序
トンディーク国は悪意が取り除かれた。全土を隈なく捜索し、紫色の脅威が排除された。
少しずつ畑を均すように土地が浄化され、トリ族や移民の多種族も、感染前の生活に戻りつつあった。
「ヨキぃ! おはよう!」
赤い法衣と灰色のスカートを履いた亜人の魔法使いが満面の笑顔でヨキを迎えた。
「やぁ、ケージ。元気そうだね」
「おかげさまで健康そのものぉ。肌もツヤツヤでしょ?」
「ホントに美白魔法ってあったんだ……」
「魔法はやっぱり美容に使うのが一番。今からアンチエイジングしとかないとね」
魔女ケージは悪意を取り除いたことで、随分と意識の高い少女と化した。実際は元々こんな性格だったのだろうが、ギャップが激しくて、始めは周りも戸惑っていた。
この国の最高指導者に君臨していたケージだったが、今はまるで治国に興味がなく、都の市場で買い物することのほうが興味あるようだ。
ケージの足元には、岩の生物が寄り添っていた。ケージの膝下くらいの身長で、腕が長く、足が短い。
「ゴロゴロ」
「あら、イワンニコフちゃん、お散歩飽きた?」
「ゴロゴロ」
イワンニコフはケージの肩に飛び乗って、催促をしているようだ。
「甘えん坊さんだねぇ!」
そう言いながらケージは嬉しそうだった。
悪意の取れたゴーレムは、ケージのお供として付き添っている。
「なんか最近、肩が凝るんだよねぇ」
「そりゃ、岩を肩に乗せてるからね……」




