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「それで、ドラゴン族はどれくらいいるんだ?」
円卓を囲んでヨキはサントーリオに尋ねた。
「宣戦布告の際に申していたのは、およそ15万人」
「15万!」
集った一同がどよめいた。
「15万を相手にするのかミャ?」
ミャーサは机に突っ伏してだるそうだ。
それでもヨキは至極冷静に努めた。
「怯んではいけない。我々には善意の剣があるんだ」
クジラの骨を回収し、それをネコ族やブタ族が運び、トンディーク国の鍛冶屋が精製した。ネコ族には鍛冶職人がいないため、トンディーク国まで持ってくるのが一苦労だ。
運ぶ骨は折れないが、作業は骨が折れる。
そして、その剣に善意をひとつひとつ入れ込むという根気のいる作業だった。
「今みんなのおかげで剣は3,000本完成している」
「大変だったでげすよぉ」
ブヒタロウ他、魔法使いチームはさぞ大変だったろう。カナやケージもかなり疲弊したと言っていた。
「ご苦労だった。感謝する」
ヨキはその1本を皆の前に掲げた。
「この剣を駆使すれば、大軍にも太刀打ちできるはずだ」
「しかし15万 vs 3,000……」
一同は数に圧倒されていた。
「戦いは数じゃない」とヨキは皆を奮起させる。
「数ですよ」
「数です」
「多いほうがいいべ」
ヨキの励ましも軽く返された。
みんな、素直で何より。
「おいおい、諸君! もう敗北宣言か?」
ヨキは皆を奮い立たせるために熱弁した。
「でも善意を相手の大将に触れさせれば、その大軍も元に戻るのでは?」
ブヒゾウが尋ねると、ミャーサは戦いたくない本音をぶつけた。
「そうミャ! 何も待ち構える必要はニャい」
ヨキもそれに対しては既に考えが及んでいた。
「無論、未然に防ぐ手立ても考えている。ネコ族の忍び部隊がムシ族とドラゴン族の国を現在調査中だ。しかし広大な土地ゆえ、間に合わない可能性があるのだ。
情報を待っている間に相手はこちらの国へ侵攻してくる。だからこそ我々は迎え撃つ準備もせねばならないのだ」
ネコ族の大将ノモンは太い腕に力を込めた。
「問題ない。いざとなったらオレが100人相手でも蹴散らしてやるぜ」
ヨキは頷いた。
「それは頼もしい。しかしノモンのような腕っぷしがなくても、我々はちょーんと相手に触れば、相手を負かすことができる力を持っているんだ」
ヨキは立ち上がり、円卓を叩いた。
「いいか、我々は3,000人でも、ひとり50人触れれば15万だ。そもそも剣で触れれば相手の3,000人がいっぺんに味方になるのだ。触れれば触れるだけ相手の戦力は減り、味方が増えてゆく。
それを繰り返していれば、15万人なんてあっという間に全員味方になる」
「どうでしょうね」
「そんな単純にいきますかね」
「机上の空論ミャ」
「おい、そこ、聞こえてるぞ! ブヒタロウ、お前はどこを見ている! よそ見するんじゃない!」
「へ? あ、ああ……すんませんです」
ヨキは咳払いをし、気を取り直して語り出した。
「机上の空論は悪いことじゃない。理想を持つことは大事だ。それを実現できるかどうかで空論は正論に変わるのだ。君たちはみな、この世界を変えたいのだろ?」
「変えたいです」
「みんな平和に生きてほしいです」
それは皆に共通する願いだ。
「ならば実戦あるのみだ。ここで我々が尻込みしていたら、悪意はまた蔓延してしまうだろう。それでいいのか?」
「よくありません」
「そんなことさせません」
「よく言った、諸君! 我々はそのためにも迎撃せねばならない! 力を貸してくれ!」
皆は奮い立って勝鬨をあげた。
「おー!!」




