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「ヨキ様……。ヨキ様とおっしゃるのですね!」
ブヒゾウはえらく感心したように頷いた。
ブヒタロウはピンと来ない様子で首を傾げた。
「ふーん、変な名前でげすね」
「お前が言うな!」とヨキは突っ込んだ。
ブヒタロウに拳骨を食らわせた後、ブヒゾウは少年に改めて頭を下げた。
「ヨキ様、折り入ってお話が……」
「ん?」
「その力でオイラ達の村を救ってくれませんか?」
「村?」
「はい、ここから南東へ進んだ所にあるんです。おそらく皆、悪意のオーラに侵されているはずです」
ブヒゾウはオーラを見ることが出来ないが、邪気があることは感じ取れていたようだ。
体がひとまわり大きくなり、邪悪な顔つきをしているのであるから、すぐに見分けられるのだろう。
「ブヒタロウ、どうだ? 村の者は紫のオーラがあったか?」
ブヒタロウは頭を擦りながら即座に頷いた。
「はい、あったでがす。全員紫でござんした」
「全員か……。村に何人いるんだ?」
「えっと……50人ほどです」とブヒゾウは答えた。
「50人もいるのか? 全員を触るのはちょっと無理じゃないか?」
この2人だけであれだけ苦労したことを考えると、50人相手だとさすがに厳しいだろうとヨキは不安を覚えた。
「はい! はい!」
突然ブヒタロウが手を挙げた。
「どうした?」
「あのですね、ブヒノスケを治せば、みんな元に戻ると思うでげす」
「ブヒノスケ?」
名付けた奴、誰だよ……。
ヨキは名前のセンスに呆れた。
ブヒゾウが割り入って説明を加える。
「ブヒノスケは村の長です。祭りの日に力自慢で勝った者が、長となる習わしで」
「ほう、長か。で、どうしてそのブヒノスケとやらを触れば治るんだ?」
ヨキが尋ねるとブヒタロウは得意気に鼻を膨らませた。
「ブヒノスケが初めに紫になったでがす」




