3話 ケジメ
そこは薄暗い場所。
大理石が敷き詰められた床。
白亜の柱が何本も確認できる。
しかし、壁は確認できない。
壁の代わりに、のっぺりとした闇がどこまでも広がっている。
天井には半透明の奇妙な球体がびっしりと張り付いているのが確認できる。
奇妙な球体は時折、ふるりと動き、明滅を繰り返した。
部屋の広さは、かなりのものであるが人の気配は全く感じられない。
そこに、タカアキを監視していた影。
「ルシオン、参りました」
ルシオンと名乗った影は跪き、何も無い場所に向けて語りかける。
無論、返答はない。
しかし、ルシオンは淡々と報告を続ける。
「タカアキ・ゴトウの住居を確認。アパート・ダッチ荘1号室」
まるで独り言。
しかし、当の本人は真剣、且つ、慎重に報告を続ける。
そして、一通りの情報を告げ終え沈黙。
張り詰めた緊張はいまだ解かれることはない。
一滴の汗が、ルシオンの華奢な顎より滴り落ちた時、ようやく彼女は安堵の吐息を漏らす。
「……」
ルシオンは何かを呟く事も無く、暗黒の空間より静かに消えた。
ドアから出たのではなく、不自然に掻き消えたのである。
後に残ったのは不気味な静寂と先が見通せない闇のみであった。
タカアキ・ゴトウの一日は精神の統一から始まる。
座禅を組み、崇高なる偶像を強くイメージする。
「幼女っ! イズ! パーフェクトっ!」
やはり、頭のネジが数千本外れているもよう。
「ふぅぅぅぅぅ……やはり、朝はこれに限ります」
「さすが、ごじゅじんっ。きほんを、かかさないっ!」
この主人あって、従者である。
「さて、朝ごはんでも食べましょう」
「おにくは、きのう、ぜんぶ、たべちゃいましたけど?」
「そういえばそうでしたね。では、今日は屋台で済ませましょうか」
恐ろしいことに十五キログラムの肉は昼食で消えた。
その大半がタカアキの胃袋に収まったという。
無尽蔵の胃袋を持つ男、それがタカアキなのだ。
アパートを出るタカアキはその際にターラと鉢合わせた。
「おっとぉ? タカアキも朝飯かい?」
「そう言うターラさんも屋台で?」
「あたしは、いつも朝は屋台さ。工房に向かう途中で食べれるからね」
むふーん、とドヤ顔を炸裂させるドワーフ娘は外に出かけようが、酷くだらしのない格好だ。
だぼだぼのランニングシャツとオーバーオール姿。
工房では作業着を着るので、通勤時はどうでもいい、という考えからだ。
元々が良いだけに、勿体ないと思う者多数。
しかし、我が道を行くターラは、その全てに耳を貸さない。
今は鍛冶師としての技術を身に付ける事のみに集中している状況だ。
ただし、酒は別である。
「私たちも昨日、肉を全部食べてしまったので屋台で済まそうと」
「あんだけあった肉を全部食べちまうんだから、呆れるねぇ」
「いえいえ、私などまだまだです」
「褒めてないよ」
超が付く大食い。
タカアキの満腹中枢は破壊されているのであろうか。
実を言うとそんなことはない。
これには、ちょっとしたカラクリがあるのだが、タカアキは問われない限り、その秘密を語ることはないだろう。
二人と一羽は早朝から食事を提供する屋台へと向かう。
職人たちの区画である西区。
実のところ、露店が密集しているのは南区だ。
西区では数店に留まり、しかも、朝限定というやる気の無さ。
というのも、それらは夕方より立ち飲み居酒屋に変わってしまうからだ。
職人たちは仕事が終われば、後は飲んで寝るだけ。
それなら、食事屋台ではなく居酒屋の方が受けがいい。
ある意味で賢い方法と言えようか。
タカアキたちが立ち寄った露店は、様々な具材をクレープの生地で巻いて提供してくれる店。
露店というが、現代日本のように小奇麗なものではなく大雑把で小汚い。
この店もそれに倣っていた。
しかし、それでもしっかりと手入れがなされており好感が持てる。
ここは手頃な価格でそれなりに美味く、歩きながらでも食べられるため、朝早い職人たちに人気の店だ。
クレープだからか女性の職人たちに人気が高い。
無論、男性用にガッツリ系の具材も用意してある。
女性職人たちは、その場で食べる事はせず職場へと持ち込むのが常。
しかし、ターラは歩きながら食べる。
しかも食べ方が汚いので服に零れまくる始末。
ぽよんぽよん、と上下する巨大な乳房はエプロン代わりか。
そんな彼女の姿をスケベ心丸出しで眺める男ども。
平和な町のワンシーン、と言っておこう。
「おっちゃん、生クリームと苺」
「はい、毎度ありぃ。ターラちゃんってば、いっつもそれねぇん」
