表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
74/161

19


紫のオーラを(まと)った門番は、のしりもしりと2人に近づいた。


「ブヒゾウ! ブヒゾウでしょ!?」


カナの言葉に門番は歩み寄る足を止めた。


しかし……


「なぜ亜人がオレの名を知っている?」


ブヒゾウはそう答えた。


個人差があるが、悪意に侵された者は以前の記憶が途切れることがある。今のブヒゾウの目には単なる亜人にしか見えないようであった。


相対したブヒゾウは普段より体が大きく、悪意を放ち、牙が突き出た恐ろしい顔をしている。

ヨキは初めてブヒゾウと出会った時を思い出した。


確かにこんな姿だった。悪意しかない姿をしていた。

それは名前も知らない獣人で、自分を襲う凶悪な魔物というだけの存在であった。


しかし今は違う。

一緒に旅をし、為人(ひととなり)を知った仲間である。その仲間が悪意に侵された姿で対峙(たいじ)している。

それがとても痛々しく、やるせない思いに駆られた。


「ブヒゾウ、今、治してやるから」


ヨキは歩み寄ってブヒゾウの体に触れようとした。しかしブヒゾウはそれを拒否するように持っていた槍を振りかぶった。


「何をするつもりだ、亜人め」


敵意()き出しのブヒゾウにヨキは悲しさに包まれた。


「ブヒゾウ……」


呆然と立ち尽くすヨキに、ブヒゾウの槍が迫り来る。


振り下ろされる瞬間、その槍を制した。善意の剣で槍を制している。


それはブヒタロウだった。


「ブヒタロウ!」


ヨキはブヒタロウの助けに感謝しながらも、毎度ブヒタロウのタイミングの良さに驚いていた。


まだ呼んでいない、言いつけを守らなかった。

けれど、まるで自分の心を見抜くように、来て欲しい時に現れてくる。


ブヒタロウはブヒゾウと剣を交えて叫んだ。


「ブヒゾウ、目を覚ますべ! オイラのことが分かるべよ!」


ブヒゾウは制された槍に力を込めながらも、目の前のブヒタロウに目を向けた。


「ブヒ……タロウ……」


ブヒゾウはそう(つぶや)いた。


「そうだべ! ブヒタロウだべ! この2人はヨキ様とカナ様だべ! ブヒゾウがこの2人に槍を向けるなんてあり得ないべ!」


ブヒゾウは(うつ)ろな視線を2人に向けた。


「ヨキ……様……カナ……殿……」


ブヒゾウは普段カナのことを『カナ殿』と呼ぶ。つまりブヒタロウの呼び掛けを鸚鵡(おうむ)返ししているわけでなく、己の意思で2人を呼んだのだった。


「そうだべ! ブヒゾウ、目を覚ますべ!」


ブヒゾウはブヒタロウと交えていた槍を地面へ落とし、頭を抱えた。


「ぐおおおお!」


悶絶するブヒゾウにヨキが叫ぶ。


「カナ、今だ! (ひる)んだ隙に!」


「オ、オッケー!」


カナは体勢を整え直して魔法を唱えた。

そして空中からはサントリーオが背後を取り、善意の剣を持って急降下していた。


「ブヒゾウ殿! 今お助けを!」


ブヒタロウも剣を振りかぶった。

善意が三方向からブヒゾウへと迫ってゆく。


「オオオオオオオ!!!」


その時、耳を(つんざ)くような雄叫びが地面を震わせ、大気を(たけ)らせた。


その勢いにヨキもカナも、サントーリオもブヒタロウもふっ飛んだ。


開かれた扉の前で、ノモンとビョウブが(たたず)んでいる。

ノモンの口から紫のオーラが蒸気のように上がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