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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第2章 トンディーク編
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3人は立ち止まった。

トリ族は紫のオーラを(まと)っており、鋭い(くちばし)を持ち、大きな翼がある。


ブヒタロウはもがいて抵抗する。


「や、やめるでがす! オイラを食っても美味しくないでがす!」


いや、ブタだし美味しいだろ、絶対……。


ヨキはちょっとだけそう思った。


「ヨキ様ぁ、お助けを!」


ブヒタロウは半べそになって嘆いた。


「待ってろ、ブヒタロウ! カナ、今だ!」


ブヒタロウを狙って速度を止めたトリ族へなら魔法が使える。


カナが魔法を繰り出そうと身構えた瞬間、ブヒタロウを囲むトリ族たちが突如燃え上がった。


「ぎゃああ!!」


炎に包まれるトリ族たちは絶叫した。


まだカナは魔法を放っていないし、そもそも今のカナはファイアを使えない。

いったい何が起こったのか、ヨキ達にも分からなかった。


「カナ! 今のうち!」


「オ、オーケー。ヒール!」


カナがブヒタロウを取り巻くトリ族に魔法を放った。ヨキが肩に手を添えている。


ブヒタロウに群がっていたトリ族から悪意のオーラが消え、バタバタと倒れ込んだ。

ヒールも含まれているため、燃え上がった体に火傷(やけど)(あと)もなかった。


中央に腰を抜かしたブヒタロウがいる。


「あわわわ……」


「ブヒタロウ、大丈夫か?」


3人が寄っていくと、ブヒタロウが放心状態だった。


「な、なんかトリ族が急に燃え出したです」


ヨキはブヒタロウの体を眺めた。トリ族が燃えたのに、ブヒタロウは一切炎に包まれなかった。

更にトリ族に(つか)まれたのに、悪意に(おか)されていない。トリ族には完全に敵意があったはずだ。


「ブヒタロウ、体、大丈夫か?」


ヨキが尋ねると、ブヒタロウは自分の体を眺めた。


「だ、大丈夫でげす。あちこち体を(ついば)まれたでがすけど」


「食べられかけてるじゃないか!」


「か、勘弁してほしいでがす」


ヨキはブヒタロウの体に触れた。


「一応、(はら)っておく」


もしかしたら悪意に侵されているかもしれないとヨキは思った。けれどブヒタロウに触れたヨキの手には悪意を祓う感覚が伝わってこなかった。つまりブヒタロウは何事もなかったようだ。


自分の仮説は間違っていたのか?


ヨキは眉をひそめ、考え込んだ。


「ありがとござんす」とブヒタロウはそんなヨキをよそにペコリと頭を下げた。




「トリ族が目覚めたよ」


カナが声を掛け、ヨキは振り返った。

トリ族は正気を取り戻し、ヨキ達を物珍しそうに見つめている。

体は少し縮み、顔つきは穏やかになっている。


「あ、あなたのその力は?」


十数人の先頭に立ったトリ族3人がカナに向かって尋ねた。


「え、わたし? 違う違う、わたしはヒールを唱えただけ。悪意を祓ったのはヨキだよ」


ヨキのほうを指差し、トリ族はヨキへと近づいた。


「ヨキ様と申しますか。なんと、悪意を祓えるとは!」

「これで我が国トンディークも救われる」

「おお、神も見捨てなかったのか」


トリ族たちは喜び、互いの肩を叩いた。

そして片膝をついて頭を下げ、ヨキに感謝の意を表した。


「助けていただいてありがとうございます」


ヨキは照れて頭を()いた。


悪意を祓う度に人に感謝される。面と向かって感謝されることに慣れておらず、ヨキははにかんでやり過ごしたが、少しずつ自らの力の重要さを実感し始めていた。


「わたくしどももあなた様のお力になりとうございます」


トリ族は仲間になることを望んだ。ヨキ達にとってもそれは願ったりであった。


「それは心強い。えっと、君たちは……」


先頭の3人は立ち上がった。


「おっと、これはご無礼を。申し遅れました、わたくし、長男サントーリオと申します」

「わたくしは次男サントリーオ」

「わたくしは三男サントリオー」

「3人合わせて、トリトリオ三兄弟でございます」


「いや、分かりづらいな!」


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