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ブヒゾウはノモンの両腕を押さえ制している。
「ブヒゾウ!」
カナは叫んだ。それは喜びではなく、驚きの色が含まれていた。
ブヒゾウの体は未だに紫のオーラを帯びている。それなのにノモンに反旗を翻していたからであった。
「貴様、どういうつもりだ!」
ノモンが抑えられながらブヒゾウを威嚇した。
ブヒゾウは怯むことなくノモンの目を凝視し、荒い息を吐きながら呟いた。
「……カナ……殿を……守る……」
ブヒゾウはノモンを抑え、腕に力を込めた。
「……そう……約束した……」
悪意に侵されながらも、強い意志は捨てることなく心に留めている。
トリ族が悪意に感染してもクックル王子を逃がそうとしたように、強い忠誠心は悪意すら凌駕するのだろう。
『オイラはカナ殿を守りたい』
ブヒゾウの台詞がカナの頭を過り、カナの瞳に涙が滲んだ。
ブヒゾウはノモンを殴りつけ、ノモンの体は仰け反った。
口から血が垂れる。それをノモンは腕で拭って激昂した。
「貴様ぁ! 労力の価値しかないブタ族の分際で!」
ブヒゾウは身を正し、ノモンと対峙した。
「そう……思うなら……、ブタ族の……力を……借りるな……、ネコ族風情が!」
ブヒゾウは悪意に侵されながらノモンに啖呵を切った。
ノモンは青筋を額に立ててブヒゾウに突進した。ブヒゾウはそれを真っ向から受け止めた。
カナはその激しい戦いを横目に、段々と衰弱してゆくヨキの身を案じた。
「ヨキ……」
ヨキは虚ろな目で、カナへその目を向けることも出来ずに伏せていた。
「どうしたらいいの……」
カナは必死にヒールを放ち続けた。治らないと分かっていてもヒールを放たずにはいられなかった。
「ヒール! ヒール! ヒール!」
その時、カナの放ったヒールがヨキの体へ届く寸前で紫の塊に包まれ、そのままヨキの体内へ入りゆくのをカナは見た。
カナはその玉の出所に目を向けた。
血みどろになったビョウブが伏せたまま右手をカナのほうへと向けていた。




