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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
73/161

18


叫びそうになるブヒタロウの口をヨキは(ふさ)いだ。


「しっ! 落ち着け!」


モゴモゴと口の中で叫びながらブヒタロウは暴れた。


ノモンとビョウブは城の中へと入っていった。


ヨキはその門番を目を凝らして眺めた。


「あれ、ブヒゾウなのか?」


ブヒタロウは口を杜がれながら(うなず)いた。


ヨキには正直他のブタ族と見分けがつかなかった。悪意に侵され、体がひとまわり大きくなり、紫のオーラを(まと)っていると、判別が難しい。

カナや他の者も同じだった。ブヒタロウにだけは一目でそれが見分けられたようだ。


確かに服装はブヒゾウの着ていたものと同じであることは分かる。靴は履いていなかった。しかしそれくらいしか特徴がない。


大きな盾を持ち、槍を携えた姿がブヒゾウの印象とかけ離れているため、より判別しにくくなっている。


いつもはとぼけた言動ばかりのブヒタロウだったが、ブヒゾウを見抜く力に関しては不思議と信用できた。ブヒタロウが見間違えるわけがない、そう思える。


ヨキはブヒタロウの口から手を放した。


「よし、あの門番の悪意を優先して(はら)おう。もし人違いだとしてもデメリットはない。カナ、射程距離はどうだ?」


カナは目算して首を振った。


「うーん、もうちょっと近づかないと届かないね」


ヨキ達はもう少し距離を(せば)めるため、溝を屈みながら移動した。だが溝はそもそも城の周りを囲む堀であり、城へと近づくには溝から上がらねばならない。


「バレるのを覚悟で近づくしかないな」


ヨキは溝から出ることを決意し、横にいるブヒタロウに(さと)した。


「僕たちがまず近付いてみる。ブヒゾウを助けたいと思うなら合図があるまでここで待っててくれ、いいな?」


ブヒタロウは耳を忙しなく動かし、()く気持ちを抑えながらも素直に(うなず)いた。



カナとヨキは息を合わせ、意を決して溝から駆け上がった。

全速力で門番に近づく。


「オッケー、射程圏内に入った!」


カナの合図と共に2人は立ち止まり、門番がこちらに気付く前に魔法を放った。


「ヒール!」


ヨキの力を含んだ魔法が門番へと向かう。

左の門番はそれによって体を震わせ、紫のオーラを体から放出した。


しかし右の門番、ブヒゾウと(おぼ)しき者は大きな鉄製の盾を頭上に掲げ、魔法を防いだ。


「なに!?」


右の門番はヨキとカナに目を向け、ほくそ笑んだ。


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