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8話 邂逅

外道魔女クリスティーネを成敗した変態二名。

その後ろで盛大にモザイクが蠢いているが、気にしない方向に持ってゆくのは流石だろう。


「ところで……何故、魔王がここに?」

「それは簡単な事だ。幼女に危機が迫っていたら、馳せ参じるだろう?」

「真理です」

「うむ」


そんなわけあるか、とツッコミを期待したいが、残念ながら、ここにはツッコミを入れる者は存在しない。


この魔王、正真正銘の魔王であり、魔族百五十万を従える王の中の王である。


人間の国とも紆余曲折はあったものの友好平和条約を結んでおり、ほいほい、と気軽に単独行動を行ってもいい人物ではない。


だが、彼には単独行動を取っても問題が無い実力があり、そして、人の話を聞かない事でも有名であった。

彼を一言で言い表すならば、自己中、だろうか。


善に寄り気味な自己中であるため、まだ救いはあるが、そんな彼に振り回されるのは、彼に忠誠を誓っている部下たちだ。

現に、今も姿が見えない魔王を探し大混乱に陥っている。


「取り敢えずは、この魔法陣を破壊して、幼女を救出しましょう」

「同意だ。ま、この程度ならば、魔力調査するほどでもない」


パチン、と魔王が指を鳴らす。

すると、呆気なく魔法陣は砕け散り、中に囚われていた幼い少女たちが解放される。


その中に混じっていたフェンリルの少女も解放され、勢いよく茂みの中に走り去る。

果たして、彼女は自分の主の気配を感じ取ったのか。


「むむ、魔力で作られた森が崩壊してゆきますね」

「うむ、年増が果てたのだろう」


モザイクの塊は動きを停止していた。

死んではいないが、社会的に死んだ可能性は否定できない。


魔女クリスティーネが、己の魔力で生み出したデビルトレントの森が消滅して行く。

すると、先ほど勢いよく飛び出していったフェンリル娘が下半身を露出し滝を生み出さんとしていた。


スッタフゥゥゥゥゥゥゥゥッ! モザイクをっ!


