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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第2章 トンディーク編
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10


「さ、さて、今後のことなんだが」


ヨキは気を取り直して話を進めようとした。


「おっと失礼。これは我が種族に伝わる『掛け合い』という娯楽でございまして」


「…………そうなんだ」


この世界で漫才をする種族がいるとは思わなかった。


「さて」

サントーリオは背筋を伸ばした。


「クックル様も笑顔になられたことですし、作戦会議といきましょうか」


あんな光景を見せておいて、すぐに切り替えられるなんて、ハートはチキンじゃないんだな、とヨキは思ったが口にしなかった。


「それで、都の全員は悪意に侵されているのか?」


サントーリオは(うなず)いた。

「おそらく。皆正気を失っておりますな」


ブヒゾウは不可解とばかり首を傾げた。


「どういうことですかね。国王が亡くなられたなら、国民は元に戻るのではないですか?」


ヨキはブヒゾウに同意した。


「確かに。そうなってもおかしくない」


村の(おさ)を治したことで村人が元に戻ったように、国王の死によって国民は正常になりそうなものである。


ヨキは思考を(めぐ)らせた。

ブタ族の村の時と違うのは、上に立つ者を悪意から解放していないという現状である。


「推察では、国王が侵されたことで国民全体に悪意が伝播(でんぱ)したと考えられる。しかし国民は現在も戻っていないのだな?」


「はい」とサントーリオは現状を嘆いて項垂(うなだ)れた。


「これはつまり、国民がクックル王子に王位が継承されたことを知らないからかもしれない」


「それはどういう……?」

ブヒゾウは頭を傾げた。


「あくまで推測だけど。

(おさ)の悪意が消えれば、その配下の者の悪意も消えることは実証済みだ。

だが、この国の国王は悪意に侵されたまま亡くなられた。そのため(いま)だに国民から悪意が消えぬまま残っている」


「なんと! そんな仕組みとは!」

サントーリオにとっては初耳な状況で驚きを(あらわ)にした。


「推測の範疇(はんちゅう)だけどね。

もしそうだとするならば、王位がクックル王子に継承されたと国民が知れば、国民はクックル王子を長と認め、正気に戻るのではないだろうか」


「なるほど。それを国民に伝えるわけですね」とブヒゾウは納得する。


「うまくいくのかな」

カナはヨキの言葉を鵜呑(うの)みに出来ずに不安がった。


確かにこれはヨキの仮説でしかない。何の確証もない話だ。


「もしそれでうまくいくとして、どうやって国民全体に伝えるの?」

カナは尋ねた。


ヨキは眉をひそめた。


「うーむ。この人数では多勢に無勢だ。王宮へ戻るのも難しいだろう。まずは仲間を少し増やさないと動き回るのは困難だ。そして国民に伝える(すべ)を考えよう。何か手段はないか?」


サントーリオは(くちばし)を指で(さす)った。


「そうですなぁ、正直まだよく状況を把握できておりませんが、とにかく王子の王位継承を国民に伝えればいいのですな?」


「そうだ」


サントーリオは頭の羽毛を整えた。


「となると……ラジオなどはどうでしょう?」




面白いと思った方、続きが気になる方は、

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