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ヨキは失望で目を細めた。
なんということだ。
亜人が平和の均衡を破ったのか。
それでも亜人ならやりかねない、と思う気持ちがヨキの正直な思いであった。
ブヒノスケは言葉を足した。
「そして現在全ての国は亜人が治めているようです」
「亜人が?」
亜人が全ての国を蹂躙し、秩序を乱している。
「では、『悪意』も亜人がばら撒いているのか?」
「おそらく」
それは捨て置けない由々しき問題だ。けれどヨキは身に詰まされる思いに駆られた。
自然を亜人が破壊し、独占する。それはヨキがいた世界でも同じことだった。
どこでも亜人は害をなす存在なのだ。
ヨキはブヒノスケに頭を下げた。
「すまない。同じ亜人として恥ずかしい」
ブヒノスケは両手を振って恐縮した。
「いえいえ、何を仰いますか! ヨキ様が謝ることではございません! あなたは我が村を救ってくれたではないですか!」
ブヒノスケはそう言いながら微笑んで、雲ひとつない空を見上げた。
「わたしは思うのです。あなたは神が授けてくださった最後の希望であると」
「最後の希望?」
ブヒノスケはヨキの目を見つめた。
「ええ。もしあなたがいなければ、この世界は悪意に染まったままだったでしょう。誰もそのことに疑問を持つことなく、互いを傷つけ、時には殺し合っていたかもしれません。
しかしあなたが突如現れた。悪意に染まる世界を洗い流す、神の溢した涙の一雫のように」
ヨキはブヒノスケの言葉に自分の手のひらを眺めた。
この力がこの世界を浄化する……。
特別な力を得たことはヨキも実感している。
そこに使命や運命めいたものも感じている。
だとするならば、
ヨキはその神とやらに聞いてみたかった。
なぜ、僕なんだ。
なぜ、僕にその力を与えた。
なぜ、僕をこの地へ送った。
聞いてみたかった。
神がいるなら。




