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「やっほー」
空から声がしたかと見上げるとケージが飛んできていた。ふわふわとしながら速度もなく、上下に揺れながらヨキ達の元へと降り立った。
「やっと追いついたぁ」
「大丈夫なのか?」
ヨキはケージの身を案じた。
「平気、平気ぃ。ちょっと足が痺れてるけど」
「ダメじゃん!」
「大丈夫。気にしないで」
「……なんでイワンニコフまで連れて来てるんだよ」
「ヒドい! イワンニコフちゃんは一心同体なのぉ!」
「ゴロゴロ」
イワンニコフはケージに抱きしめられ、喉を鳴らした。
どう見たってお荷物、と言いたかったが、ヨキはそれは心に留めることにした。
左右を山に囲まれた小径を進んでいった。木漏れ日の暖かい匂いが進む度に濃くなってゆく。
「もうすぐ坂も終わり、見えてきますぞ」
飛んでいたサントーリオが降りてきた。
緩やかな勾配を上り、山間の道は下るだけとなった。さほど標高はないが、木々の隙間から前方を一望できるほどの高さまで登ってきた。
「おお、海だ!」
見下ろした先に地平線まで続く海原が広がっていた。波は穏やかで、荒れている様子はなく、光を浴びて眩しいほどに輝いている。
「あの海岸を探せば骨が見つかるんだな」
その時に急に木の茂みから飛び掛かって来るものがあった。
「危ない!」
ブヒゾウが剣を抜く前にヨキに襲い掛かった。ブヒゾウは己の反応の遅さを痛感した。
それよりもヨキの安否だ。
しかし、
「なんでミャーサを置いていったミャ!」
それはネコ族のミャーサだった。
ミャーサはヨキに抱きついて頬ずりした。
「だって探したけど見つからなかったから」
「ちょっと散歩してただけミャ」
「ご、ごめん」
「分かってくれたらいいミャ。今度から気をつけるミャ」
ミャーサはご機嫌になってヨキに寄り添った。
「……急に甘えてくるところがホント、ネコだなぁ」
ただ、もうヨキのことをほったらかしで、今度はカナにべったりしている。
とことん気まぐれだ。
「ミャーサ、あの海沿いでいいんだな?」
ヨキが尋ねると、ミャーサはカナにしがみつきながら振り返った。
「そうミャ。たくさん落ちてるミャ。ただ……」
「なんだ?」
「ネコ族はとてもすばしっこいミャ。さっきみたいな防御じゃすぐ全滅するミャ」
ブヒゾウは自分の不甲斐なさを露見されたように顔を下げた。
「たとえヨキでも首を噛まれたらひとたまりもないミャ」
「…………」
黙り込む一行を励まそうとヨキは明るく努めた。
「仕方ないさ。みんな戦闘や剣の振るい方すら慣れていないんだ」
ヨキは皆を奮い立たせた。
「この剣は攻撃用じゃない。相手の体に触れさえすればこっちのものだ。直接触れるより間合いが遠くて済む。
とにかく自分の身を守ることを優先してくれ」
一同は今一度気を引き締めて、ヨキの言葉に頷いた。
ただブヒゾウは悔しさに苛まれて何も答えることが出来なかった。
「ヨキ様、ヨキ様! 敵に襲われた時にスモーク出したほうがいいでげすか?」
「なんだブヒタロウ、煙を出せるのか?」
「はいな、たまたま出来たでげす。ファイヤを練習してたら煙だけ出たです」
「単なる失敗じゃないか!」
「でもモクモク出ますですよ」
ヨキは言われて考え直した。
「なるほど、目くらましか。確かにこちらは闇雲に剣を振り回しても構わないわけだし、良いかもしれないな。実際に使ったことあるのか?」
「ありますです。チーズがすごく香ばしくなったでげす」
「燻製用じゃないか!」




