18
「うーん……」
村の長ブヒノスケが目を覚まし、頭を振った。
「目が覚めたか、ブヒノスケ」
ブヒゾウがしゃがんでブヒノスケの肩を叩いた。
悪意は消えても体が他の者より大きいが、険のとれた表情は、ブヒゾウやブヒタロウのように穏やかで優しそうであった。
「ブヒゾウ。オレはいったい……?」
「悪意に取り憑かれていたんだ。でももう大丈夫だ」
「悪意に……」
ブヒノスケはハッと目を見開いた。
「そ、そうだ。オレは突然現れた魔女に……」
ブヒゾウは頷いた。
「ああ。でももう心配はいらない」
「村の者は? みんなは?」
「大丈夫だ」
ブヒゾウは振り返ってヨキを見た。
「この方が悪意を祓ってくれた」
ブヒノスケもヨキに目を移した。
「悪意を……祓った……?」
「村は救われたんだ」
ブヒノスケはその言葉を受けて目に涙を浮かべ、ヨキに向かって正座をして頭を下げた。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
何度も何度も感謝を述べた。
ヨキは照れて頭を掻いた。
「ブヒゾウやブヒタロウの助けもあってね」
ブヒノスケはブヒゾウにも頭を下げた。
「すまん……。オレが……オレが不甲斐ないばっかりに……みんなをこんな目に…… 」
正気を取り戻した村の者たちも起き上がり出した。ブヒゾウはその姿を振り返り、ブヒノスケに微笑んだ。
「お前のせいではないさ。それにみんな無事だったんだ。気に病むことはない」
「しかし……」
村の者たちはブヒノスケの前に集まってきた。
「大丈夫か、ブヒノスケ?」
「立てるか?」
「無事か?」
村の者は皆ブヒノスケを案じた。
「み、みんな……」
「おお、いつものブヒノスケだ」
「よかった」
「心配したぞ」
皆は無邪気に笑い合った。
ブヒノスケは皆に向かって地面に手を付いた。
「す、すまん。みんな傷だらけになってしまって、村もこんな荒れ果ててしまって」
皆はそれでも穏やかに笑った。
「なーに、傷はいずれ治る」
「そうさ、村もまた作り直せばいい」
「み、みんな……」
ブヒゾウはブヒノスケの肩を優しく叩いた。
「お前は長として立派にやっている。誰もお前を責める者はいないさ」
ブヒゾウの言葉にブヒノスケは嗚咽を漏らして泣き崩れた。
「ううう……」
そんなブヒノスケを村の皆が囲み、慰め、励まして笑った。




