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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第3章 ミャーザ・ワッケンジー国編
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ヨキは鍛冶屋に戻ってケージに見せた。


「これはシカの角で作ったブヒタロウのナイフだ。これで魔法石の代用が出来ないかな?」


「これで?」


ヨキは確信を持って(うなず)いてみせた。


「初めてブヒタロウに会った時、あいつは悪意に(おか)されていたんだが、このナイフを持っていた。不思議なことにこれにも悪意のオーラが(まと)わりついていたんだ」


ヨキはナイフを(くま)なく眺めた。


「おかしいと思っていたんだ。ナイフは無機質なのになぜ悪意のオーラを纏っているのか。ブヒゾウのナイフは悪意のオーラはなかった。あいつのは鉄製だからだ」


ケージの肩でイワンニコフが眠っている。鼻ちょうちんが膨らんだり縮んだりしている。


「シカの角も無機物だ。だけど鉄と違うのは、角は生体鉱物ということだ」


「生体鉱物ぅ?」

ケージは首を傾げた。


「そう。生物によって作られる鉱物のことだよ。角や歯や骨、貝殻などがそれにあたる。


森でウサギやヘビに出会ったが、それらの歯にもオーラはあった。つまり生体鉱物はオーラが纏えるんじゃないかな」


「へぇ~、そうなんだぁ」とケージは興味なさげだったが、少しは感心したようだ。


どちらかと言えば、(そば)で聞いていた鍛冶屋のほうが興味津々だ。ブタ族の鍛冶屋は太い腕を組んで、ヨキの話に食い入っている。


「ふんふん、それで?」


ヨキは鍛冶屋に体を向けた。


「こういった武器を身に付けることで、オーラは歯や骨と同様に生物の一部として認識し、その中を流れてゆくんじゃないかな」


鍛冶屋は興奮して武者震いを起こした。

「ってなると、その生体鉱物とやらで武器を作れば……」


ヨキは希望に満ちた目で(うなず)いた。


「ああ、魔法石のように、善意を含んだ魔法を閉じ込めておくことが出来るかも」



鍛冶屋は職人魂に火がついて、棚を探り出した。

「シカの角ならあるぜ」


鍛冶屋は素材として保管していたシカの角を取り出し、ヨキへ差し出した。


「ケージ、これに魔法をかけてくれ」


「美白魔法でいいのぉ?」とケージは気だるそうに言った。


「なんでもいいよ……」


ケージはシカの角に魔法をかけた。


「わぁ、ツヤツヤが増したぁ」


美白魔法を浴びて、シカの角は輝きを増した。


けれど、その輝きはすぐに解けて、普通の角へと戻った。

ヨキは首を(かし)げた。


「うーん、魔法が維持できていないのか?」


ヨキはシカの角を握り、振ってみた。

ヨキは体からシカの角へと善意の力が流れてゆくのを感じた。


「そっか……。僕がこれを持てば、常に善意のオーラを流し続けることは出来るけど、他の人が持つ武器としては効果が持続できないのか……」


ケージは(かが)んでヨキの持つ角を眺めた。


「魔法石は中に魔法を閉じ込めるものだから、効果を維持できるんだよぉ」


ヨキは角を眺めた。


「中に……。この角を空洞化してその中に閉じ込めることは出来ないかな」


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