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13話 彼は色々失った

ジャックを下したタカアキは、彼を襲撃犯として衛兵の詰め所へと運んだ。


「すみません、押し入り強盗を撃退しました」

「えっ?」


衛兵たちは慌てて確認作業に入る。

しかし、運ばれてきたジャックを見て仰天した。


「ジャ、ジャックさん!?」

「ま、まさか、彼ほどの強者がやられるだなんて!」

「彼を倒した押し入り強盗とは、いったい!?」

「この人が強盗ですが?」

「えっ?」

「えっ?」


話が嚙み合わない両者。

それもそのはず。


ジャックは秩序を守る側の人間だ。

対して、タカアキは秩序に対してパイルドライバーをかます側だ。

まさに信用度が段違いである。


「と、取り敢えず、ジャックさん方はこちらで介抱します。しかし、参りましたね」

「おや? 何かお困りでも?」

「実はジャックさんに強盗誘拐犯の捕縛を依頼していたのですが……」

「それは由々しき事態。それで、それなる人物の特徴は?」

「はい、超大男で肥満。壮絶な不細工で全裸の少女を抱きかかえて西区へと走り去った、といった感じで」

「ふむ、九割方私の特徴ですが、全裸の少女ではなく、抱きかかえていたのは少年なのでセーフですね」


しかし、今の話を麗しの衛兵さんは聞き逃さなかった。


「ちょっと、牢屋に行きましょうか?」

「おぉ、衛兵さんが切れちまいました」


タカアキ、実家のような安心感のある牢屋に収監される。

尚、三時間後に釈放されたもよう。


理由は凶悪犯が逮捕され、一時的に牢に入れる必要があったからだ。

タカアキがいては、牢が狭すぎて犯人が圧死する可能性があるとのこと。


どう見ても十分なスペースがあるのだが、衛兵たちはタカアキが面倒臭いので、さっさと立ち去ってもらいたかったようだ。

ただ、麗しの衛兵さんだけは複雑な面持ちだったとか。


「ふぅ、娑婆の空気は美味しいですねぇ」

「ごしゅじん、そのせりふ、なんかいめですか?」


ちゅん子の鋭いツッコミに満足感を示すタカアキ。

全く反省の色が無いのは、いつもの事。

本人的には何も悪いことをしていないので当然であろう。


尚、ジャックたちはヒーラーたちがいる【聖道回復教会】へと運ばれ、手厚い治療を受けたもよう。


「まぁ、取り敢えずはダッチ荘に帰りましょうか」

「そうですね。あ、おひるごはん、たべそこねちゃいましたね」

「仕方がない事です。その代わり、夕食は豪華にしましょう」

「さんせいですっ」


こうして、タカアキはダッチ荘へと戻った。

そこでは、相変わらずゼステルが玩具にされているのだが、タカアキが戻ったタイミングでゼステルが意識を取り戻す。


「はうっ!? ここはっ!?」

「おや、おはようございます。ゼステル君」

「あっ、おはようございます、タカアキさん……え?」


ゼステルは目覚めたばかりなので状況が把握できていなかった。

何故、タカアキがいるのか。

何故、テーブルの上にいるのか。

何故、全裸な上に大股開きなのか。


「あ、あ、ああっ……」

「あ?」

「ふにゃおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


ゼステル絶叫。

このわけの分からない状況に、彼女はただ叫ぶより他に無かった。


「おぉ、いったいどうしたのでしょうか」

「ほっ、ほっ、ほにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


ゼステルはとにかくパニック状態。

会話にならなかった。


「これはアレですね。羞恥心から来る感情の暴走ですよ」

「セドックさんは博識ですね。それならば……」

「そんな服、いつ用意したんだい?」

「こんな事もあろうかと」


タカアキは暗黒微笑を浮かべながらリュックサックより、やたらとゴテゴテした服を取り出した。

そして、パニック状態のゼステルに、それを一瞬で着させたではないか。


「ふむ……良い」

「なるほど。良いですね」

「ほう、悪くないな」


ゼステルの哀れな姿を観賞する外道三名。

そして、奇妙な悲鳴から三分後。

砂埃を上げながら、ゼステルの三匹の従者がダッチ荘の敷地に飛び込んできた。


「ゼステルっ! 無事っ!?」

「よくも、うちの子をっ!」

「ごしゅじーん。お腹減ったわん」


一匹ほど、自分の事しか考えていない従者がいたが、それでも急いで駆け付ける辺り忠誠心は高い。


そんな三匹の従者は変わり果てた主人の姿に絶句する。

きらり~ん、と輝く【魔法少女】の姿をした主人がそこに居たからだ。


「ぎゃははははははははははっ! 何それ、受けるっ!」

「良い……凄く良いよぉ! ペロペロしたいっ!」

「ご~は~ん~」


ダメだこの従者たち。早くなんとかしないと。


