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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
82/161

27


「は?」


ヨキはビョウブの突然の申し出に面食らった。


「ですから、わたしを善意に染めていただきたいのです」


目の前の悪意に侵された者が急に白旗を揚げる仕草を見せてきた。胡散(うさん)臭さがプンプンと漂う。


「そんなの信用できるわけないだろ」


「どうしてですか?」


「訳の分からないことを言われて、それを即座に理解して信用しろ、と? 何か企んでいるのか?」


ビョウブは眉を下げて困り顔を表した。


「わたしもあなたにこうして突然出会ったわけですからね。突然の申し出になるのは仕方ないことです」


「善意に染まりたい? ゲームを放棄するってことか?」


ビョウブは首を振った。


「わたしは陳腐な国取りゲームなんぞ、もう興味がないということです。けれどゲームに勝つということに関しては諦めたわけではありませんよ」


「悪 vs(たい) 善 に関して、善のほうへ付く、と?」


「そうです」


「信用できん」とヨキはそっぽを向いた。


「なぜですか?」


「簡単に寝返るやつは我々も裏切る可能性があるってことだろ?」


「それは絶対にありません」

ビョウブはきっぱりと断言した。


「なぜ言い切れる?」


ビョウブは不思議そうに答えた。


「なぜって、私から悪意が消えるのでしょう? あなたは悪意を消せるのでしょう? 悪意が消えた(のち)にそんな邪念など生まれるはずがないではないですか」


ビョウブは首に掛けた魔法石をはずした。


「これをあなた方に差し上げます」


投げられた魔法石をヨキは受け取った。


「これでいつでもわたしを善意に染められるでしょう」


「……染めるんじゃない。悪意を取り除くんだ」


ビョウブは口に手を当てて笑った。


「感覚の違いですね。わたしは悪意側ですので」


ビョウブは両手を広げ身を(ゆだ)ねた。


「さあ、わたしに善意を」



ヨキはカナと顔を合わせた。

ビョウブが攻撃魔法を繰り出してきても、こちらは無効化できる。魔法石ももうビョウブの手元にはない。


2人は互いに目で語り合って(うなず)いた。


ヨキに手を添えられ、カナは魔法を唱えた。


「ヒー……」



ズバーーーン!!



とてつもない轟音(ごうおん)が突如響いた。ヨキもカナもあまりの激しさに身を(すく)めた。


ただその音よりも驚いたのは、目の前のビョウブの体に大剣が突き刺さり、貫通していることだった。


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