「こいつが良いんさ。元気が出る」
店の主人は筋肉隆々でスキンヘッドの元冒険者だ。
厳つい顔は化粧が施され、形容しがたい生命体へと進化していた。
性格は竹を斜めに割ったかのようなものであり、真っ直ぐなようでちょっぴり捻くれている。
しかし、商売に対しては紳士であり、服装においては変態的であった。
ラブリーなエプロンドレスの下は何も着けていない。
つまり、裸エプロン。
一体誰が得をするというのだ。
こんなもの拷問以外の何物でもない。
映像が無くて命拾いしたな、と言っておこう。
「ランドルフさん、私は鶏もも肉の蜂蜜焼きとマッシュポテトで」
「ちゅんこは、ごしゅじんの、おこぼれを、もらいますっ」
「はぁい、二人ともおはよう。ちゅん子ちゃんは今日も美人ね」
「とうぜんでちゅん」
タカアキはこの店を以前より知っている。
それもそのはず。
ここの主人は以前、タカアキとコンビを組んで冒険していたのだ。
その冒険の末に開業資金が溜まり、無事に冒険者を引退。
今はこうして、平穏な日々を過ごしている。
「最近はどう?」
「はい、これといって何も無い平穏な日々ですよ」
「うふふ、あなたの平穏は当てにならないからね。でも、顔を見せてくれるだけありがたいわ」
店主の名はランドルフ。
かつては巨大な両手剣を振るい、冒険者たちから一目置かれた男であった。
そんな異質の店長からクレープを受け取ったタカアキとターラは、その場で別れる事になる。
ターラは、そのまま職場へ。
タカアキは、そのまま散策へ。
「さて、今日も平穏であってくれるといいですねぇ」
「きっと、だいじょうぶでちゅん」
散策、といってもタカアキの場合はパトロールを兼ねる。
だが、決して出しゃばり過ぎない。
町の平和は衛兵によってなされるべき、との境界線を敷いているからだ。
彼が手を出すのは衛兵が手に負えない出来事が発生した場合のみ。
何でもかんでも手を出すのは、将来的に見てベストではない事を理解しているのだ。
だが、タカアキはトラブルに好まれやすい。
加えて、トラブルに遭遇し易い体質だった。
「喧嘩だっ!」
「冒険者同士だぞっ!」
「一応、衛兵を呼んでおけっ!」
野次馬たちの騒がしい声。
平和な町に緊張が走る。
しかし、この王都に置いては喧嘩は日常茶飯事。
衛兵たちの仕事の大半は喧嘩の仲裁だ。
「おやおや、早速、賑やかな出来事が」
「ごしゅじん、いってみましょう」
タカアキはちゅん子に促され現場へと向かう。
しかし、急ぐことはなかった。
それは、不穏な気配をまだ感じる事が無かったが故。
彼らが現場へ辿り着いた頃。
そこでは冒険者の一団同士がもめていた。
片方はかつて新規精鋭として名を売っていたが、今では落ちぶれてしまった冒険者集団。
剣士と戦士、そして職業シーフと思わしき男女。
もう片方は、今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの冒険者だ。
場所は冒険者組合の入り口付近。
年季の入った立派な門構え。
建物の中からは喧噪。
冒険者であろう野次馬たちが「やれ、やっちまえ!」と両者を煽っている。
「ゼステル! 戻ってきてくれ! 今までの事は謝る!」
「オールさん、今更そんなことを言っても遅いですよ。あなたが僕にしたことを忘れたんですか?」
金髪碧眼の剣士の青年と茶髪の少年が睨み合いをしている。
剣士の方は、それなりに上等な武具を身に付けている。
対して茶髪の少年は白のローブのみ。
肩には奇妙な文様の尻尾を持つリス。
腰には炎のように真っ赤なトカゲがしがみ付いており、足元には青い体毛の狼が唸り声を上げながら控えている。
「あれは……! そう! あの時はどうかしていた! そうさ! 俺はおまえに嫉妬していた! だから……!」
「だから、僕を追放した」
「そう、そうなんだっ! 今は後悔しているっ! だから頼むっ!」
剣士は、なんと地面に這いつくばって額を地面に擦り付けたではないか。
「いや、お願いだっ! 俺たちの下へ戻ってきてくれっ!」
プライドをかなぐり捨てた形振り構わない謝罪。
剣士の彼はかなりプライドが高そうである。
いや、実際、高かった。
そして、勢いがあったがために傲慢になっていた。
そんな彼であっても、彼の仲間は彼を見捨てなかった。
仲間たちは彼の悪い部分、良い部分を十分に理解していたからだ。
しかし、それでも限界は来ていた。
数々の判断ミス。
それは任務の失敗に繋がった。
一度や二度ならよくある事。