「ほう……見事な花摘みです」

「花なんて無いけどな。がはは!」


だが、この二人は真なる紳士へんたい

この程度では欲情したりはしない。

寧ろ、粗相をする妹に対して苦笑する兄的なポジションを醸し出している。


「ほぎゃぁぁぁぁぁぁっ!? 何してるのっ!? フェイリーっ!」


そこに、水浸しのゼステルが駆け付ける。

衝撃的な従者の姿に、普段は決して聞かせる事が無い悲鳴を上げた。


「が、我慢できなかったんだもん! もう我慢できないもんっ!」

「せめて人型から、獣形態に戻って!」

「むーりー! あっ……」


こら、あかんやつや。






申し訳ございませんが、画像を差し替えさせていただきます。

暫くは雄大に流れ落ちる滝の画像をお楽しみください。






―――色々と酷い展開であったが、今は落ち着いている。


だが問題は山積み。

これからが大変なのだ。


まず、救出された幼女は総勢8名。

その殆どは王都ルネイサから誘拐された者たちだ。

しかし、中には孤児もいる。

いわゆる、ストリートチルドレン。浮浪児だ。


この八人の中で一人だけ浮浪児がいた。

それが、目つきの悪い黒髪碧眼で褐色肌の幼女だ。

長い髪を持っており、ボロボロの灰色ワンピースを着こんでいる。

いかにも、という浮浪児ファッションだ。


「ごしゅじん、このこの、このまりょくは……てんせいしゃ、です」

「ふむ……」


ちゅん子は魔力の波長から、目つきの悪い幼女を転生者と断定した。

この推測は正しく、目つきの悪い幼女は転生者である。


彼女の予定としては、この危機的状況から苦も無く脱出し、俺TUEEEEEEを、見せつける予定だったのだ。

しかし、その目論見は呆気なく打ち砕かれ、行き場の無い怒りは元々悪かった目つきを更に悪化させる。


「んだよ? 感謝なんてしねーぞ。おめーらが居なくたって、俺は一人で、どうにだってできたんだからな」

「おやおや、それは悪いことをしましたね。もえー」

「まったくだ! もえー」

「き、きめぇ……」


目つきの悪い幼女のツンな態度は変態どもにとってご褒美でしかない。

そんな両者に目つきの悪い幼女だけではなく、他の幼女たちもドン引きだ。


「はぁ……フェイリーが無事だったのは良かったですが……いろいろと失いまくりで損失の方が勝ってしまってます」

「おや? どういうことで?」

「あぁ、いえ。こっちの話です」


タカアキはゼステルがもじもじしている事が気になった。

しかし、足元に幼女たちが不安げに近寄ってきた事で、その事は意識外に追いやられる。


こいつは……。


「取り敢えずは町に戻りましょう。この子たちも不安がっているでしょうし」

「それには賛成です」


タカアキの提案に賛同したのはゼステル、そして魔王だ。


「では、勇者よ。俺は、これで退散する」

「おや? お礼くらいさせていただきたいのですが」

「いや、気持ちだけで十分。早く戻らねば……お説教される」

「それは大事です。お早く」


魔王トウキチロウの部下との力関係が良く分かるやり取りであったという。


こうして、魔王は勇者との邂逅を済ませる。


彼は膨大な魔力を用いて転移ゲートを開いた。

うねうね、とうねる大きな空間には虚無の闇。

その向こう側に魔王が望む空間が存在するのだ。


「さらばだ、勇者タカアキ」

「えぇ、魔王トウキチロウ。いずれ、また」


タカアキの言葉に、ニヤリ、という不敵な笑みを見せ、魔王トウキチロウは転移した。


意図も容易く転移しているが、空間が不安定なこの世界に置いて、正確に転移できるという事は相当な腕前を持ってなくては不可能。

チート転生者でも、一握りの者にしか不可能である。


「顔見せ、と考えて良さそうですね」

「めを、つけられましたか?」

「私という男を見極めに来たのでしょう。ですが、彼とは良き友としてやって行けそうです」

「きっと、むこうも、そうおもったことでしょう」


ちゅん子は、魔王トウキチロウを警戒していた様子だ。

しかし、タカアキは、というと最初から魔王トウキチロウを信用できる人物だ、と認識していた。

それは、幼女、というパワーワードを耳にしたからだ。


無論、幼女好きにも様々ある。

彼は清く正しいロリコン。


即ち、絶対紳士ロリコンジャスティスであったのだ。


「幼女のために自分の立場すら厭わない。漢の中の漢です」

「へんたいじゃなければ、さぞ、もてているでしょうねー」

「では、行きましょうか。ゼステル君も……?」


タカアキはゼステル少年の肩を掴み、しかし違和感を感じた。


「はっ、はひっ!」


びくん、と肩を震わせるゼステル。

何かの勘違いかな、とタカアキは思った。


しかし、そう付き合いの無いゼステル少年だ。

きっと、勘違いであろう、とタカアキは判断する。

それに、肉の感触など触れる位置で変化するものだ、と自分を納得させた。


「あー、別に俺は良いぞ」


目つきの悪い幼女は同行を拒否した。


「どうしてですか?」

「親もいねーし。捕まってたのは俺TUEEEEEEするためだけだったし」

「ふぅむ。転生は俺TUEEEEEEだけが面白いわけではありませんよ?」

「どうせ、見た事も無い景色を見つけるのも面白い、だろ? 耳にタコができるほど聞かされたよ」

「おや? ということは気に掛けてくれる人がいるんですね?」

「ふん……じゃあな」


目つきの悪い幼女は、魔王トウキチロウと同じ転移ゲートを開き、その中に飛び込んだ。

そして、呆気なく消失する転移ゲート。


彼女もまた、力ある転生者だったもよう。


「いっちゃいましたね」

「はい。ですが、あの子とは、またどこかで会いそうな気がしますね」

「あ、とろーるのおにくと、わるいまじょは、しまっちゃいますね」

「お願いします、ちゅん子。でも忘れないようにしましょうね」

「あい!」

「ろぉぱぁ」


出会いと別れに恵まれた日だ。

タカアキこの貴重な縁に感謝する。

そして、ゼステルと共に幼女を護衛しつつ王都ルネイサに帰還。

無数のローパーたちも、これに同行した。


大丈夫か? それ。


「逮捕っ!」

「御用だっ! 御用だっ!」

「きもいっ! 逮捕っ!」

「おぉ、なんという事でしょう」

「ろーぱー」


タカアキは問答無用で逮捕された。


町で噂になっていた誘拐事件の容疑者はトロール。

その風貌とタカアキは見事に合致。

逮捕されない理由が無かった。


あと、ローパーも普通に町に入れてはいけない。

人懐っこくても一応は魔物だからだ。


その後、ゼステル少年の必死の弁護もあり、勇者タカアキは一週間後に釈放されたという。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさしく『真の勇者』に相応しきタカアキである
[一言] ろぉぱぁが、余計だった!
[一言] 正しい行いがすべからく報われるとは限らないから ま、多少はね?>保釈は一週間後
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