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「ま、まぁ、分かりやすくていいか」
種族の名はさほど重要ではない。
少年は戸惑いながらも、納得しようとした。
「えっと、ブタ族はどれくらいいるんだい?」
ブヒゾウは正座をして答えた。
「そうですね、数は分かりませんが、世界にたくさんいると思います。力仕事や運搬などが得意ですので」
なるほど。ブヒゾウを見る限り、気は優しくて力持ちタイプ、というところだろうか。
「近くにオイラの村があるんです。森を抜けた先に……」
話している最中に草むらから音がしてブヒゾウは黙った。そして体に似合わず俊敏に立ち上がると、少年の目の前に手を伸ばした。
一瞬のことで少年には何が起こったか分からなかった。ブヒゾウの手には紫のナイフが握られている。刃先を握り締め、手のひらから血が滴っていた。
「こ、このナイフは……?」
ブヒゾウが、投げられたナイフを少年に刺さる前に止めたようだ。
しかしなぜナイフに紫のオーラが!?
とにかく少年はブヒゾウの肩を叩いた。
「ありがとう、ブヒゾウ。大丈夫か?」
「たいしたことないっす」
草むらからブヒゾウに似たブタ族がゆっくりと歩いてきた。先程森を散策していた片割れだろう。
「何をしている、ブヒゾウ」
近づくブタ族は野太い声を出した。紫のオーラを体に纏っている。
「草むらに身を潜めておいてください」
ブヒゾウは少年の前に立ちはだかって、紫オーラのブタ族と対峙した。
「早くその亜人を捕まえろ」
そう言うブタ族にブヒゾウは掴みかかった。肩と腕を押さえ、柔道の組み手のようにブタ族の体を制した。
「何をする! 血迷ったか!」
ブヒゾウは必死に押さえ込む。けれど対するブタ族は笑い出した。
「ふはは、どうしたブヒゾウ。随分弱っちくなったなぁ!」
紫オーラのブタ族はブヒゾウよりもひとまわり体が大きい。
やはりオーラを纏うと体が大きくなるようだ。
力に押され、ブヒゾウの体は少しずつ押されてゆく。
「ぐぬぬぬ」
歯を食い縛って耐えているブヒゾウ。けれど歴然とした力の差に押されてゆく。
「く、くそぉ!」
「はい、ブレイク!」
少年は二人の間に割って入った。
驚くブヒゾウ。
少年は寝かせた両手の人差し指をくるくると縦に回し、ブヒゾウを指した。
「指導!」
ブヒゾウは少年を呆然と見つめた。
「な、何をしてるんです! 隠れていろと……」
「大丈夫、大丈夫。もう終わったから」
「は?」
「見てごらんよ」
少年は対したブタ族を指差した。
ブタ族はブヒゾウの前で悶えている。そして悪意のオーラが体からじわじわと抜けていき、その場に力を失って倒れ込んだ。
「ブ、ブヒタロウ!」
ブヒゾウは叫んだ。
少年も思わず叫んだ。
「また、すごい名前だな!」




