23
翌日、ヨキは出発する準備を整えていた。
この村に留まって、みんなと楽しく過ごすことも出来るかもしれない。
けれどヨキはこの地を離れることを選んだ。
救世主になりたいわけではない。
感謝されたいわけでもない。
ただ、この力はきっと役に立つ。
人々を救う力がある。
悪意のない世界はきっと楽しい。
みんな楽しく笑って暮らしてほしい。
この村だけでなく、世界の人々にも。
ただ、それだけだった。
「この村を発つの?」
カナはヨキの傍へ寄った。
「うん」
カナは少し躊躇いながらも思いの丈をヨキへぶつけた。
「わたしも……連れてってくれない?」
ヨキは荷造りの手を止めた。
カナは顔を下げ、想いを溢れさせた。
「わたしね、本当はね、人を癒したくて魔法使いになったはずなの。傷を治して、苦しみから解放してあげたくて」
カナは固めた拳を強く握った。
「それなのに……」
カナは瞳に涙を浮かばせてヨキへ顔を向けた。
「昨日の話を聞いて、わたしも何だか居ても立ってもいられなくて。たくさんの人が悪意に侵されてるんでしょ? みんな傷つけ合ってるんでしょ?」
カナは首を振った。
「この村の復興を最後まで手伝いたい思いはあるけど……、それが償いだと思っているけど……、でも今すぐヨキが行くなら……」
「もちろん行ってくだされ」
背中から声がした。振り返るとブヒノスケが笑顔で立っていた。
「ヨキ様もそのつもりなのでしょう? だから昨日カナ様に話を聞かせたのでしょう?」
ヨキは図星とばかりに頭を掻いた。
「え、まぁ……、そうだね」
ブヒノスケはカナに微笑んだ。
「村のことは心配なさらなくて構いません。カナ様はカナ様のお役目があるのでしょう。この村に留まるより、世界の人々から苦しみを取り除いてあげてください」
カナは両手で顔を覆い、涙を流した。
「ありがとう……」




