23
音は気流に乗って遠くまで運ばれる性質をもつ。
そして気温が低いほど伝わりやすく、湿度が高いほど遠くまで届くとされている。
ヨキがトリ族に雨を降らせたのは、この効果も鑑みてのことであった。
見渡す限りの感染者は、クックルの声を聞き、新しい国王が誰であるかを知り、その忠誠心によって悪意が祓われていった。
全土とまではいかないが、少なくとも丘を登ってくる者はいなくなった。
トリ族達はその光景を丘から眺め、歓声をあげて喜び、新しい王クックルを讃えた。
そして目下の敵はケージひとりであることを皆が確信した。
ヨキの後ろにトリ族たちが集い、ケージに対峙する。
「さあ、どうする、お前に仲間はいない。もう年貢の納め時だ」
多勢に無勢だったヨキ達、今は逆転し、ケージがひとりその立場になった。
「なんということだ」
ケージは舌打ちした。
「しかし……まだ手はある」とケージは諦める様子を見せなかった。
「往生際が悪いなぁ」
ヨキは観念してほしかったが、そう簡単に物事は運ばないらしい。
「ふん、吠え面をかくがいい。魔法にはまだ、手数がある」
ケージは両手を広げて、ニヤリと笑った。
「出でよ、ゴーレム!」
巨大な岩の怪物が地響きと共にヨキ達の前に現れた。
ゴーレムはごつごつした手をゆっくり持ち上げたかと思うと、ものすごい速度でヨキ達に振り下ろした。
「危ない、ヨキ様!」
トリトリオ兄弟がヨキとカナを背負って飛び立った。
ゴーレムの叩いた地面は丘の地形が変わるほどに陥没し、地鳴りが起こった。
他のトリ族も既で躱し、ブヒゾウやブヒタロウを背負って飛び立った。
鳥は災害前にその地を予期して離れてゆく。
トリ族も危険を察知する能力に長けているようだ。
ヨキは上空から岩の化け物を見下ろす。
「危ないところでございましたな」
「ありがとう、サントーリオ」
「いえいえ」
「ったく、登場してすぐ殴ってくるなんて悪意しかないだろ!」
サントーリオはくすくすと笑った。
「そうですな」
「しかしすごいね。あんなのを呼び出せるなんて」とカナは感心した。
「それでも僕の力とカナの魔法なら、たいしたことないさ」
ヨキはカナに近づき、肩に手を添えた。
「あいつだって結局は悪意の塊なんだから」
カナは魔法をゴーレムに向けて放った。
「ヒール!」
プスッ。
カナの手から魔法が出た途端、煙と共に消えた。
「あれ?」
何度放っても魔法は手のひらで消え去った。
「カナ、どうした?」
カナは苦笑いを浮かべた。
「ははっ……、魔法使いすぎちゃった……みたい……」
そう言った瞬間、カナは項垂れるようにトリ族の背中に倒れ込んだ。




