 声がデカい」


ブヒタロウは急いで口を両手で(ふさ)いだ。


「大丈夫、すぐに助けるから」


「い、嫌でがす!」


ブヒタロウは(ささや)き声を我慢できず漏らしながら首を振った。


「大丈夫だって。村を助ける前に調べることがあるんだ」


ヨキはそう言ってブヒタロウに眼差しを向けた。


「頼むよ」


ブヒタロウは黙り込んだ。


そしてヨキとヘビを交互に見ながら、意を決して震える足でゆっくりとヘビのほうへと進んでいった。


良い奴だな……。

村のために恐怖を乗り越えようとするなんて。


ヨキは少しブヒタロウを見直した。


ブヒタロウは恐る恐る近づいていって、ヘビの頭を(つか)んだ。


「こ、これでいいんだべか?」


ヘビはブヒタロウに掴まれ、敵意()き出しに口を広げた。


「シャー!」


「ぎゃーっ!」


ブヒタロウは悲鳴をあげた。それでも果敢に手を放さない。


「ま、まだ、でげすか?」


「もうちょっと」


「ま、まだ……」


するとブヒタロウは言葉を途切れさせた。ブヒタロウの体が紫色に侵されてゆく。


「ぐおおおお!」


「ブヒタロウ!」

そばで見ていたブヒゾウは思わず叫んだ。


ブヒタロウの体が膨らみ、鋭い目付きと(とが)った牙が伸びてゆく。


「ぐおおおお!」


ヨキはブヒタロウの体に触れた。


「はい」


ヨキの手が悪意のオーラを(はら)ってゆく。ブヒタロウの体は縮み、掴んでいたヘビの体からもオーラが消えていった。




面白いと思った方、続きが気になる方は、

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