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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第1章 はじめの村編
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「ま、まぁ、分かりやすくていいか」


種族の名はさほど重要ではない。

少年は戸惑いながらも、納得しようとした。


「えっと、ブタ族はどれくらいいるんだい?」


ブヒゾウは正座をして答えた。


「そうですね、数は分かりませんが、世界にたくさんいると思います。力仕事や運搬などが得意ですので」


なるほど。ブヒゾウを見る限り、気は優しくて力持ちタイプ、というところだろうか。


「近くにオイラの村があるんです。森を抜けた先に……」


話している最中に草むらから音がしてブヒゾウは黙った。そして体に似合わず俊敏に立ち上がると、少年の目の前に手を伸ばした。


一瞬のことで少年には何が起こったか分からなかった。ブヒゾウの手には紫のナイフが握られている。刃先を握り締め、手のひらから血が(したた)っていた。


「こ、このナイフは……?」


ブヒゾウが、投げられたナイフを少年に刺さる前に止めたようだ。

しかしなぜナイフに紫のオーラが!?


とにかく少年はブヒゾウの肩を叩いた。


「ありがとう、ブヒゾウ。大丈夫か?」

「たいしたことないっす」


草むらからブヒゾウに似たブタ族がゆっくりと歩いてきた。先程森を散策していた片割れだろう。


「何をしている、ブヒゾウ」


近づくブタ族は野太い声を出した。紫のオーラを体に(まと)っている。


「草むらに身を潜めておいてください」


ブヒゾウは少年の前に立ちはだかって、紫オーラのブタ族と対峙(たいじ)した。


「早くその亜人を捕まえろ」


そう言うブタ族にブヒゾウは掴みかかった。肩と腕を押さえ、柔道の組み手のようにブタ族の体を制した。


「何をする! 血迷ったか!」


ブヒゾウは必死に押さえ込む。けれど対するブタ族は笑い出した。


「ふはは、どうしたブヒゾウ。随分弱っちくなったなぁ!」


紫オーラのブタ族はブヒゾウよりもひとまわり体が大きい。

やはりオーラを(まと)うと体が大きくなるようだ。


力に押され、ブヒゾウの体は少しずつ押されてゆく。


「ぐぬぬぬ」


歯を食い縛って耐えているブヒゾウ。けれど歴然とした力の差に押されてゆく。


「く、くそぉ!」





「はい、ブレイク!」


少年は二人の間に割って入った。

驚くブヒゾウ。


少年は寝かせた両手の人差し指をくるくると縦に回し、ブヒゾウを指した。


「指導!」


ブヒゾウは少年を呆然と見つめた。


「な、何をしてるんです! 隠れていろと……」


「大丈夫、大丈夫。もう終わったから」


「は?」


「見てごらんよ」


少年は対したブタ族を指差した。

ブタ族はブヒゾウの前で(もだ)えている。そして悪意のオーラが体からじわじわと抜けていき、その場に力を失って倒れ込んだ。


「ブ、ブヒタロウ!」

ブヒゾウは叫んだ。


少年も思わず叫んだ。


「また、すごい名前だな!」


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