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現国王クックルは人間なら4、5歳ほどの幼さで、産毛に覆われ、羽根もまだ生えきっていない。
トリ族は翼と嘴を持った人型をしているが、クックルはまだ一人前になっていない、鳥でいうならヒナに近い状態であった。
大人のトリ族に手を引かれて、この混乱と、未知の土地に連れて来られた状況に困惑している。
「サントーリオ」とクックルは不安そうに声を震わせて呼んだ。
「はっ」とトーリオは跪いた。
「お父上はどうなった?」
「………………」
寂しそうにするクックルに居たたまれなくなったサントーリオは、カラ元気な声をあげた。
「そ、そうだ、クックル様。あれをご覧になられますか?」
クックルの顔が急に晴れやかになった。
「見たい見たい!」
「では直ちに準備いたします」
サントーリオはサントリーオ(次男)に耳打ちした。
「ここで?」「仕方ないだろ」と何やら揉めていたが、クックルを元気づけるためにということで、話しはついたようだ。
2人は左右へ分かれ、直立した。
そして身を屈め、下腹部あたりで拍手しながら中央へ集まってきた。
「はい、どうもー」
「いやぁ、最近めっきり寒くなりましたねぇ」
「ほんまやねぇ」
「夜なんて冷え込んじゃって」
「確かにな」
「羽毛ぶとんが恋しいわ」
「いや、自前で羽根持っとるがな!」
ヨキ達はその光景を呆然と見ていた。
「しかし寒いときはハンバーグ食べたなるよね」
「急やな」
「こないだレストラン行ったんよ。ハンバーグ食べたなって」
「ほいで?」
「そしたら、上に目玉焼き乗っとったんよ」
「ええやないか、美味しいやん」
「その卵産んだニワトリ知り合いやねん」
「いや、切ないこと言うなよ!」
何が起こっているのかヨキは理解出来なかった。
「ま、そういう感情捨てて目玉焼きを食べようとしたんよ」
「そうしないと食べられへんからね」
「恐くて食べられへん」
「気にしたらあかんで」
「いや、目玉が恐くて」
「いや、畑にある鳥避けと違うねんから!」
なんで関西弁?
ヨキは口をあんぐりと開けていた。
「せやから見ぃひんよう店の電気消したった」
「無茶苦茶するなぁ」
「そしたら何も見えなくなって」
「そら、鳥目やからな!」
「電気つけたら店主に大目玉食らったわ」
「うまいこと言わんでええ! そら、勝手に電気消すからや」
「ゾッとして鳥肌立ったわ」
「もともと鳥肌ですけど!」
「ほんま、チキンとせなあかんね」
「『きちんと』や! もうええわ!」
クックルはキャッキャと笑っていた。
クックルの取り巻き達も羽根をバサバサと喝采を送っていた。
ヨキ達4人はその不思議な光景に完全に引いていた。




