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「は?」
ヨキはビョウブの突然の申し出に面食らった。
「ですから、わたしを善意に染めていただきたいのです」
目の前の悪意に侵された者が急に白旗を揚げる仕草を見せてきた。胡散臭さがプンプンと漂う。
「そんなの信用できるわけないだろ」
「どうしてですか?」
「訳の分からないことを言われて、それを即座に理解して信用しろ、と? 何か企んでいるのか?」
ビョウブは眉を下げて困り顔を表した。
「わたしもあなたにこうして突然出会ったわけですからね。突然の申し出になるのは仕方ないことです」
「善意に染まりたい? ゲームを放棄するってことか?」
ビョウブは首を振った。
「わたしは陳腐な国取りゲームなんぞ、もう興味がないということです。けれどゲームに勝つということに関しては諦めたわけではありませんよ」
「悪 vs 善 に関して、善のほうへ付く、と?」
「そうです」
「信用できん」とヨキはそっぽを向いた。
「なぜですか?」
「簡単に寝返るやつは我々も裏切る可能性があるってことだろ?」
「それは絶対にありません」
ビョウブはきっぱりと断言した。
「なぜ言い切れる?」
ビョウブは不思議そうに答えた。
「なぜって、私から悪意が消えるのでしょう? あなたは悪意を消せるのでしょう? 悪意が消えた後にそんな邪念など生まれるはずがないではないですか」
ビョウブは首に掛けた魔法石をはずした。
「これをあなた方に差し上げます」
投げられた魔法石をヨキは受け取った。
「これでいつでもわたしを善意に染められるでしょう」
「……染めるんじゃない。悪意を取り除くんだ」
ビョウブは口に手を当てて笑った。
「感覚の違いですね。わたしは悪意側ですので」
ビョウブは両手を広げ身を委ねた。
「さあ、わたしに善意を」
ヨキはカナと顔を合わせた。
ビョウブが攻撃魔法を繰り出してきても、こちらは無効化できる。魔法石ももうビョウブの手元にはない。
2人は互いに目で語り合って頷いた。
ヨキに手を添えられ、カナは魔法を唱えた。
「ヒー……」
ズバーーーン!!
とてつもない轟音が突如響いた。ヨキもカナもあまりの激しさに身を竦めた。
ただその音よりも驚いたのは、目の前のビョウブの体に大剣が突き刺さり、貫通していることだった。




