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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第2章 トンディーク編
40/161

15


トリ族の群れは急降下を始めた。


先頭を飛ぶヨキはトリ族をカナに近づかせ、カナの肩に触れた。


「よし、頼む!」


「ヒール!」


施設付近の感染者たちに向けてカナの魔法が解き放たれた。


魔法を浴びた者たちが体を震わせ、体から紫のオーラが消えてゆく。


「入口にもまだいるぞ」


「オッケー!」


カナは魔法を放ち、その者たちも次々に倒れていった。


「よし!」


ヨキの力を得た魔法は、圧倒的な効果を発揮した。たとえどんな強力な武器を(たずさ)えた相手でも、戦わずして倒すことが出来る。


地味ながらこの世界において、どんな兵器にも勝る力だ。




ヨキ達は地上へと降り立った。地面はやはり落ち着くものだとヨキは実感した。『地に足がつく』とはよく言ったものだ。


「サントーリオ、王子を頼んだぞ」


「お任せあれ!」


サントーリオは王子の手を引き、施設入口のドアを開いた。


ヨキとカナ達は入口前に陣取り、彼らを援護した。大所帯で移動したせいで感染者たちの目を引き、小高い丘を登って施設に向かってきていた。


ヨキはトリ族を呼んだ。

サントリーオ(次男)とサントリオー(三男)がすぐさま駆けつけた。


「トリ族は上昇気流を生み出せると聞いたが?」


サントリーオとサントリオーは互いを見合わせて首肯(しゅこう)した。


「はい、我々が集まれば可能です」


「では、この電波塔の丘付近に向けて雨を降らせてくれ」


「雨をですか?」


「ああ、丘の下から感染者がやって来ている。更に上空から飛んで来る者が迫ってくるだろう。トリ族は雨が嫌いと聞いた。雨でそれを防ぎたい」


2人はすぐさま納得した。


「なるほど。確かに我々は雨が嫌いです。飛行中視界が悪くなりますし、雨粒で眼球を(いた)めます。加えて、体は重くなりますし、ホント雨は天敵と言っても過言ではありません」


「よし、トリ族を寄せ付けない点では効果的だな。もうひとつ雨を降らせる利点があるが、それは万が一のためだから今は考えないようにしよう」


「わかりました。では早速行ってまいります」


サントリーオとサントリオーはトリ族を何十人か呼び寄せ、おしくらまんじゅうのように互いの体を(こす)り合わせた。


そして体から蒸気を発するほど熱を帯びてから空へと舞い上がった。




施設の中は小さなブースがあり、発信器と拡声器が置かれてあった。

サントーリオは機材を確認した。


「よし、壊れてはいませんな」


スイッチを押すとマイク横のランプが緑色に灯る。


「さ、クックル様」


クックルはおどおどとしながらマイクへ近づいた。


「なんて言えばいいの?」


クックルが尋ねると、サントーリオが優しく微笑んだ。


「わたくしが申し上げる通りにおっしゃってくだされば。まずわたくしがやってみましょう」


サントーリオはマイクに(くちばし)を近づけた。


「えー、国民の皆さん、聞こえますでしょうか?」


スピーカーを通じてサントーリオの声が周囲に響き渡った。ヨキ達もその声を聞き、放送が始まったことを知った。


サントーリオは続けて話し出す。


「わたくしは王宮騎士団のサントーリオでございます。皆さん、わたくしのことはご存知でしょう? わたくしの声を聞けば本物であることが分かると思います。わたくしは有名ですからね。


ただ今回は掛け合いをするわけではございません。期待してくださった方もおられると思いますが、今回はそういった案件ではございませんのであしからず。まぁ、少しくらいしてもいいんですが、緊急事態でございまして、なんで緊急事態かと言いますと……」


ヨキ達は聞いていて思わず突っ込んだ。


「いや、前置き長いわ!」




面白いと思った方、続きが気になる方は、

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