ゼステルが放心していなければ、きっとそう思ったであろう。

だが、その主人は心に致命的な致命傷を受けて致命的な状態に陥っている。

最早、ゼステルの男としての尊厳は無いに等しい。

自己同一性の危機を既に通り過ぎていた。


「折角ですので、マジカルステッキも持たせましょう」

「うん、いいですね。ポージングも取らせましょうか」

「光画機、持ってくるか?」


光画機とはカメラの事である。

地球ほど高性能ではないが、一般家庭でも一台ある程度に普及している。

見た目はティッシュケースくらいの大きさで割と重い。


「待った! ゼステルを笑顔にっ!」

「サランさん、ナイスです」

「いっそ……ころして……」


引き攣った笑みを浮かべるゼステルはその後、恥ずかしい写真を何枚も取られたとかなんとか。


アヘ顔ダブルピースとか可哀想の極致である。






「たっだいま~。おん? 何してんの?」

「お帰りなさいターラさん。リアル魔法少女撮影会です」

「きゃぴ~ん♡」


ゼステル、壊れる。


瞳からハイライトを失った魔法少女は変態どもと一緒に魔道へと堕ちた。

最早、彼が正気に戻ることはないだろう。


こうして、テイマーから無事、魔法少女へと転職を果たしたゼステルは、その後、髪を伸ばして更に女の子らしくなり、町の平和をキラキラしながら守る一員となった。

ファンもかなり増えたらしい。


いとあわれ。






その後、タカアキはいつものように勇者活動を行う。

だが、彼を監視する者が増えた事を感じ取っていた。


「(むむ、監視の目が増えましたね。一つは、いつもの方ですが、もう一つは新しい方。いえ、三つですね)」


尚、新しい監視の目の一つは麗しの衛兵さんである。

めっちゃ眉を顰めている。


「どうしました、ごしゅじん」

「いえ、こうも見つめられると照れますねぇ」

「好意を寄せてなんかねぇよ! あっ―――」

「見事なツッコミ。私じゃなきゃ見逃してますね」


迂闊にもタカアキのボケに反応してしまった監視者。

それは、黒髪黒目でボブカットの極一般的な少女であった。

見た目は皮鎧にショートソードを携帯したいかにも冒険者という形。

しかし、悲しいかな。

全く特徴が無いのが特徴の少女であった。


だが、彼女は当然の権利のように転生者でありチート能力を所持している。

そんな彼女が何故、こんな役回りをさせられているかと言えば、彼女が無能を演じているからだ。

いわゆる【無能追放ざまぁ】をやりたいがために、このような面倒臭い事をしている。


しかし、彼女が所属した冒険者集団は良い連中ばかりだ。

彼女の失敗を許す寛容な心の持ち主ばかり。

したがって、彼女が自分の目的を果たすことは不可能に近かった。


「あーくっそ! ツッコミ体質が憎いっ!」

「それは貴重な素質です。大切にすると良いでしょう」

「したくねぇよ! ちくしょうっ! ばーか、ばーか!」


一応チート転生者の少女は、負け犬の遠吠えを炸裂させながら走り去って行った。


仲間の下へ戻った彼女は任務失敗を報告。

しかし、当然の権利のように許された。

彼女の、無能追放ざまぁ、は永遠に始まることはないのである。


ちなみに、この特徴が無いのが特徴の彼女の名は【エリリ】といい、【全能力超強化】という超有能スキルの所持者だ。

クソザコナメクジも、これ一つで歴戦の猛者になる、という反則能力である。


ただし、これは自分には使用できない欠点がある。

まさに他者のためのチートスキルだった。


更に容姿に特徴は無いが、性格が素直で可愛い一面があり、ドジっ子なところから、仲間からは妹のように可愛がられている。

ツッコミ担当という側面もポイントが高かった。

しかも、家事全般も卒なくこなす。

他者に対して、まさに万能。


何だこいつ。地味に凄いな。


「おやおや、照れなくてもいいのに」

「ごしゅじん、おそろしいおかた」


こうして、無自覚にチート転生者を撃破したタカアキ。

しかし、これはまだ序曲に過ぎない。


戦え、タカアキ!

負けるな、タカアキ!


皆は変態ゆうしゃを待っている!


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― 新着の感想 ―
[一言] 悪いな〇び太!追放ざまぁは追放される方より追放する方が無能な場合専用なんだ!
[一言] ゼステルは召喚魔法少女として生きる ゼステル「行くよみんな!」 「行くのはいいけど」 「私達もその服着ないと駄目?」 「可愛いよね〜」 タカアキ「各タイプの服は揃えてます」 「「「なんかキモ…
[一言] 世界は・・・ 小説のように甘くはない・・・ ただし・・・ それが「当たり前」ではなく・・・ 「別方向」ならばどうでしょうか・・・
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