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確かに警戒は必要だ。トンディーク国ではカナの魔法が唯一の頼みだった。
ただ今は魔法使いが3……いや、2.5人いる。
そう考えると、以前よりかは戦略性が広がっている気がするし、仲間は多いほうが心強い。
山には感染したウサギやシカやイノシシがいたが、魔法とヨキの力で難なくやり過ごせた。
ヨキに頼って悪意に立ち向かっていた頃とはまるで違う余裕が一行にはあった。
腰の痛めたケージはイワンニコフと共に荷車に寝ていた。
「着くまで休ませてぇ」
「……なんのために来たんだよ」
「本番はちゃんと働くからぁ」
そう言って、横になって寝込んでしまった。
「……重病患者を運ぶみたいになってるじゃないか」
たまらないのは荷車を牽いている2人である。
「重いでけすよぉ」
「すまん、ブヒゾウ、ブヒタロウ。あとで交代してやるから」
山間の下り坂は羊腸の如く緩やかに曲がりくねっていたが、突如傾斜がきつくなった。
坂道を下って荷車の車輪が回転を速める。
「わー! 止めてくだせぇ!」
急勾配に差し掛かり、重さを増した荷車がものすごい加速を帯びて下り出した。
荷車に押されるように駆けてゆくブヒゾウとブヒタロウ。必死に押さえようとしたが、暴走する荷車は勢いを止めない。
荷台に乗るケージは緊急事態を察知して眠りから覚めた。
「ちょ、なんか速くない!?」
ケージは脇にしがみつきながら叫んだ。
「ちょ、ちょっと、止めてぇー!」
「イワンニコフを荷台に乗せるからだ!」とヨキが荷車の脇を掴みながら怒る。
「そんなこと言ったら可哀想でしょ!」
「とにかく降りてくれ! 飛べるんだろ?」
「こんな状況じゃムリぃ!」
ブヒタロウが走りながら右手に炎を纏った。
「おい、なにする気だ! 荷車を燃やしちゃダメだろ!」
「だ、だ、だ、だって、止まんねぇでげすか! ヨ、ヨキ様こそ、荷車から悪意を取ってくだせぇ!」
「荷車に悪意ないから!」
「わーっ!」
荷車は藪に突っ込み、皆は傷だらけ、荷車は大破した。




