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一行は荷車を置いて、ブヒゾウが連れ去られた方角へ急いでいった。
普段は遅れがちなブヒタロウも、この時ばかりは弱音を吐かずに懸命に駆けていく。
ヨキはブヒタロウを試すような発言をしたことに若干胸を痛めていた。
けれどケンカ別れしたようなまま助けに行っても、ブヒタロウは無駄な強がりを引きずってしまうかもしれない。
はっきりとした決意を芽生えさせるためにも、棘の含んだ言い方をせねばならなかった。
互いが大切な存在であることを思い出してほしい。
腐れ縁とはいつまでも続く強固な絆である。
腐れ縁は腐らない。
攫われた状況を目撃したサントーリオと、ミャーサを筆頭としたネコ族が先導して、ブヒゾウが連れ去られた場所に目星をつける。
「この方角だと西にある土の古城かニャ」
「あそこに連れていくのはなんでミャ?」
「あそこはブタ族の根城ニャ」
「ブタ族を集めているのかミャ」
「そうニャ、おそらくブタ族の部隊に入れるつもりニャ」
「どうしてブタ族を集めている?」
ヨキはネコ族に加わって尋ねた。
「知らないミャ。きっと他の国を侵略するためじゃないかミャ」
トリ族の国では内乱が起こっていたが、確かに国によっては他国へ矛先を向けることは大いに考えられる。
それにブヒゾウは参加させられたのだろうか。
心配が募る。
しかし有力な情報は得られた。
「よし、ミャーサ。隠密でその古城を目指そう。案内してくれ」
「了解ミャ」
潜入は闇に紛れるのが鉄則だが、目の利くネコ族が相手では、夜間は分が悪い。
他の種族が足を引っ張ることになる。
しかし既に夕暮れ時に差し掛かっていた。
夜を避けて朝まで待つか、強行突破するか、判断が迫られる。
常にそわそわしているブヒタロウ、早くブヒゾウを助けたいヨキ。朝まで待つ選択をするつもりはなかった。
こちらも夜に強いネコ族がいる。向こうにも夜に弱いブタ族がいる。
ネコ族を先頭にぬき足さし足、暗がりを進み、このまま襲撃することに決めた。
「ここを通れば手薄ミャ」
窪地になった草むらが続いている。陽が落ちて冷たい風がその溝に集まっている。
寒さの苦手なネコ族なら夜半はここを通らないと、ミャーサ含めネコ達はこの道を薦めた。
ネコ族一行は薄目で歩いていた。集団で目を細めていると今にも寝てしまいそうな頼りない顔に見える。
「……なにしてんの?」とヨキはその細目集団に尋ねた。
ミャーサは目を細めたまま答えた。
「目が光っちゃうミャ」
なるほど、こちらが相手を発見しやすいと同様に、向こうも見つけやすいということか。
「みなさんどこですか? 見えないんですけど!」
サントーリオは歩きながらキョロキョロしている。
「しっ! 騒ぐんじゃない、サントーリオ」
「その声はヨキ様。私、鳥目に加えて、元々近眼で、更に乱視でして……」
「だから静かに!」
「モゴモゴ……」
ヨキはサントーリオの嘴を塞いだ。
一行は慎重にこそこそと進んでゆく。
ここを進めば古城の堀まで一直線だ。
「誰ニャ!」
窪地の上から突然声がした。そこには紫のオーラを纏ったネコ族だった。
「たまたま通ってみたら、不審者発見ニャ」
警戒を充分していたつもりでもイレギュラーは対応できない。
ヨキは深くため息をついた。
「たまたま通るなよ……。ネコ族は本当に気まぐれで困る……」




