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皆の傷はヒールで治し、荷車は修理してどうにか動くようになった。
しかし車輪は歪み、ガタンガタンと回る度に軋む音がする。更には梶を取られて勝手に左に進んでしまう。
「まだ何もしてないんだけど」
ヨキはため息をついた。
まだ感染者にすら出会っていないのに、既に戦禍をくぐり抜けたような傷つきっぷりだ。
「大丈夫、大丈夫」
カナは前向きにヨキを励ましたが、ヨキは不安が募っていた。
山をようやく下り終え、一行は平野で休憩をとった。
その際、ブヒゾウはヨキに静かに歩み寄った。
「ヨキ様」
「どうした? 悪いな、疲れる思いばかりさせて」
「いえ」
「で、なんだ?」
ブヒゾウは決意を込めた眼差しでヨキに迫った。
「この荷車を牽きながら襲われたら、先ほどのように太刀打ちできません。
ですからオイラに斥候の任をお与えください」
「斥候? つまり先んじて偵察するってことか?」
「はい」
「しかしそれはサントーリオが空からやってくれているぞ」
サントーリオは聞きつけて間に入った。
「そうです。確かに頼りないと思われているでしょうが、わたくしも目を光らせておりますゆえ、と言っても本当に目がピカーンと光ってるわけではございませんが……」
2人はサントーリオの饒舌を流した。
「もちろんサントーリオ殿は俯瞰で様子を窺っているのは分かってます。
しかし先程のように木の茂みに敵が潜んでいれば見逃すこともありましょう。
そういった危険を前もって察知するためにオイラがまず先払いをしたいのです」
ヨキは鋭い視線を送るブヒゾウの決意を感じた。
「ブヒゾウ、腕が鳴るのは分かるが、あまり戦い急ぐのは危険だぞ」
「そういうことではないです」
ヨキはブヒゾウが思い詰めていることに気づいていた。ブヒゾウなりに役に立ちたいと奮い立っているのが分かる。
善意の剣を作ろうと画策したのも、ブヒゾウに活躍の場を設けさせるためでもあった。
ヨキはしばし考えてから承諾した。
「…………分かった。けれど感染者に出くわしたら、ひとりでなんとかしようとするなよ?」
ブヒゾウは首だけを傾けさせて頭を下げた。
「分かりました」
「わたしも付いていくよ」
カナがそう名乗り出た。
しかしブヒゾウは首を振った。
「いいえ、カナ殿はヨキ様のおそばにいてください」
ヨキは念を押すようにブヒゾウに警戒を促した。
「サントーリオにも上空から見張ってもらう。それでいいな?」
ブヒゾウは首肯した。
「はい」
ブヒゾウは身支度を整え、善意の剣を携えてヨキ達の先を足早く進んでいった。
「どうしたんだべか、ブヒゾウのやつ」
荷車の梶を任されたブヒタロウが不思議そうにブヒゾウの小さくなる背中を見つめた。
ヨキはブヒゾウの心境を慮り、その原因がブヒタロウへの劣等感と気づいていながらも、ブヒタロウには明言しないでおいた。
「……色々あるんだよ、あいつはあいつなりに」




