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「覚えているのか?」
ヨキが尋ねるとブヒタロウは得意気に頷いてみせた。
「へい。ブヒノスケがおかしくなって、そこから一気に村中に広がっていったんどす」
つまり、悪意は伝染する?
ヨキは興味深げに腕を組んだ。
「そもそもブヒノスケはどうして侵されたんだ?」
ブヒタロウは首をひねった。
「さあ、そこまでは……」
感染ルートが分からないと、対処が難しそうだ。
ただ、とにかく状況を見てみないことにはどうにもならない。ヨキは2人に頷いてみせた。
「分かった。とりあえず村に案内してくれ。ただ、助けられるかどうかはまだ判断出来ない」
「あ、ありがとうございます!」
ブヒゾウは嬉しそうにヨキに頭を下げた。
ブヒゾウに先導されて、一行は南東へと歩き出した。
ブヒタロウの言うことが正しいのなら、村の長さえ触れられれば事が済む。
動物は長になると、体つきや体毛の色を変化させる。長としての威厳が本能として備わるのだろう。そしてそれを他の者も認め、従うようになる。群れの習性だ。
あながちブヒタロウの言うことは間違っていないかもしれない。
道なき道を突き進んでいると、カサカサと草の踏む音がして、先導するブヒゾウが足を止めた。
「少しお待ちを」
手で僕を制して様子をうかがった。
すると草の陰から、ヘビが姿を現した。
体長はさほどではなかったが、どう見ても無害ではなかった。
紫のオーラを纏い、鋭い牙と、何より斑点がドクロのマークになっている。
「分かりやすく毒持ちじゃないか! 悪意しかないぞ!」
ヨキは突っ込んだ。
先導するブヒゾウは佇みながら、こちらに来ないよう警戒していた。ヘビはこちらに気づいていない。
ブヒタロウは完全に身を竦め足を震わせていた。
「ブヒタロウ」
ヨキはそんなブヒタロウの肩を叩いた。
「ちょっと触ってみてくれないか?」
「はぁ!? な、な、なんでオイラが!?」
「静かに! 声がデカい」
ブヒタロウは急いで口を両手で杜いだ。
「大丈夫、すぐに助けるから」
「い、嫌でがす!」
ブヒタロウは囁き声を我慢できず漏らしながら首を振った。
「大丈夫だって。村を助ける前に調べることがあるんだ」
ヨキはそう言ってブヒタロウに眼差しを向けた。
「頼むよ」
ブヒタロウは黙り込んだ。
そしてヨキとヘビを交互に見ながら、意を決して震える足でゆっくりとヘビのほうへと進んでいった。
良い奴だな……。
村のために恐怖を乗り越えようとするなんて。
ヨキは少しブヒタロウを見直した。
ブヒタロウは恐る恐る近づいていって、ヘビの頭を掴んだ。
「こ、これでいいんだべか?」
ヘビはブヒタロウに掴まれ、敵意剥き出しに口を広げた。
「シャー!」
「ぎゃーっ!」
ブヒタロウは悲鳴をあげた。それでも果敢に手を放さない。
「ま、まだ、でげすか?」
「もうちょっと」
「ま、まだ……」
するとブヒタロウは言葉を途切れさせた。ブヒタロウの体が紫色に侵されてゆく。
「ぐおおおお!」
「ブヒタロウ!」
そばで見ていたブヒゾウは思わず叫んだ。
ブヒタロウの体が膨らみ、鋭い目付きと尖った牙が伸びてゆく。
「ぐおおおお!」
ヨキはブヒタロウの体に触れた。
「はい」
ヨキの手が悪意のオーラを祓ってゆく。ブヒタロウの体は縮み、掴んでいたヘビの体からもオーラが消えていった。
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