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かくしてヨキの善意の力を含んだ魔法を閉じ込めておく武器、シカの角製の剣の製作が進められた。
鍛冶屋の力を借り、試行錯誤を繰り返す。
削っては失敗し、掘っては砕ける。
ブタ族の鍛冶屋は力が強いが、繊細な加工は苦手なようで、力の入れ具合に苦労していた。
そしてまた砕けた。
「うおおお、また折れたぁ!」
そもそもシカの角はブーメランや小刀に使われる素材のようで、剣を作るのには向いていなかった。
ヨキも削る加工を手伝い、少しずつ剣は理想の形になっていった。
幾度かの失敗ののち、遂に試作品が完成した。
けれど実際に使えるものは3本。
角の強度には個体差があり、穴を空けると脆さが増し、少しの衝撃で砕けてしまうものもあった。
その中で、漸くうまくいった、なけなしの3本であった。
「これが『善意の剣』ですか」
ブヒゾウはその試作品の1本を手にして、振ってみた。
柄から刃に当たる部分まで一本の角を削って作られている。
「随分と軽いですね。斬れ味は?」
ブヒゾウは試しに足元の雑草を切ってみた。雑草は剣の勢いで撓うだけで、切れることはおろか、傷ついてもいない。
「…………」
「まぁ、『なまくら』だけどね」
とヨキは笑った。
「これで戦えるんですか?」
そう訊くブヒゾウにヨキは諭すように言った。
「ブヒゾウ、これは相手を傷つけるためのものじゃない。治すためのものなんだよ」
ブヒゾウは心構えを正され、目を見開いた。
「この剣を持つ以上、そのことは肝に銘じておいてくれたまえ」
ヨキは刀を伝授する師範のように偉ぶってみせると、ブヒゾウは畏まって敬礼した。
「分かりました!」
ブヒゾウの表情に決意と奮起が湧き上がっていた。
「それで次の目的地はどこでしょうか?」
ブヒゾウが尋ねると、ヨキは親指を立てた。
「隣国、ネコ族の国、ミャーザ・ワッケンジー国だ」




