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ヨキは鍛冶屋に戻ってケージに見せた。
「これはシカの角で作ったブヒタロウのナイフだ。これで魔法石の代用が出来ないかな?」
「これで?」
ヨキは確信を持って頷いてみせた。
「初めてブヒタロウに会った時、あいつは悪意に侵されていたんだが、このナイフを持っていた。不思議なことにこれにも悪意のオーラが纏わりついていたんだ」
ヨキはナイフを隈なく眺めた。
「おかしいと思っていたんだ。ナイフは無機質なのになぜ悪意のオーラを纏っているのか。ブヒゾウのナイフは悪意のオーラはなかった。あいつのは鉄製だからだ」
ケージの肩でイワンニコフが眠っている。鼻ちょうちんが膨らんだり縮んだりしている。
「シカの角も無機物だ。だけど鉄と違うのは、角は生体鉱物ということだ」
「生体鉱物ぅ?」
ケージは首を傾げた。
「そう。生物によって作られる鉱物のことだよ。角や歯や骨、貝殻などがそれにあたる。
森でウサギやヘビに出会ったが、それらの歯にもオーラはあった。つまり生体鉱物はオーラが纏えるんじゃないかな」
「へぇ~、そうなんだぁ」とケージは興味なさげだったが、少しは感心したようだ。
どちらかと言えば、傍で聞いていた鍛冶屋のほうが興味津々だ。ブタ族の鍛冶屋は太い腕を組んで、ヨキの話に食い入っている。
「ふんふん、それで?」
ヨキは鍛冶屋に体を向けた。
「こういった武器を身に付けることで、オーラは歯や骨と同様に生物の一部として認識し、その中を流れてゆくんじゃないかな」
鍛冶屋は興奮して武者震いを起こした。
「ってなると、その生体鉱物とやらで武器を作れば……」
ヨキは希望に満ちた目で頷いた。
「ああ、魔法石のように、善意を含んだ魔法を閉じ込めておくことが出来るかも」
鍛冶屋は職人魂に火がついて、棚を探り出した。
「シカの角ならあるぜ」
鍛冶屋は素材として保管していたシカの角を取り出し、ヨキへ差し出した。
「ケージ、これに魔法をかけてくれ」
「美白魔法でいいのぉ?」とケージは気だるそうに言った。
「なんでもいいよ……」
ケージはシカの角に魔法をかけた。
「わぁ、ツヤツヤが増したぁ」
美白魔法を浴びて、シカの角は輝きを増した。
けれど、その輝きはすぐに解けて、普通の角へと戻った。
ヨキは首を傾げた。
「うーん、魔法が維持できていないのか?」
ヨキはシカの角を握り、振ってみた。
ヨキは体からシカの角へと善意の力が流れてゆくのを感じた。
「そっか……。僕がこれを持てば、常に善意のオーラを流し続けることは出来るけど、他の人が持つ武器としては効果が持続できないのか……」
ケージは屈んでヨキの持つ角を眺めた。
「魔法石は中に魔法を閉じ込めるものだから、効果を維持できるんだよぉ」
ヨキは角を眺めた。
「中に……。この角を空洞化してその中に閉じ込めることは出来ないかな」




