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ビョウブは感心したように何度も頷いた。
「確かにこの世に悪意があるのなら、それを拭い去る存在がいないとつまらない」
ヨキは呆れてため息をついた。
「まるで僕もそのゲームを面白くする駒みたいに言うじゃないか」
「当然ですよ」とビョウブは即答する。
「へっ、僕は駒になったつもりはないね」
吐き捨てるようにヨキは反論した。
「望む望まないに限らず誰だって駒ですよ。運命の前では、王でも、神でも」
「運命を持ち出すなんて、随分と大仰な言い方だな。お前たちがただ単に戯れているだけだろ」
ビョウブはうっすらと笑みをこぼした。感情の伝わらない不快な笑みだ。
「確かに我々のゲームはお遊びに過ぎません。わたしが言っているのは、この世界の在り方ですよ」
「在り方?」
「あなたもまた抗えない運命というゲームのもとでここにいるんですよ。この紫に染まった世界に」
ヨキはこの世界で目覚めたことを思い出した。それが運命であることは否定できない。こんな世界に連れてこられ、こんな能力を持っているのだから。
しかしビョウブの言うゲームの駒という表現にはヨキは嫌悪感を覚えた。
ビョウブは物語を読むように淡々と語った。
「この世界はたったひとりの悪意を持った者が、こうして紫一色の世界に染め上げたのです」
「ひとりの者が?」
「そう、突然変異の悪です。そして白い世界は紫に染まっていった。この世界が悪を望んでいたかのように」
「そんなわけあるものか」
ヨキは即座に否定した。
「だから、この世界は元より悪によって支配される運命にあったとわたしは思っていた」
ビョウブはヨキに手を差し出した。
「ところがあなたという真逆の存在が突如現れた。まるで今度は悪意が白く染められるために」
ヨキは理解できない考えを滔々と語るビョウブに辟易した。
「……埒があかないな。何が言いたい?」
ビョウブはヨキに両手を広げてみせた。
「つまり、あなたの力でわたしから悪意を取り除いてください」




