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目を覚ましたブヒタロウはヨキに気づくと、ヨキの腕をポカポカと叩いた。
「バカ、バカ、ヨキ様のバカぁ!」
「ごめんごめん」
「ヒドいでげすよぉ!」
「ごめんって。でもありがとう。色々オーラのことがブヒタロウのおかげで分かったよ」
半べそのブヒタロウの頭を撫でた。
ブヒタロウは上目遣いで鼻水をすすった。
「お役に立てたんでげすか?」
ヨキは微笑んで頷いた。
「うん」
「なら、いいでげすけど……」
ブヒタロウは無害になったヘビを掴んでいたことに気付き、「ひゃあ!」と奇声をあげてヘビを放した。ヘビは体をしゅるしゅるとくねらせて、地面を這っている。
「そ、それで、何が分かったんですか?」
ブヒゾウの問いにヨキは得意気に語った。
「うん、知りたかったのは2つ。
ひとつは、悪意のオーラは触れると感染するか。
そしてもうひとつ、僕の力は感染するか、だ」
ヨキは人差し指を立てて説明した。
「まず僕の力を『善意のオーラ』と呼ぶと、この力はブヒタロウを通じてヘビにも影響を与えた」
ブヒゾウは「確かに」と納得して頷いた。
「そして悪意のオーラは触れるとその者は感染する、ということだけど、これは少々難しい」
ブヒゾウは不思議がった。
「え、どうしてですか? ブヒタロウは明らかにヘビに触って悪意のオーラに侵されましたよ?」
「そこなんだよ、ブヒゾウくん」
ヨキは教鞭を振るうように答えた。
「もし触れたものすべてが悪意に侵されるなら、どうしてこの森はこんなに青々としているんだね?」
「緑でげすけど?」とブヒタロウが横槍を入れる。
「喩えだよ、ブヒタロウくんは黙っときなさい!」
ブヒタロウは諭されて頭を縮めた。
「僕は気になっていた。草や木は生物なのに悪意に侵されていない。ウサギやヘビや君たちがこの森を歩き、這い回っているのに、草木は無事だ」
「……確かにそうですね」とブヒゾウは辺りを見回して納得した。
「けれどヘビからブヒタロウには伝染した。ただ、侵されるまで少し間があっただろ? その間は敵意を持つまでの間隔だ」
「敵意?」
「そう、つまり、その相手を意識し、敵意を持つことで悪意は伝播すると思うんだ。ただ触れるだけでは感染しない、ということだ」
「な、なるほど。さすがヨキ様!」
えらく感心するブヒゾウ。
「どういうことでげすか?」
ちんぷんかんぷんなブヒタロウ。頭の上に『?』がいっぱいだ。
ヨキがこの仮説を思いついたきっかけは、ブヒタロウとブヒゾウが組み合った時だった。
悪意に侵されたブヒタロウに触れたはずのブヒゾウは感染しなかった。
ブヒタロウは悪意に侵されてもブヒゾウに敵意を持っていなかったということだ。
ヨキに敵意を持ってナイフは投げたが、それを掴んだブヒゾウは感染しなかった。
ヨキはそこに2人の信頼関係を知った。悪意に侵されていても、揺るがない絆。
そこにヨキは心を打たれた。
こんな優しい2人の仲間達を助けてあげたい。
検証は済んだ。
ヨキは自分の力の性質を理解し、拳をあげて2人を鼓舞した。
「よし、では村の様子を見に行こう!」




