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ヨキに手を添えられ、即座にカナがネコ族に向けて魔法を唱えた。しかしそれをネコ族は瞬時に躱した。
「避けられた?」
ヨキも反応の速さに驚く。
「なんて素早い!」
ケージも魔法を放つが、ネコ族はそれも回避する。
「えーっ、速すぎて当たらないんですけどぉ」
ケージは挙げた手をだるそうにゆっくりと下ろした。
「いや、君の場合はイワンニコフ背負ってるからじゃないのか!」
イワンニコフはケージの肩で既にいびきらしき声を立てて寝ている。
「だって置いてくわけにいかないでしょ」
「でも寝てばっかじゃないか!」
「英気を養ってるの!」
いつその英気を使う時があるんだ、とヨキは思いつつ、それは口にしなかった。
「ミャーサ、頼む。善意の剣であいつに触れてくれ」
「分かったミャ」
ミャーサは口に善意の剣を咥え、四本足で追い掛けた。感染したネコ族はくるくると円を描いて逃げまどう。
「待つミャ!」
しかし同じ速さで互いに回っているので追いつかない。
「ケージ、何か魔法はないのか? スローとかストップとか。攻撃魔法じゃないなら使えないか?」
「えー、あるよぉ」
「あるんなら使って!」
「りょ」
ケージはネコ族にスローをかけた。
ネコ族の動きが格段に遅くなった。
「おお、すごい!」
けれどミャーサも遅くなったため、結局追いつけなかった。
「ミャーサにまでかけてどうするんだよ!」
「仕方ないでしょぉ、魔法当たらないんだから、範囲広げて打ったのぉ」
その時、一閃の光が闇を切り裂いた。
ミャーサの咥えていた善意の剣を奪い、それを感染者に素早く打ち込んだ影。
それはブヒタロウであった。
凄腕の侍のように相手を斬り込んで、感染者はパタリと倒れた。
相手がスローだとはいえ、ブヒタロウがそこまで速く動くとは思わなかったヨキ達は唖然とした。
ブヒタロウはキリリとした顔立ちで振り返った。
「さぁ、急ぎましょう」
「あ、ああ……」
口調まで変わり、やたらと勇ましく頼もしい。
ブヒタロウが覚醒したのか?
ブヒタロウは窪へ颯爽と降り立った。
が、着地に失敗し、転んで地面に顔から突っ込んだ。
泥だらけの顔に鼻血が滴った。
「い、痛いでげすぅ」
覚醒は、していなかったようだ。




