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一本道を逸れて川沿いを進み、村の西側の草むらに3人は身を潜めた。
「これが村?」
ヨキは間近で村の様子をうかがって驚いた。
元々、藁やレンガの家が建ち並んでいたようだが、ほとんどは崩れ果て、それを修復した形跡はない。廃墟と化した場所に集団が寝泊まりしているだけのようだ。
「荒れ放題に荒れてるじゃないか」
「感染している間はこれが当たり前に思ってたんですが、こんなに荒れてるなんて……」
ブヒゾウですら、あまりの荒廃ぶりに驚いていた。
「皆が正気になれば、きっと元通りになるよ」
ヨキは2人に希望を持たせるべく励ました。
「よし、行こう」
作戦通り、ブヒゾウは捕らえたようにナイフをヨキの背中に突き付け、ブタ族が溜まっているほうへと歩みを進めた。
ブタ族の一人が気付いた。
「おう、ブヒゾウ。なんだ、その亜人は?」
ブヒゾウは声を低めて、懸命に悪ぶった。
「お、おう……、ブヒノスケの所へ持っていく」
ブタ族は瓦礫に腰掛け、2人が通る姿を睨んで傍観していた。耳が削げた者、隻眼の者、胸や腕が傷だらけの者、そんな巨体がこちらを見ている。
悪意に侵されたブタ族の並木道。そこを2人は平静を装って歩いてゆく。
感染したブヒゾウやブヒタロウと対峙したヨキだったが、これだけの人数がいるとさすがに威圧感と恐怖を覚えずにはいられない。
もしこの集団が一気に襲ってきたら、ひとたまりもないだろう。
本当にここは悪意の吹き溜まりのようだった。
村の奥まで進むと、ひときわ体の大きいブタ族の1人が瓦礫に草木を敷き詰めたソファのような場所を陣取り、そこにどっしりと座り込んでいた。
一瞬で村の長であることが分かる威厳を備えていた。他の者と一線を画している。
「なんだ、ブヒゾウ。森に行ったと思ったら亜人を捕まえたのか」
ふんぞり返る村の長ブヒノスケは2人を冷ややかに窺っている。体中の傷が勲章のように輝き、首筋には火傷のような痕がある。
これがブヒノスケか……。
ヨキは生唾を飲み込んだ。
そのブヒノスケの背後から、徐に近づく影があった。
思いもよらぬ存在にヨキは驚いた。
それは、冷ややかな目をし、黒衣を纏った亜人の女性であった。




