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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
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10


「やっほー」


空から声がしたかと見上げるとケージが飛んできていた。ふわふわとしながら速度もなく、上下に揺れながらヨキ達の元へと降り立った。


「やっと追いついたぁ」


「大丈夫なのか?」

ヨキはケージの身を案じた。


「平気、平気ぃ。ちょっと足が(しび)れてるけど」


「ダメじゃん!」


「大丈夫。気にしないで」


「……なんでイワンニコフまで連れて来てるんだよ」


「ヒドい! イワンニコフちゃんは一心同体なのぉ!」


「ゴロゴロ」


イワンニコフはケージに抱きしめられ、喉を鳴らした。


どう見たってお荷物、と言いたかったが、ヨキはそれは心に留めることにした。



左右を山に囲まれた小径(こみち)を進んでいった。木漏れ日の暖かい匂いが進む度に濃くなってゆく。


「もうすぐ坂も終わり、見えてきますぞ」


飛んでいたサントーリオが降りてきた。


緩やかな勾配を上り、山間(やまあい)の道は下るだけとなった。さほど標高はないが、木々の隙間から前方を一望できるほどの高さまで登ってきた。


「おお、海だ!」


見下ろした先に地平線まで続く海原が広がっていた。波は穏やかで、荒れている様子はなく、光を浴びて(まぶ)しいほどに輝いている。


「あの海岸を探せば骨が見つかるんだな」


その時に急に木の茂みから飛び掛かって来るものがあった。


「危ない!」


ブヒゾウが剣を抜く前にヨキに襲い掛かった。ブヒゾウは己の反応の遅さを痛感した。


それよりもヨキの安否だ。


しかし、


「なんでミャーサを置いていったミャ!」


それはネコ族のミャーサだった。


ミャーサはヨキに抱きついて頬ずりした。


「だって探したけど見つからなかったから」


「ちょっと散歩してただけミャ」


「ご、ごめん」


「分かってくれたらいいミャ。今度から気をつけるミャ」


ミャーサはご機嫌になってヨキに寄り添った。


「……急に甘えてくるところがホント、ネコだなぁ」


ただ、もうヨキのことをほったらかしで、今度はカナにべったりしている。

とことん気まぐれだ。


「ミャーサ、あの海沿いでいいんだな?」


ヨキが尋ねると、ミャーサはカナにしがみつきながら振り返った。


「そうミャ。たくさん落ちてるミャ。ただ……」


「なんだ?」


「ネコ族はとてもすばしっこいミャ。さっきみたいな防御じゃすぐ全滅するミャ」


ブヒゾウは自分の不甲斐なさを露見されたように顔を下げた。


「たとえヨキでも首を噛まれたらひとたまりもないミャ」


「…………」


黙り込む一行を励まそうとヨキは明るく努めた。


「仕方ないさ。みんな戦闘や剣の振るい方すら慣れていないんだ」


ヨキは皆を奮い立たせた。


「この剣は攻撃用じゃない。相手の体に触れさえすればこっちのものだ。直接触れるより間合いが遠くて済む。

とにかく自分の身を守ることを優先してくれ」


一同は今一度気を引き締めて、ヨキの言葉に(うなず)いた。

ただブヒゾウは悔しさに(さいな)まれて何も答えることが出来なかった。


「ヨキ様、ヨキ様! 敵に襲われた時にスモーク出したほうがいいでげすか?」


「なんだブヒタロウ、煙を出せるのか?」


「はいな、たまたま出来たでげす。ファイヤを練習してたら煙だけ出たです」


「単なる失敗じゃないか!」


「でもモクモク出ますですよ」


ヨキは言われて考え直した。


「なるほど、目くらましか。確かにこちらは闇雲に剣を振り回しても構わないわけだし、良いかもしれないな。実際に使ったことあるのか?」


「ありますです。チーズがすごく香ばしくなったでげす」


燻製(くんせい)用じゃないか!」


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