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ブヒタロウは魔法の鍛練に勤しんだおかげで、魔法をコントロール出来るようになっていた。
「ブヒタロウさん、お願い」
都の者に言われ、ブヒタロウは得意気に手をかざした。
「ファイア!」
手から炎が飛び出し、薪が燃え上がる。竈に火がついた。
「ありがとう。これで食事が作れるよ。お礼に食べていってよ」
「ふっ、どういたしましてでがす。いただきますです」
ちょっと火をつけることくらいしか出来ないけれど。
修復作業が進められている電波塔の丘で、ブヒゾウは腰を下ろし風に吹かれていた。ブヒゾウもトンディーク国の復興を手伝い、力作業に日々勤しんでいる。
「お疲れさま、はい、オレンジジュース。もらってきたの」
「カナ殿。ありがとうございます」
カナは隣に座った。ブヒゾウはもらったジュースで喉を潤した。
「だいぶ直ってきたね」
ブヒゾウは忙しなく働くトリ族たちを眺めた。
「みんな早く直そうと息巻いてます」
「ブヒゾウは力持ちだからどこでも引っ張りだこだね」
ブヒゾウは木製のコップで揺れるオレンジジュースの水面を眺めた。
「ブタ族は力仕事くらいしか出来ないですから」
ブヒゾウは自嘲するように呟いた。
「そんなことないよ。他にもたくさん活躍してるよ」
ブヒゾウはカナにそう言われても表情に陰を落としていた。
「…………そうでしょうか」
語気の弱いブヒゾウがカナは気に掛かる。
「どうしたの、ブヒゾウ」
ブヒゾウは同じ一点を見つめたままだ。
「……オイラは何も役に立てていません」
「なに、急に」
「トリ族と対した森の時も、この丘の上でも、ヨキ様やカナ殿のお力になりたいと思っているのに、何も出来ない。
悪意ある者に触れることが出来ないから逃げてばかりで。オイラは足手まといでしかない」
「そんなことないよ。トリ族を介抱してくれたじゃない」
「介抱は誰でも出来ます!」
思わずブヒゾウは声を荒げた。
「ブヒゾウ……」
カナが眉を下げたので、ブヒゾウは後悔と共に感情を落ち着かせた。
「すみません……。カナ殿にこんなこと……」
ブヒゾウは思い詰めてため息をついた。
「ブヒタロウは魔法が使えるようになって、これから役に立っていくでしょう。ヨキ様もブヒタロウに期待していました。でもオイラは……」
「縁の下の力持ちも大事だよ」
ブヒゾウはカナの励ましに納得していない様子だった。
「オイラは自分の力でカナ殿を守りたい」
ブヒゾウの強い想いがカナに伝わった。けれどそれを素直に喜べない凝りをカナは抱えていた。
「どうして?」
「どうしてって……」
「だってわたしはブヒゾウの村にヒドいことをしたんだよ?」
ブヒゾウはそれに対して首を振った。
「それはカナ殿が悪意に侵されていただけです」
「そうだとしても……許されることではないよ」
「許すも許さないも、あなたを恨む者などいません」
「ブヒゾウ……」
「あなたはブヒノスケに悪意を感染させたかもしれません。けど、村の者を傷つけたり、いたぶったりしなかった。
それはきっとカナ殿の本来の優しさですよ。オイラはそんなカナ殿の優しさを、ただ守りたいんですよ」
カナは温かいブヒゾウの言葉が素直に嬉しかった。
「ありがとう」
「あ、いや……」
カナに笑顔を投げ掛けられ、ブヒゾウは額を指で掻いた。
「わたしもね、もっとみんなの力になりたい。これからは正直、わたしの魔法だけじゃ無理だと思うし、それじゃ体が持たない。だからヨキは次善策をケージと話に行くって言ってたよ」




