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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第2章 トンディーク編
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23


音は気流に乗って遠くまで運ばれる性質をもつ。

そして気温が低いほど伝わりやすく、湿度が高いほど遠くまで届くとされている。


ヨキがトリ族に雨を降らせたのは、この効果も(かんが)みてのことであった。



見渡す限りの感染者は、クックルの声を聞き、新しい国王が誰であるかを知り、その忠誠心によって悪意が(はら)われていった。


全土とまではいかないが、少なくとも丘を登ってくる者はいなくなった。


トリ族達はその光景を丘から眺め、歓声をあげて喜び、新しい王クックルを讃えた。


そして目下の敵はケージひとりであることを皆が確信した。

ヨキの後ろにトリ族たちが集い、ケージに対峙(たいじ)する。


「さあ、どうする、お前に仲間はいない。もう年貢の納め時だ」


多勢に無勢だったヨキ達、今は逆転し、ケージがひとりその立場になった。


「なんということだ」


ケージは舌打ちした。


「しかし……まだ手はある」とケージは諦める様子を見せなかった。


「往生際が悪いなぁ」


ヨキは観念してほしかったが、そう簡単に物事は運ばないらしい。


「ふん、吠え面をかくがいい。魔法にはまだ、手数がある」


ケージは両手を広げて、ニヤリと笑った。


()でよ、ゴーレム!」


巨大な岩の怪物が地響きと共にヨキ達の前に現れた。


ゴーレムはごつごつした手をゆっくり持ち上げたかと思うと、ものすごい速度でヨキ達に振り下ろした。


「危ない、ヨキ様!」


トリトリオ兄弟がヨキとカナを背負って飛び立った。


ゴーレムの叩いた地面は丘の地形が変わるほどに陥没し、地鳴りが起こった。

他のトリ族も(すんで)(かわ)し、ブヒゾウやブヒタロウを背負って飛び立った。


鳥は災害前にその地を予期して離れてゆく。

トリ族も危険を察知する能力に()けているようだ。


ヨキは上空から岩の化け物を見下ろす。


「危ないところでございましたな」


「ありがとう、サントーリオ」


「いえいえ」


「ったく、登場してすぐ殴ってくるなんて悪意しかないだろ!」


サントーリオはくすくすと笑った。

「そうですな」


「しかしすごいね。あんなのを呼び出せるなんて」とカナは感心した。


「それでも僕の力とカナの魔法なら、たいしたことないさ」


ヨキはカナに近づき、肩に手を添えた。


「あいつだって結局は悪意の塊なんだから」


カナは魔法をゴーレムに向けて放った。


「ヒール!」


プスッ。


カナの手から魔法が出た途端、煙と共に消えた。


「あれ?」


何度放っても魔法は手のひらで消え去った。


「カナ、どうした?」


カナは苦笑いを浮かべた。


「ははっ……、魔法使いすぎちゃった……みたい……」


そう言った瞬間、カナは項垂(うなだ)れるようにトリ族の背中に倒れ込んだ。


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