しかし、それが続くとなると根本的な問題。
その限界の果てに、剣士の彼は自分の限界を悟った。
故に、己の愚かしさにようやく気付き、今まで何故上手くいっていたかを考察。
そして、結論に至る。
「頼むっ! ゼステルの力が、どうしても必要なんだっ! おまえが戻ってきてくれるなら、俺はその後、パーティーを抜けたっていい!」
剣士の青年オールは必至だった。
それもそのはず。
「エイシャを治療する金を稼ぐには、どうしてもゼステルの力が必要なんだ! 頼むっ!」
ガツガツ、と何度も額を地面に擦り付ける。
エイシャはオールの幼馴染であり、彼のパーティーの縁の下の力持ちとして必要不可欠な人物だった。
柔らかな緑髪の女性で重戦士。
容姿は並であるが、その清らかな精神は並の容姿を一級品に押し上げていた。
更に冒険には欠かせない応急手当の腕前は一級品。
パーティーには必須であろう技能を幾つも習得している。
戦いにおいては重鎧を着こみ、小型の盾とメイスで勇敢に立ちまわる。
そして、戦況を確実に読んで最善の一手を打診する。
彼女の策、そして、ゼステルの機転が、オール一行の破竹の勢いを支えていたのだ。
しかし、それを自分の力と勘違いしていたオールは、出しゃばるゼステルを疎んだ。
エイシャに色目を使っている、と錯覚もした。
だからだ、オールは難癖をつけてゼステルをパーティーから追放した。
確かにゼステルもやり過ぎた感はあった。
しかし、だからといってオールの行いは非道な事に違いない。
その過ちに気が付き、オールは酷く後悔した。
そして、エイシャが重い病に倒れる。
その頃には既に落ち目となっており、かつての勢いはない。
それどころかエイシャが抜けて戦力的にも不安が残る。
かといって、落ち目の冒険者集団に新規で加入居てくれる者はおらず。
そんな折だ。
オールは急激に名を上げているゼステルの姿を見た。
最早、形振り構っている場合ではない。
彼は決意した。
他ならぬエイシャのため。
そして、傷つけてしまったゼステルに詫びるため。
何よりも、自分を罰するために。
ゼステルもエイシャには恩がある。
しかし、そんな彼女を出汁に使い、戻ってきてもらおうとするオールに反吐が出る思いであった。
だからだろう、必死に懇願するオールをゼステル少年は嘲り笑った。
「嫌です。テイマーは雑魚職業だからいらない、って言ったのはそっちです。あなたの仲間が死のうが僕には関係ない」
非情な宣告。
かつてのゼステルからは出ない言葉。
しかし、彼は力を手にしてしまった。
だからこその傲慢。
傲慢は怒りを容易く憎しみへと変える。
タカアキは、この感情を読み取り、ピクリと反応。
しかし――――留まる。
「分かっている!」
オール、再び額を地面に擦り付ける。
「そこを曲げて……お願いだ!」
それは覚悟をした男の一世一代の勝負だ、とタカアキは感心する。
だからこそ、オールの覚悟を尊重し踏みとどまった。
「僕も追放後は死にかけたんです。いや、死んでいた」
ゼステル少年は自分の胸の辺りを擦った。
そして、憎悪を込めて土下座する剣士の青年を睨み付ける。
「でも、テイマーは良いですよ。最強の仲間たちが僕に協力してくれるから」
にっこり、と場違いな笑みを浮かべる、ゼステル少年。
その傍らには、各種族の最強個体。
それらを手懐けた彼の能力は無論、天からの授かりもの。
即ち、チート能力。
ゼステルはこの力で以って成り上がりの最中。
彼の噂は王宮にまで届かんとしている。
持つ者と、持たざる者。
その対比がここにあった。
だが―――。
「頼むっ!」
「……!」
剣士の青年の変わらぬ覚悟。
流石の少年も怯んだ。
しかし、その後に卑屈な―――いや、引き攣った笑みを見せる。
「(そんなに潔いのなら! なんであの時……!)」
ゼステルの葛藤。
しかし、もう踏み止まることはできない。
負の感情は、これまでの悲惨な経緯、という燃料を浴び激しく燃え盛る。
それが、憎悪の爆弾へと変わるのに時間はそう必要ないのだ。
「ラタート。サラン。フェイリー」
「「「はい、ご主人様」」」
ゼステルが使役する獣たちの名を呼ぶ。
すると彼女らは主に応え、それぞれ美しい女性の姿へと変貌した。
「守護獣士っ!? 伝承では聞いていたが……!」
「知っているのか!? デンデン!」
濃い顔の禿げ野次馬二名が、何やら妙なうんちくを語っている。
折角なので聞き耳を立ててみよう。
