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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
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32


ヨキは倒れていたミャーサ、ブヒタロウ、サントーリオを起こした。


「大丈夫か?」


ブヒタロウは頭をふらふらさせたまま立ち上がった。


「ヨキさまぁ、ご機嫌でがすか?」


「……ご機嫌だよ。ほら、しっかりしろ」


「はい~」


ブヒタロウは(いま)だに正気を保てていないようだった。



ブヒゾウとノモンは(いま)だに激しい戦いを繰り広げている。


「あとはブヒゾウを治してやらないと」


ヨキの言葉にカナは(うなず)いた。


しかしふたりの動きは巨漢ながら素早く、カナの照準がなかなか合わない。


今、ブヒゾウの悪意を(はら)ったら、ノモンを押さえる(すべ)がなくなる。そのため、ふたり同時に悪意を取り除く必要があった。


カナはいつでも魔法を当てられる体勢のまま、ブヒゾウとノモンの動きを目で追っていた。

けれど、カナは足に力が入らなくなって不意によろけた。


「大丈夫か、カナ?」


ヨキはカナの体を支えた。


「……大丈夫」


「僕にたくさんヒールを使っちゃったからな……。魔法はケージに頼むから休んでくれ」


それでもカナは首を横へ振った。


「いいの、わたしにやらせて」


カナは自分の力でブヒゾウを治したかった。ブヒゾウが悪意に侵されながらも自分を守ろうとしたことに応えねばならない。


カナは気を張って、ブヒゾウとノモンを凝視した。


ヨキは叫んだ。

「おーい、ケージ! いるか? スローを……」


しかし返事がない。

「おーい!」


ミャーサが堀へと走って確認した。

「誰もいないミャ」


「は?」


「どうやら撤退したようミャ」


「なんでだよ!」


気まぐれなネコ族と共に逃げたようだ。


「ったく、あいつは何しに来たんだよ」


ヨキは愚痴りながらブヒタロウに頼んだ。


「もう一度、サンダー出せるか?」


ブヒタロウはその言葉にようやくシャキッと体を直立させた。


「サンダー?」


「さっき出したろ?」


「オ、オイラがサンダーを出した? し、知らないでげす」


「お前が出したってケージは言ってたぞ」


「出した覚えはないでげす」


「出すつもりなかったのか?」


「ないでげす」


ブヒタロウは自分の手を見つめた。


「オイラ、そんな余裕なかったでげす。サントーリオさんと地面に降りて、『一時退散だ』って逃げようと……」


その時にブヒタロウの手から激しい稲妻が走って辺りを貫いた。


「うぎゃ!」


ブヒタロウはそのまま倒れ込んだ。


サントーリオもミャーサも、そして組み合っているノモンとブヒゾウも再び感電して倒れ込んだ。


ヨキとカナは何が起こったのか分からず呆然とした。


「なんでサンダーが出たの?」


カナの戸惑いに、ヨキはブヒタロウの言葉を思い出した。


「一時退散だ……、退散だ……、たいサンダ……。


……って、サンダー唱えてるじゃないか!」


ヨキは地面で伸びているブヒタロウに突っ込んだ。


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