22
「バカな! 暗黒魔法を!?」
唖然とするケージにヨキは淡々と述べる。
「魔法は効かないって言っただろ。暗黒だろうが、漆黒だろうが、美白だろうが」
目くじらを立てていたはずのカナは思わず吹き出した。
「なに、美白魔法って! それ、わたしに掛けてほしいんだけど」
「カナには必要ないよ」
カナは顔を赤らめて頬を手で隠した。
「ちょっとぉ。そりゃ、肌白いけども! ハリがあってキメ細かいけども!」
緊迫した場面であるはずが、ヨキとカナは笑い合っていた。
その光景にケージは怒りに震えていた。
「ふざけおって……!」
ヨキの後ろではトリ族が集まり終えた。
「ヨキ達、準備万端です」
ブヒゾウがそう告げた。
「よし、では盛大に始めてくれ」
「了解! 行くぞ、みんな!」
勝鬨の声をあげて、トリ族達は丘の側面に向かって半円の形に整列した。
その中央にはクックルがいる。周りを囲むトリ族達は一斉に翼を羽ばたかせた。
何百といるトリ族の羽ばたきは突風を巻き起こし、丘の斜面を滑ってゆく。
「よし、頼むぞ、クックル王子!」
ヨキが声を掛ける。
クックルはこくりと頷いて深呼吸し、力を込めて叫び出した。
「国の民よ! 我が父ホロッホは崩御された!
われクックルは父の王位を受け継いだ!」
クックルは持てる限りの声で叫んだ。
「国の民よ! われに血を、肉を、魂を捧げてくれ! 共にこの苦難を乗り越えよう!」
クックルの声は突風に乗って斜面を下り、丘へ向かいゆく感染した国民の耳に届いた。
悪意に侵された国民たちは、クックルの声を聞いた。その者達の悪意は体から蒸気のように抜けていった。




