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「お前、オーラが見えるのか?」
驚くブヒゾウにブヒタロウは頷いてみせた。
「見えるべ。そりゃ、あんな不気味なもん、見逃すわけがないべ」
訛りヒドイな……。
しかし、ブヒタロウにも見えるというのはどういうことか?
ブヒタロウも僕と同じ能力を持っているということか?
いや、そうだとしたなら、悪意のオーラを祓えるはずだから、邪気に体を乗っ取られ、あんな禍々しい姿になるはずがないか。
おそらく見える者と見えない者がいるということだろう。
少年はひとりそう考えを巡らせていた。
「本当にありがとうございます」
ブヒゾウは再び頭を下げた。ブヒタロウはブヒゾウを真似て慌てて頭を下げる。
「いや、そんな。いいんだよ。善きかな、善きかな」
あまりに感謝され、少年も恐縮する。
「えっと……」
ブヒゾウは少し言葉を窮した。
「ん?」
「えっと……、あなた様は何とお呼びすれば……」
「名前?」
そう尋ねられて、少年は思わず言葉を呑んだ。
…………あれ、なんて名前だっけ?
思い出せない……。
「えっと……」
自分が高校生だったことや鏡に映った自らの容姿はうっすらと覚えているが、どこに住んでて、どんな名前だったか、少年は思い出せなかった。
ブヒゾウとブヒタロウは少年の言葉を待っている。少年は急かされているようで焦った。
思い出せないなら、いっそのこと勝手に名乗ろうか。
とはいっても、
さて、どうしようか……。
少年は考えあぐねた。
悪意を祓う力があるのなら、この力は善意と呼べるものだろうか。
善意は英語だと……グッドウィル(goodwii)かな。
うーむ、しっくりこない。
ならばいっそ、大風呂敷を広げて「善の神」を名乗ろうか。完全なる善意を司る存在「イツァムナー」とか?
言いづらい……。
「僕の名前は……」
『善きかな、善きかな』
ええい、面倒くさい!
「僕の名前は……ヨキだ」




