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この異世界は悪意しかない!  作者: 浅見青松
第1章 はじめの村編
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とにかく死なずに済んだ。

あの悪意の塊からの難を逃れ、少年は胸を()で下ろした。


「とりあえず良かった。えっと……何だっけ? あ、そうそう、食糧調達……」


目の前のウサギに目をやる。ウサギは視線に気付いたのか、少年のほうに目を向け、近寄って少年の足に鼻を動かした。そしてつぶらな瞳で少年を見つめた。


モフモフの毛並み、寂しそうに潤んだ目、真ん丸い体。


少年は体を震わせて叫んだ。


「いや、こんな可愛い子、無理!」


少年は腹を(さす)って確かめた。

今はさほど空腹ではない。必要に迫られていないのであるならば、とりあえず他を探すことを少年は選んだ。


「でもこんなことしてたら生きていけないよな」


少年はウサギを逃がすことにしたが、これから先のことを思うと甘い考えの自分に不安にもなった。


少年はウサギを抱きかかえた。ウサギは少年の腕の中でもおとなしく鼻を動かしている。


「可愛いなぁ」


少年は癒されながら、ウサギを抱えた腕の傷に目をやった。血は止まっている。


「噛まれた時にウサギは何ともなかったのに、僕が耳を(つか)んだらウサギからオーラが消えた。あの力は僕の意思に関係あるのかな」


「ほう、亜人族か」


思考に入り込んでいた少年の背後から突然、重低音の声が聞こえた。

少年は振り返った。


そこには先程見かけたブタ顔の人間がひとり立っていた。先ほどの仲間はいない。

少年とウサギとの攻防の音を聞き付けて近寄ってきたようだ。少年は思考に夢中でその足音に気付けなかった。


逃げようにも少年は足が震えてその場に立ち尽くした。

少年を覆うほどの背丈があり、横幅もあるため、圧倒的な脅威があった。ブタは腰に提げたケースからナイフを取り出した。その手のウサギをよこせと言わんばかりだ。


少年はどうやって逃げようかとウサギを抱えながら考えた。


「亜人を食えるなんて久々だな」


ブタは舌()めずりをして少年に近づいた。


少年は心で叫んだ。


えっ、僕を食うの!?


悪意しかないだろ!


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