「かつて、伝説のテイマー、ピーチターロは三匹の獣を率いて凶悪なオーガを倒したという。その際に使役していた獣は魂の契約を結んでおり、戦いの際には強く美しい女戦士へと変身した。それを守護獣士という。以降、テイマーは最強職として君臨していたが魂の契約の技術が失われ、急速にテイマーは衰退していった。【珍・珍妙書より一部抜粋】」
「なんだその本……」
「凄かろう」
本当になんだそれ、である。
しかし、野次馬の言ったことは正しく、今では失われた技術を用いて、ゼステルは獣の中でも超上位種となるリスのラタトスク、精霊サラマンダー、狼のフェンリルと魂の契約を結んでいた。
ただ、その経緯は少々、いや、かなり都合が良いもの。
ハッキリいってしまえば予定調和のレベルであった。
運命操作の疑惑すらある。
「分かるでしょう? 彼女たちの強大な力が。ハッキリ言って、あなた方には価値がない。手を差し伸べる理由なんて、これっぽっちも無いんです」
それでもオールは諦めない。
自分の過ちに気付いた男は、なんとしても謝罪を申し込み、そして罪を清算しようと尽力する。
その態度に、ゼステルはいよいよ感情を爆発させる。
「しつこいっ……! なら、僕が味わった地獄の一端を受けてもらってもいいですよねぇ?」
「それで、ゼステルが納得してくれるなら……!」
「ちっ……」
衛兵たちは事の成り行きを静観する構えだ。
しかし、いつでも飛び出せるよう構えた。
彼らもまた、漢を見せケジメを付けよう、とするオールに対し共感を得ていたがため。
私刑が始まった。
守護獣士の力は圧倒的だ。
一般的な冒険者では到底太刀打ちできない。
猫が獲物をいたぶる光景。
ボロボロになりながらも歯を食いしばり耐える剣士の青年。
「も、もういい! ゼステル、止めて! オールが死んじゃう!」
ここで、いよいよ見ていられなくなったオールの仲間の一人が私刑の中止を訴える。
職業シーフの女性だ。
彼女はゼステルとも面識があり、共に行動していた頃は割と仲良くしていた。
だから、情に訴えてみたのだ。
しかし、オールはそれを制する。
「これは……俺の罰だ! 愚かな俺の罪だ! おまえらは関係ないっ、う……」
吐血。
おびただしい量の血反吐を撒き散らす。
「そこまでだ!」
「双方とも喧嘩を止めろ!」
限界を見極め、衛兵が介入する。
タカアキもまた、ここが落としどころだろう、と確信した。
しかし、力を持ってしまったが故の傲慢。
それを一番知っているはずのゼステルが力に飲み込まれてしまった。
「はぁ? よわっちぃ衛兵さんが何を命令してるんです? これは僕とオールさんの問題なんです。引っ込んでいてくれませんかねぇ?」
オールを救助しようとした衛兵たちに立ちはだかる三人の守護獣士。
リスの守護獣士の巨大なもふもふ尻尾が衛兵を襲う。
もふっ。
「ぐはっ! もふもふ……!」
衛兵はもふられ、倒れた。
ダメージは無い。
「き、貴様っ!」
「ふしゅるるるっ。よしよし」
サラマンダーな美女の艶めかしいおっぱいに抱擁される衛兵。
「し、しまっ―――ば、ばぶぅぅぅぅぅぅっ!」
衛兵は倒れた。
恐ろしいバブみである。
「くっ!? こんな事をして、ただで済むと―――」
「わんっ」
狼の守護獣士が衛兵を押し倒す。
そして―――。
れろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
衛兵は倒れた。
美少女の唾液塗れになって。
おまえら、ほんまつっかえ。
「邪魔は排除した。さぁ、続けようか」
「……」
オールは意識が朦朧とし立っているのもやっと。
それでも剣士の青年は罪を清算しようとした。
その態度が気に入らないテイマーの少年。
いよいよ以って、憎悪が殺意に切り替わる。
「お待ちなさい」
そのタイミングでタカアキが介入。
これ以上は双方共に遺恨が残る結果にしかならない、と確信したのだ。
「誰ですか? あなた―――ってオーク?」
「人間です」
「どうだっていいよ。邪魔しないでよね。どうせ、僕らを止める事なんてできないんだから」
「止めますよ。彼を救うために。そして、あなたも」
「なんだって? 僕を救う?」
野次馬たちは空気がひりつくのを感じ取った。
そして、誰ともなくタカアキとゼステルから距離を取る。
それは確信。
戦いが始まる。
それも想像も付かないほどの異常な戦いが。
野次馬たちは知っていた。
強者とは何者か。
野次馬たちは知っていた。
弱者とは何者か。
狩る者、狩られる者。
それは、どちらか。
ここを偶然、通りかかった女性の小さな悲鳴。
それは、戦いのゴングに違いなかった。