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一行は窪地を進み、闇に揺れている炎を見た。
土で造られた城郭がほのかな灯りの中で朧気に浮き上がっている。
石垣はなく、地面にそのまま乗っけたような城の周りには自然の窪地を要害とした堀が巡らされている。
その城に人影が動いていた。ネコ族に比べ体が大きく、シルエットだけでブタ族であることが見て取れる。
ヨキ達は溝に身を潜めて様子をうかがった。
「かなりの数がいるな」
「おそらく20人くらいのブタ族がいるミャ」
「他国への侵略のために集められたって言ってたな」
「そういう話ミャ」
ブタ族は国を持たない。元々あったようだが、国を放棄する道を選んだという。
そのためどの国にでもブタ族は多く存在し、主に力仕事で重宝されてきた。
こうして悪意に侵された世界で、ブタ族が武力として使われることは想像に難くない。
「ちょ、ちょっとあれ!」
ネコ族が指を指した。
その先にブタ族と見紛うほど体の大きなネコ族がいた。その横には亜人の姿もある。
「あれってノモンとビョウブじゃニャいか?」
闇にたたずむそのネコ族は他の者とは明らかに違う巨体をし、威厳と風格が漂っていた。
「そのノモンって?」とヨキは尋ねた。
「この国を統べる大将ニャ。なんでこんな所にいるニャ」
ノモンは隆々とした筋肉と鋭い牙、そして体には縞模様がある。
「いや、ただのトラじゃないか!」
ヨキは突っ込んだ。
「そりゃあ、トラもネコ族ニャ」
ネコ族はすばしっこく華奢なイメージだったが、屈強なタイプもいるとなるとなかなか厄介な種族だ。
「ビョウブというのは?」
「隣にいる亜人ニャ」
見た目は男、細身でノモンの横にいることでより弱々しく映る。丸いメガネを掛けていて、知的そうだが鼻につく強かそうな目をしていた。
「あれがこの国の親玉か?」
ネコ族は頷いた。
「そうニャ。確かセッショウと名乗っていたニャ」
「摂政……。突然国にやって来て摂政気取りか」
ヨキは吐き捨てるように呟いた。
つくづく亜人は厚かましい、とヨキは腹を立てた。
ノモンとビョウブは松明をかざしながら、城へと歩いていた。
城の門が開かれ、盾と槍を持ったブタ族が2人を招いた。
その門番のブタ族の顔が松明に照らされた時、ブヒタロウは思わず「あっ!」と声を上げた。
それは悪意に侵されたブヒゾウだった。




